第15話 神たちの会議と神の言語
今俺の目の前には二つの白い長テーブルが左右に分かれて並べられている。
左には男性陣が多めのテーブルでアレク率いる旧神派。
右には女性陣が多めのテーブルでラン率いる新神派。
連れてこられてすぐこの中央の椅子に座らせられ、それぞれの代表であるアレクとランに挨拶される。
「まず、セイジ。君の意志を改めて確認したい。きみはこの世界に元の世界の知識を教えるつもりなんだよね?」
「はい。飢饉を救うために必要ならそうするつもりです」
「それがどれだけ危険なことか、もちろんわかって言ってるんだよね?」
「はい」
「今までだと君みたいな発想の人は有無が言わさず異世界に送るんだけどね」
「待ちなさい!さっきも言った通りセイジに悪意はないわ!今まで見たいにむやみに異世界に送るのは間違ってる!」
アレクとランがにらみ合う。
「そうね。あくまで今までは悪意のある召喚者を異世界送りにしていたけど今回は違うと思うわ」
「それはどうかしら。建前上そういっているだけかもしれないじゃない」
「ユウジが思考を読み取って悪意が無いのは確認してるでしょ!」
「そのユウジは龍に異世界送りにされてしまったがね。そこのセイジとやらが好感の才能で手籠めにしていたからな」
「それはちがうだろ。セイジの能力は本人の意志に反する能力なんだろ?単純に好感度が上がっていただけでセイジの意図するところじゃないだろ」
「どうだろうね。私はセイジの能力のせいでユウジ兄ちゃんが異世界送りにされたと思ってるよ。そもそも自分でコントロールできない才能なんて危ないじゃない。さっさと送っちゃえばいいのよ。そう思うよねお兄ちゃん」
「そうだね。危険だよ。さっさと異世界に送っちゃおうよ。面倒だし」
「まちなクソガキども。そんなおいそれと人の命弄んでんじゃねーよ。俺らは本当の神様じゃないんだぜ」
ちょっと。
頭の整理が追い付かない。
まず誰が誰なのか全くわからない。
最初にランを擁護したのはラン側に座ってる貴族っぽいお姉さん、あなたは誰ですか。
それに反論したのがアレク側に座ってる北欧出身っぽい巨乳のお姉さん、あなたも誰ですか。
その後ランさんの反論ののちに、俺がオルフェを手籠めにしたとか言ってきたのがアレク側のちょび髭生やしたおっさん。
お前は許さん。
そしてそれに反論してくれたのが、ラン側に座る渋い金髪の歴戦の戦士といった面持ちのおっさん。
ありがとう。
さらにそれに反論した双子と思われる兄妹。
まじで許さん。
最後にアジア出身っぽいこれまた渋いおっさん。
感謝します。
そしてあなたたちの名前を教えて欲しいです。
「名前は聞く必要ないかもしれないからね。君は少し黙っててくれないか」
「……アレク、でしたっけ。それは異世界に送るつもりだからですか?」
「そうだよ。君がわざとじゃないにしてもユウジは異世界に飛ばされた。このまま君を放置しておけば同じようなことが起きるかもしれないじゃないか。ランたちはまだ納得してないようだけどね」
「当たり前よ!セイジは何もしていないじゃない!なのに異世界送りだなんて理不尽すぎるでしょう!」
「困ったね。聞くけどラン。どうして君はそこまでセイジの肩をもつんだい?今までだってこの世界に危害があると分かった召喚者は異世界に送ってたよね?本人の意志があるないにしろ、ユウジを異世界送りにされるほどの害がすでに発生しているんだよ。なのになぜだい?」
「っ!そ……それは」
「なるほどね。悪いけど思考をよませてもらったよ」
「なっ!」
「悪いけどその考えはダメだね。みんなにも教えよう。ランはどうやらセイジに過去好いたの男の面影を見たらしい」
一同が驚いた表情をみせるなかランだけが顔を赤くする。
「その男のことを忘れたとは言わせないよラン。その男が世界統一の名のもと戦争を起こそうとしたこと」
押し黙るラン。
新神派の面々がバツが悪そうな顔をしている。
これはもしかしなくてもまずい状況だろう。
「あの、いいですか」
「何かな?」
「俺がこの神領に住んで黙ってればなんの問題もないんですよね?」
「……そうだと言いたいところだけど残念だがそれはもう無理だ」
「どうしてですか?」
「まず君はもう神になれない。ユウジだけが不死の才能を譲渡することができたんだ。ユウジのいない今もう不死の才能を渡すことはできない」
場が騒然とする。
「どういうことだ?アレク」
「どうもこうもないさアルヴァート。不死の才能は確かに僕の生誕才能だけどそれを複製して君たちに渡してたのはユウジの持つ複製の才能だ。複製の才能は複製の才能自信を複製できない。つまりもう才能を渡すことは不可能ということさ」
