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第13話 神の提案を断った

「ご無沙汰しております。神よ」


「ああ、いいよ畏まらなくても。今言った通り実は俺も召喚者だしね」


「よもや神が召喚者でしたとは……」


神って神領に住むって聞いてるけどどうやってここに?


いや、そもそも俺の考えてたことがどうしてわかったんだ?


それに俺のいた世界の未来って。


「ああ落ち着いてセイジにカレンちゃん。そんなにいっぺんに考えられると俺も混乱するから」


ユウジと名乗った神が俺の前に立つ。


「改めましてユウジです」


笑顔で握手を求めるユウジ。


髪は伸ばし放題で渋めの顏。


30代後半くらいだろうか?


「半分正解だな。俺は36で不死の才能を得てそれから6000年くらい生きてる」


「不死の才能!?死なないってことですか?」


「そうだね。才能を得た瞬間から老化や病気とは無縁になった。それからは神領で生活してる。この世界にはなるべく干渉しないようにね」


「干渉しないように?」


「ああ、君たちもそうだけどこの世界にない知識を持ってるだろ?不用意にそういった知識を教えてしまうとこの世界のバランスが崩れかねないからね。だからそうならないように離れた場所でひっそりと生活してるのさ」


その離れた場所ってのが神領ということか。


「そういうこと。とりあえずいろいろと話すべきことがあるから俺の話を聞いてもらっていいかい?質問はそのあとで」


「わかりました」


「利口で助かる。カレンちゃんも、大丈夫だね。それじゃあまず質問だ。この世界を征服したいと思う?」


征服?


いや、微塵も思ってないけど。


「よかった。征服したいとか考える悪い子だったら今すぐ殺してたよ」


え……。


「はは、冗談冗談。まあそういう考えを持ってる人間だったら今すぐ別世界に転送してたけどね。良い子たちで安心した」


いや、よくわからない別世界に転送も死ねって言ってるようなもんだよね。


「さて、君たちになら話しても問題ないだろう。神領は簡単に言うと召喚者たちの集まる国なんだ。俺を含め別世界から召喚され、神様に近い才能を得た人たちの集団とでも思ってくれればいい。んでその集団を束ねる3人の代表がいて俺はそのうちの一人。召喚者は全員で17人の国さ」


突飛な話だけど、要するにチート集団の集まりでユウジはその代表の一人ということか。


「セージは物分かりが早いね。カレンちゃんはまだ混乱してるか。まあ次の話に進むよ。君たちは偶然にもこの世界にきてこうしてオルフェに助けてもらったわけだけど、今後どうするかを決めあぐねていると。わかるよ。俺も最初来た時はどうしようってなったからね。そこで提案なんだけど、俺と一緒に神領で暮らさないかい?」


え?


またいきなりだな。


「まあいきなりではあるけどさ。この世界は知っての通り昔リョウトが世界に平和をもたらしてから目立った争いごとは起きてないし、異世界からきた人間で悪意があるものは俺たち神領の人間が対処してる。今回みたいな飢饉で魔領と人領が争うことはまあ多々あるから気にすることのほどでもない」


気にするほどのことでもない?


でもそれで戦争になりかけてたのに放っておくということか?


「そうだね。でもそれに干渉するのは傲慢だと思わないかい?君は神様でもなんでもないんだから。それに下手に知識を与えて新たな争いが発生したら君は責任が取れるのかな?」


……正論だ。


俺は神様でもないし俺の与えた知識で争いが起きても責任が取れない。


「うん。素直でよろしい。ああ、カレンちゃんは気にしないで。ちょっとセイジの考えを読んでただけだから。まあなんにしても、君たちがこのまま人領や魔領で生活するのは神領の人間はあまりよく思っていない。リョウトの時は龍領で知識を与えず記録するだけというのを条件にこっちでの生活を許したんだ」


「それでも人領や魔領で生活をしたり、飢饉を救うために知識を教えたいと言ったら?」


「悪いけど別世界送りだ。ああ、セイジの好感の才能は俺には効いてないからね」


好感の才能が効いてるなら許されると思ったが、まさか才能が効いてないとは。


無効化する才能があるということか。


「そういうこと。じゃあもう一回聞くけど俺と一緒に神領で生活する気はないかい?衣食住に不自由しないし、元の世界の話題とかも普通にできる。ここだけの話、電気とかもあるし普通に文明は進歩してるよ。条件はあるけど不死の才能も譲渡するしね」


悪い話ではない。


というかいいことづくめだ。


「でしょ?だから一緒に住もうよ」


でもだからこそ怪しい。


見返りもなしに神領へ招く利点はなんだ?


「見返りねぇ。さっき言った通り神領の人間は何も不自由してない。つまり何もいらないのさ。ただ、迷惑はかけて欲しくないわけだよ。例えば神領以外と結託して神領に攻めてくるみたいなことされるといくら不死身とは言え面倒だからね」


「面倒ごとを起こされるくらいなら初めから手元に置いておきたいというわけか」


「まあね。してセイジはどうするの?カレンちゃんは君が行くなら別にいいかなと思ってるみたいだけど?」


行くことに俺も問題はない。


でも、人領と魔領の問題はどうなる?


家まで建てて一日とは言え世話までしてくれた人たちを放置してていいのか?


