第16話 ここまでがプロローグ
アレクの呼びかけに旧神派はもちろん、新神派も手を挙げなかった。
ランはうつむき泣いている。
でも俺の目の前で一人だけ手を挙げていた。
カレンだった。
え?いやなんでここに?
遅れて気づいたアレクたちがビクっとなる。
「え!?なんだお前!」
「どうやってここに!」
「時空魔法か!?でもあれは一度きたば……」
カレンが何か言うと全員が口を閉ざす、というか急に止まった。
まるで時間を止められたかのように。
「セージさん!」
カレンが抱き着いてくる。
「よかった……」
「えっと。ありがとうカレンさん。それで、一体どうやって?」
「私の才能です」
「え?カレンさんの才能って言語の才能だっけ?」
「はい。熟練度特典の神の言語を理解し、言語の力を発揮できるというのを利用しました」
「ごめん。よくわかんないんだけどそれはつまりどういうことなの?」
「神の言語でしゃべった事象は実現します」
「……えぇ……」
なにそのチート。
言ったこと全部実現するってこと?
ちょっと間違って滅びよなんて言ったら世界終わっちゃうんじゃ。
どっかの天空の城より危ういじゃねぇか。
「それで、今はなんて?」
「私とセージさん以外は動くなと」
「ああ、だからか」
どうやらそれで俺とカレン以外は動きが止まっていると。
これ、ほっとくといつまでもこのままなのかな。
「どうしましょうセージさん。とりあえず全員異世界に送ればいいですか?」
なにさらっと怖いこと言ってるんだ。
恐ろしい子。
「いやいや待って。確かにこっち側の人は俺を異世界送りにしようとしてたけど、こっちにいる人たちは違うから」
アレク側である旧神派は異世界送り賛成派で、ラン側である新神派は異世界送り反対派だ。
見境なく異世界に送られたらラン側の人たちが可哀そう。
「わかりました!」
何がわかったの?
って、あ。
カレンが何か言った瞬間にアレクたちが消えた。
まさか……。
「あっちの人たちは異世界に行ってもらいました」
いやいやいやいや!
ちょっとまって!
なんてことを……。
「カ、カレンさん。ちょっとそれは酷すぎるんじゃ」
「で、でもセージさんを異世界に送ろうとしてたんですよね?自業自得だと思います」
いやそうかもしれないけど、あの人たちにもあの人たちの考えがあってのことだと……。
まあ、もうやってしまったのなら仕方がない。
とりあえずは残されたラン側の人たちをどうにかしないとか。
「とりあえずこっちの人たちをもとに戻してあげてくれる?」
「はい」
再びカレンの言葉でランたちが動き出す。
「え……あれ!?アレクたちは!?」
「何がどうなって……」
「この子が来た瞬間アレクたちが……消えた!?」
一同大混乱ですよね。
わかるわかる。
俺も若干追い付いてないから。
とりあえず事情を説明しないとと思ったらカレンがまた何かを言った。
「え、カレンさん今度はなんて?」
「あ、念のためこの世界で異世界に送る魔法は禁止しました」
「えっと……うん。そうか」
なんかもう自由だな。
「ランさん。あと、ほかの人はまだ名前聞いてないのですみませんが、俺の話を聞いてもらっていいですか?」
ひとまずカレンが来て何をしたのかを話す。
カレンの才能を使って時間を止め、アレクたちを異世界に送り飛ばし、今は異世界に送る魔法を禁止したと。
自分で説明しながらめちゃくちゃだなと思う。
説明を聞いたのちランたちは顔を合わせて、なぜか両手を挙げた。
「ごめんなさい。あなたたちに迷惑をかけるつもりはなかったの。だから異世界に飛ばさないで」
「いや、そんなつもりは毛頭ないですって!第一あなたたちは俺を助けようとしてくれてたじゃないですか」
「そ、そうだけど……」
ランたちがカレンのほうを向く。
俺もカレンを見ると、すごい睨みをきかせてた。
「カレンさん……。いやこの人たちは悪い人じゃないから」
「で、でも」
でもじゃない。
頼むからこれ以上ややこしくしないで。
「とりあえずアレクさんたちのことはすみません」
「気にしなくていいと思うぞ。あいつらだってやってきたことだし自分で蒔いた種だろう?正直せいせいした」
「えっと、あなたは?」
「名乗ってなかったな。俺はゴードン。ヨーロッパで傭兵をやってたらこっちに来たんだ」
渋い金髪の歴戦の戦士ってイメージは間違ってなかったな。
傭兵やってたんだ。
かっこいい。
「私も同感です。アレクたちとは馬が合いませんでしたから。あ、私はマリアベル。フランスからきたの。よろしくね」