「不死の才能が無くてもここに住むことに問題はないのでは?」
「ルールってものがあるんだよセイジ。ここに住むにはまず僕とユウジと取引が前提なんだ。君の才能をもらう代わりに僕たちは不死の才能を渡す。それがここに住む前提条件だ。なぜならここには食べ物がないからね」
「え?衣食住には困らないと聞いてたんですが」
「不死じゃない君は食べ物が必要だろう?でも僕たちには不要なのさ。不死の才能の効果で常に健康状態が維持される。つまり、寝て脳を休める必要も、食べて栄養を得る必要もないんだ。それが衣食住に困らない理由だ。だからこの神領には食べ物なんてものは一切ない。君が住むのは止めないけど餓死するのは見てて気持ちがいいものではないからねぇ」
「なら食べ物を定期的に外から持ってくるのは?」
「ダメに決まってるだろう。外とは基本的に不干渉だ。許されるのは新たに召喚者がやってきたときだけ。それ以外でここを出るのは僕が許さない」
つまり俺はここに住むなら餓死、住まないなら異世界送りの二択になったのか。
「残念だねラン。君がどんなにセイジを好きになっても彼は100年もしないで死ぬんだ。君を残してね。だから君も諦めてこんな問題しか起こさなそうな才能持ちはとっとと異世界に送るのがいいと思うんだ」
場が静寂に包まれ、ランの目から涙がこぼれだす。
今度こそ本当にもうダメみたいだな。
カレンやオルフェはどうなるんだろう。
トイレ中にいきなり異世界に飛ばされて、王様やら魔王様に見られながらすっきりして。
よくわからないまま龍に保護されて、泣いて、火事になって、トイレ付き添ったり添い寝したりして。
魔法も覚えたりして。
なんだかいろんなことが詰め込まれすぎな濃厚1日とちょっとだった。
なんて単純に諦められるか!
カレンだってここに住めないのならきっと俺の後にきっと異世界に送られる。
オルフェだってユウジを異世界に送った危険な龍だと言って送られる可能性がある。
何とかしないとダメだ。
「どうにもできないよセイジ」
アレクがぞっとするほどのほほえみで俺を見た。
「では諸君もう一度聴こう。セイジの異世界送りに反対するものは挙手してくれ」
時は少しだけ遡る。
巣に残されたオルフェとカレンは顔を見合わせた。
「行ってしまいましたね……」
「うぬ……」
「セージさん。どうなるんですね。もしかしてこのまま異世界に送られるんじゃ」
「なくはない、が意見が割れておるとも言っておった。すぐに送られることはないと思うが」
「……です」
「ん?」
「嫌です!セージさんともう会えなくなるのは嫌です!」
カレンは目に涙を浮かべる。
「むろんわしとて嫌じゃ。しかし相手は神じゃ。どうすることもできまい」
うなだれるオルフェ。
「神じゃない……」
「ぬ?」
「召喚者の集まりだって言ってました。神みたいな才能を持ってるだけのただの人です!」
「たしかにそうかもしれぬがその才能がどんなものかわからんのじゃぞ」
「私にもあります!才能が!」
「そなたの才能?」
カレンの才能である言語の才能。
この熟練度特典である『神の言語を理解できる』『神の言語の力を発揮できる』の二つにカレンは着目する。
(考えないで。感じるのよ。だって私には神の言語が理解できるはずなんだから)
カレンはそう思うだけで実際に神の言語が理解できた。
そしてその言語の力がどういうものかも。
(あれ?ちょっとチートすぎじゃないかな……)
そしてそれがどれだけすごすぎるのかも。
(とりあえず試してみないと)
何で試そうかとあたりを見渡すカレン。
目についたのはリョウトの住んでいた小屋。
『小屋の丸太よ純金になれ』
「?そなた今なんと……!!?!」
カレンが言い放った言葉をオルフェは理解できなかった。
そしてオルフェの目の前にあった小屋が、いつの間にか形はそのままに純金に変異していた。
「な、なんじゃこりゃ!」
カレンは確信する。
この力があればだれにも負けない。
そしてセージを助けることができると。
「オルフェ様。行ってきます」
「な、ちょっとまて!?いったいこれはなんなんじゃ!?」
「帰ったら説明します」
カレンは一礼する。
『セージの前に移動』
オルフェの前からカレンは姿を消した。
後に残されたオルフェは口をぽかんと開け、リョウトの小屋をみた。
とても輝いてる。
そっと近寄り屋根を持ち上げようとした。
「……」
純金同士が融合してるのか小屋ごと持ちあがった。
「…………リョウトよ。なんかすまぬな」
オルフェは遠くを見つめて呟いた。
そして再び神領に場面は戻る。