じいちゃんが言ってた。


『誠仁。誠という字はな、うそいつわりないという意味で仁という字はいつくしみや思いやりという意味だよ。だからお前は嘘のない優しさをもって人と関わっていきなさい』


あの言葉があったからそういう風に生きようと日々努力してきた。


何かのために、誰かのために、自分のために、嘘のない本当の優しさを。


「そうか。君は会って間もない人や魔族の人たちを本当に助けてあげたいんだね。……セイジは神領には来ない、ということだね。そして元の世界の知識を与えてでも助けたいと」


「ああ」


「本当に優しいなぁ……そして本当に残念だよ。悪いけど君には異世界に行ってもらおう。カレンちゃんは君がいなくなって好感の才能の効果が切れてから改めて聞くことにするよ。オルフェもセイジがいなくなれば好感の才能の効果が切れてなんとも思わなくなるからね。最後に二人にお別れを言うと良いよ」


終わった。


ほぼ1日だけのずいぶん短い異世界生活だったな。


いや、異世界に飛ばされるんだからまだ異世界生活は続くのか。


今度はどんな場所だろう。


別れの言葉ってやっぱり『さよなら』くらいしかおもいつかないな。


「させぬ!」


突如オルフェが叫んだ。


「え?」


目の前にいたユウジが消えた。


「オルフェ?何をしたの?」


「異世界に飛ばしてやったわ」


「な、なんで?」


「おぬしを失いたくないからな」


「え、でも、今の話、聞いてたろ?好感の才能で俺のこと良く思ってるだけなんだよ?」


「たとえそうであったとしても、おぬしはもうわしの友じゃ。たとえ神であろうとわしから友を奪うのは許さん」


「セージさん。私も才能があってもなくてもセージさんがいなくなるのは嫌です。この世界に来て右も左もわからない私を助けてくれたのはセージさんですから」


あ、だめだ。


涙が出る。


きっとこの二人の言葉も好感の才能で言っているだけだと思う。


それでも嬉しい。


「ありがとう……本当にありがとうぉ……」


昨日から泣いてばかりだな、俺。



泣き止んでから冷静に考える。


どう考えても神領を敵に回した。


相手はチート集団だ。


ユウジを異世界に飛ばしたのがばれれば報復を受けるだろう。


いや、もうチート才能でばれてるかもしれない。


そうなるともうこっちに向かってきてるとか?


でもユウジは一瞬でこっちに現れたな。


時空魔法だろうか?


となると他のも時空魔法ですぐこっちに来そうなものだけど、来る気配がない。


どうしよう……。


「何を悩んでおるのじゃセージよ」


「いや、どう考えても神領の人たちを敵に回したから報復しに来るだろうなって。今すぐにでも来るんじゃないかと思うんだけど」


「ふむ。神ならすでに知ってここに現れそうなものだがな」


「だろ?なのに来てないからなんでかなって」


「まあ来たらきたで片っ端から異世界に飛ばせばよかろう」


「それができるならいいけど、相手は神様を自称するほどの特別な才能の持ち主たちだからね。なす術なくやられるような気がする」


「う、ぬぅ……」


オルフェも事の重大さを理解したのか黙る。


カレンも青ざめ始めた。


召喚者は全部で17人って言ってたから、あと16人のチート才能持ちがいるということだ。


そいつらがいっぺんに来たりしたらどう考えても勝てる気がしない。


「ごめんください」


背筋がぞっとした。


振り返ると今度は女の子が一人立っていた。


「か、神か!?」


「はい。あ、身構えないで。別に異世界に飛ばしに来たわけじゃないですから。オルフェさんも時素を操るのをやめてくださいね。私も異世界に行きたくないので」


異世界に飛ばそうとして失敗したのだろうか、オルフェが驚愕した顔で女の子を見てる。


「セイジさん。単刀直入に申し上げますけどこの世界の神になりませんか?」


いや、ごめん。


ホント何いってんの?


「どういうこと?」


「そのままの意味です。神領にもいろいろありまして、あなたがユウジを屠ったおかげでパワーバランスが崩れたんです。神領は抗争状態になり旧神派と新神派で争ってます。旧神派は元代表の一人アレクを筆頭にした傍観主義者の集まりで他7名が賛同。新神派は元代表の一人ランを筆頭に私を含めて7名があなたの意見に賛同しています。もともと争いごとは多数決で決めていたのですがユウジがいなくなって16人となったため綺麗に分かれて決着がつかなくなりました」


屠ったの俺じゃなくてオルフェなんだけど……。


「えっと、つまり俺にその新神派に加担しろってこと?」


「そうなります。カレンさんにも賛同いただきたいところですが、神領のメンバーになる際、不死の才能が渡されます。その才能の効果が老化停止と健康維持になり健康維持の影響で才能による強化効果や弱化効果は有無が言わさず消えます。そうなるとセイジさんへの好感度もだだ下がりです。万が一にも傍観者側である旧神派に回られると面倒なのでとりあえずここにいてほしいです」


言い方もうちょっと考えて。


しかし不死の才能の効果で好感の才能が効かなかったのか。


「断ったら異世界送りですか?」


「まさか。旧神派はあなたを異世界送りにしたがってますが我々新神派は反対にあなたに残ってほしと考えています。まあ細かい話はあとにしてとりあえず来てください。みんな待ってますから」


え、ちょっと。


と思った瞬間に場所が変わっていた。


そこはどう見ても元の世界で見慣れた光景だった。


「待ってたよ。ようこそ神領大会議室へ」

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