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第2話 いきなりパパはひどい

『papa - パパ』


それはたいていの場合父を表す言葉であり、時たま金銭的に援助をしてくれる成人男性を指し示す。


今回、俺は前者の意味でその称号を与えられた。


カレンの妊娠しました、という発言で。


飯を食いつつ俺とカレンのやり取りを聞いていた一部が、口に含んでいたものを盛大に噴出してた。


「お、おめでとうございます」


イシリア、祝わないで。


「セージさん……そんな」


「うそ……」


ランとマリアスも泣きそうにならないで。


「次は私も」


レイシェン、次どころかまだ最初すらしてないんだよ。


だから次じゃない。


いやそうじゃなくて、そんなことはしてないししない!


「まってまって!カレンさん。どうして妊娠してるってわかったの?」


「えっと、これで」


……体温計みたいな形状のそれには判定という表記があり、そこに棒線が一本浮き出ている。


「これ……どっから出したの」


「……願ったら出てきました」


願ったら出てくるとか……。


神の言語で言ったらなんでも叶うのか。


そうかそうか。


「マジデスカ」


がっくりと地面に両手をつく。


俺、なんもしてないのにお父さんになるのか。


なかったことに……なんてできるわけないよな。


宿った命に罪はない。


神の言葉で消せなんて言ったら最低だ。


どうしてこうなった。


「あ……うぅ……ご、ごめんなさい……あぅ……あかぢゃんは……一人でそだでますからぁ……だからうまぢでくださぁい」


急に罪の意識にさいなまれたのか、おなかを抑えて泣きだすカレン。


むしろ泣きたいのは俺です。


童貞ってわけじゃないけど何もしてないのにパパになるとか衝撃的すぎて泣きたいです。


「と、とりあえず泣かないで。ね?」


「おねがいですぅ……うまぢでくだざぁぁい」


だめだ。


なんか変なスイッチ入ってる。


あと、はたから見たら俺が悪者みたいだから。


だからお願い、泣かないで。


「産んでいいから!俺の子なんでしょ!?俺も一緒に育てるから!」


「……うぅ……ほ、ほんどうに?」


「本当だから!だから泣かないで、ね?」


「……あうぅ……はい…………ぐすん」


とりあえず泣き止んだカレン。


……落ち着け。まだ慌てる時間じゃない。


そうだ、こういう時こそ素数が役に立つよね。


冷静に冷静に。


1……1って素数に含まれないんだっけ?


「セーヂさん?」


「はい?」


「好きでず」


あ、このタイミングで言うんだ。


うん。


好きとか嫌いとか考える余裕ないよね。


出会って3日だよ?


そりゃ添い寝はしたけど。


家族と会えなくなって寂しいだろうからってことだし。


好きか嫌いかと聞かれたらまあ、その、なんだ、好きなほうだよ。


むしろ嫌いなんて言ったらどうなるんだこれ。


異世界に送られるのか?


違うそんなこと考えてる場合じゃない。


ちゃんと返事しないとダメだろ。


「えっと、順番がいろいろおかしくなってるけど……俺も好きです」


「うわぁああぁぁん!」


ええ、なんで号泣……。


なんかもう俺も泣いていいですか。


誰か助けて!


「セージ様……私も好きです!」


!!?


なぜ流れに乗って告白してきたマリアス?


俺のカレンへの告白が聞こえてなかったのか?


「あの、私も……」


ランもかよっ!!


ラ!ン!も!か!よ!


「セージ様。私は4番目で大丈夫です」


何がだよ!


な!に!が!だ!よ!レイシェン!


何も大丈夫じゃないよ!


サラッと2番と3番は決まったみたいに言うな!


「え?なになに?今好きって言えば奥さんにしてもらえるの?」


「そうみたいだぞ」


「え、じゃあ私も」


「ま、待ってくれクスリ!俺はお前が……」


「え!?ゴードンの好きな人ってクスリだったの!?」


「え?」


あっちでもなんか始まった。


あとティテナ!


今好きって言っても奥さんにしないから!


いやうれしいけども!?


「はっ!そうだ!カレンさん。好感の才能を消せない!?」


そうだ!


そうすれば好感度は下がる!


余計な愛情を抱かれずに済むだろう!


「嫌です」


「え?」


「もし消してセージさんのこと嫌いになる人がいたら嫌です。それにランさんには最初から効いてないです」


確かにランには最初から効いてないから意味なかったな。


嫌いになる人、はカレン自身に対して言ってるのだとすぐ気づいた。


万が一にでも嫌いになる可能性が怖いのだろう。


そしてあることに気づいて驚いた。


好感の才能が効いてるのだから”すべての言動が許される”という効果ももちろん有効のはずだ。


なのにカレンはそれに反した。


それほどまでに俺のことを好きでいたいということなのか?


それとも”強い愛情を抱く”という効果が勝ったのか。


どちらにしても拒絶を選ばせるほどに嫌なことを聞いてしまったのは確かだ。


「ごめん。嫌なこと聞いた。もう言わない」


「……はい」


「あと一個だけ嫌かもしれないことを先に聞いていい?」


「……はい」


「もし俺がマリアスやランを受け「異世界に飛ばします」」


あ、はい。


今のカレンの台詞を聞いてマリアスとランの顔が青ざめてる。


一瞬よぎったハーレムエンドみたいな展開はなかったんだ。


すごいヤンデレに捕まった気分。


いや、よく考えたら俺に拒否権なんてなかったよね?


だって先に既成事実を作られてるんだもん。


「でも……私が一番ならいいです」


あ、ここで”すべての言動が許される”が発動したのか?


ヤンデレというかツンデレなのか?


いやもうどっちでもいいけどさ。


「カレンさんが一番だから。だから異世界に飛ばすのは禁止ね?」


「……わかりました。あと、カレンって呼んでほしいです」


「……わかったよ。カ「グォオオオオオオオオオオオオ」」


名前を呼ぼうとした瞬間、オルフェの咆哮が山から響いた。


お願い!


お願いだからオルフェを異世界に飛ばさないでカレン!


般若のような形相のカレンを抑えながら俺は心の底で叫ぶ。


来ちゃダメ~!っと。

評価うれしくて勢いで2話も書いてしまった・・・

後悔はしてません

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