貴族っぽいお姉さんだなとおもってたらフランスから来たのか。
気品を感じます。
「俺はハクサン。南北戦争中にこっちにきた。よろしく」
アジア出身っぽい渋いおじさんは南北戦争中にきたのか。
北と南どっち側だったのだろうと一瞬思ったが今は別に関係ないな。
「わたしクスリ。アイヌなの。よろしく」
アイヌ民族は俺の地元北海道の先住民だ。
親近感がわいてくる。
「私はティテナ。こっちはリュシカだよ。私がアフリカでこの子はエジプトでから来たの」
スタイルがいいティテナに、茶褐色の肌が似合うリュシカね。
そろそろ名前覚えるの辛くなってきたが、あとは二人。
ランさんと俺をここへ連れて来た人だ。
「私はラン。神領の代表の一人だったけど、もう代表とかは関係ないわね。私は秦という国からきたの。こっちはレベッカ」
「レベッカです。アメリカからきました」
一通り挨拶されたのでこちらも改めて挨拶をする。
「セイジです。あなたたちはみんなセイジと言ってくれるんで気にしてなかったんですが、異世界の人はみんなセージと呼びます。なのでセージと呼んでもらえれば」
「カレンです。セージさんと同じ日本からきました」
「セイジ、いやセージか。こっちはもう内輪もめする相手もいなくなった。アレクとユウジが決めてたルールを守る理由もない。こちらとしては今後このまま傍観者気取りでもいいのだけど、私個人としては、その、セージの手伝いをしたいの」
顏赤くしながらそんなこと言われても困るよラン。
カレンが鬼の形相でこっち睨んでるから止めて。
「ランちゃんがいくなら私も行くよ。みんなはどうする?」
「同意だな。外の世界には前々から興味はあったし自分の目で見に行けるんだ。行くに決まってる」
一同がうなずきあう。
ついてくるのは勝手なんだろうけど俺の意志は無視なのかな?
「もしかして迷惑?」
「迷惑ではないんですが、いいんですか?この世界じゃ神として生活してたんでしょう?見る限りこの部屋だけでもだいぶ外の世界より文明が進んでるみたいだし、外だと原始的な生活が待ってますけど」
どう見ても俺がいた時代と同等かそれ以上の文明レベルだと思う。
綺麗なテーブルや椅子はもちろん、電気もあるし外だと不便を感じるんじゃないのか?
それに長い間住んでれば愛着もあるだろうし。
「まあ嫌になったらここに戻ってこればいい。兄ちゃんが気にすることじゃないぜ。まあ短いやつでも4000年はここで生活してたからいい加減ここにも飽きて戻ってきたい奴なんていないだろうがな」
4000年も住んでたら愛着通り越して飽きるのか。
まあ定期的に外出るとかない限りはそうなのかもな。
「あ、というか俺についてこなくても皆さんもう自由なら自身の思うままに外の世界をご覧になったほうがいいのでは?」
「兄ちゃんわかってないな。それを言うと全員兄ちゃんのところに行くぞ」
「へ?」
「ランちゃんがついていくならみんなついていくよ?だってランちゃんは私たちのリーダーだもん」
「レディに一人旅しろだなんていいませんわよね?」
「私も同感です。女性陣はみんなランと行動を共にするとおもいますし、ゴードンさんは好きな人についていくと思いますからおまけでついてきます」
「お、おい!」
「え?ゴードンさんが好きな人って誰ですか?」
「うそ!?だれだれ!」
なんかよくわかんないけどゴードンどんまい。
とりあえずランがついてくる場所に残りの面々は自動でついてくるってのは分かった。
でもハクサンは?
「俺はランに忠義があるからな。無論ついてくぜ」
ハクサンもかっこいいなほんと。
「わかりました。じゃあ皆さん一緒に来るということで問題ありません。でもお願いがあります」
「なんだ?」
「仲良くしてください。とくにカレンさん。喧嘩しないでね」
俺の言葉を聞いてカレンがビクっとなる。
ほんと気を付けて欲しい。
ランたちはもちろんと声をあげる。
かくして、トイレ中に異世界にきた俺はわずか1日とちょっとで人領の王、魔領の王、龍領の王に気に入られ、さらに神領の面々が仲間になった。
この後カレンの才能で俺たちはオルフェの元に行き事情を説明。
驚かれながらも建ててもらった家に帰りイシリアたちに再度説明。
夜、久々に食べ物を口にしたと騒ぐランたちをよそに俺は疲労感からこっそりと家に戻り一人で眠りについた。
投稿して一通り読み直してたら結構矛盾とか誤字脱字を見つけたのでもろもろ修正しました。




