第11話 基礎魔法を全て覚えた
火魔法は問題ないとオルフェ王、もとい女王だったオルフェに言われ次に水魔法を試す。
水魔法のイメージは空気中にある水分を集めることだと思う。
が、水分のない空気では発現が難しいだろう。
なので酸素に魔素で作った水素を合わせるイメージをする。
水は酸素と水素の化合物だからな。
しかしこの一見単純なイメージの仕方に問題があった。
元素が合わさり化合物になる際、化学反応が起きる。
それを全く考えないで昨日デノラスがやったような水球を作ろうとした。
爆発した。
幸いケガもないしほとんど一瞬の爆発だけで、音が大きかったくらいだが俺を含む全員が驚いていた。
「な、何だ!?敵襲か!?」
「マリアス様!ご無事ですか!?」
テントで寝ていたスカルファスとレイシェンが慌ててテントから出てくる。
起こして本当にごめんなさい。
「セージ。今のはいったい?おぬし水魔法を試そうとしたのではないのか?」
「えっとそうなんだけど、水が生まれる原理をイメージしたんだけどイメージの仕方に問題があって。とにかくごめん」
「ぬ。そうか。水が生まれる原理など知っておるのだな。我らは普通煙になった水を集めるイメージをし、そこに魔素を送り込む。わかるか?」
分かってたけど空気中に水分なかったらなんて余計なこと考えなければよかった。
ちょっとあれだけど俺の口にも水分があるんだから別に空気中に無くてもよかったな。
「大丈夫。今度はちゃんとできると思うよ」
俺はイメージをし直し、目の前に水球を作る。
あれ?水ってどうやって動かせばいいんだ?
デノラスは……出現させた水球を重力に任せて降らせてただけだな。
火と違って燃料となる魔素を加えても水量が増加するだけ。
もしかして移動させる術がない?
オルフェ……あ、そもそも出したい場所に出せるんだから移動させる必要性が無いと。
「火魔法の時も思っていたが移動させるのにも魔素の力を使うじゃろう。そんな効率の悪いことをしなくても出したい場所に直接出せばよかろう」
せやな。
この世界の魔法でファンタジーと大きく違うのはここだな。
よくあるファンタジーでは体内の魔力とかを使って魔法を出すから基本魔法は体のそばで生成し、それを解き放つ。
体から魔力をだす、それで火とか水とかを作る、それを魔力で飛ばすという手間がかかっている。
しかしこの世界では魔素が空気中に満ちている。
わざわざ体から出す必要もないし魔法も出したい場所に直接出せばいい。
火の玉をわざわざ相手に投げつけなくても直接相手を燃やしてしまえばいいのだ。
冷静に考えたら怖いな。
人体自然発火現象みたいに突然自分の体燃え始めるとかホラーすぎる。
この水魔法だって使いようによっては危険だ。
口腔内や耳の中にいきなり水を出されれば相手を行動不能にできるし、最悪殺せる。
自分で考えといてなんだけどマジでこえぇ!
人領と魔領の戦争が起きなくて本当によかった。
巻き込まれて魔法使われたら悲惨な未来しか見えない。
というか魔法で戦ってたらすぐ決着ついちゃうんじゃないの?
マニャ王とマンス王が召喚対決で穏便に済ませようとしていてくれて助かった。
そしてオルフェに本当に感謝だ。
「次は何の魔法を使ってみるのじゃ?」
次は順番で行けば風魔法かな。
風が吹く原理って気圧の変化だよな。
正直この辺はちゃんと勉強してなかった。
暖かい空気と冷たい空気が気圧に変化を与えてそれで風が吹く……はず。
暖かいと気圧が上がるんだっけか、下がるんだっけか。
やってみればいいか。
まず空気を温めるイメージだな。
燃やすとはちがう。
……どうやって温めればいいんだ?
空気を圧縮したら雲ができるてきな実験があったような。
いやそれは関係ないか。
何だっけ。
えっと。
ダメだイメージがわかん。
んー、そもそも魔素はイメージで動かせるんだよな。
水魔法も空気中の水分を集めるという形で動かしていた。
つまりイメージするだけで元素って動かせるのでは?
あれ、そうなると普通にそこの空気自体を移動するイメージでいいんじゃ……できた。
突風が草原をかけていく。
あれー。
なんか小難しく科学的イメージしてたけど案外シンプルだったのでは?
うーん、まあ魔法が使えるならいいや。
深く考えたら負けだ。
俺はそう考えながら竜巻を作ってみる。
ついでだから土魔法の練習がてら竜巻のそばの土を巻き上げて竜巻の中心に投下。
空気中の水を混ぜて泥団子を作る。
「水魔法と風魔法と土魔法を同時に行ってますね。マリアス様。これは夢ですか?」
「夢じゃありませんよスカルファス。夢だと思うなら今すぐテントに戻って寝なさい」
「失礼しました。基礎魔法とは言え同時行使はすでに高位魔法と同等です。セージ様は兼ねてから魔法をお使いになっていたのでしょうか?」
「先ほどオルフェ様に教わり今初めて使ったようですよ」
「ふぁい!!?」
後ろがまたざわつきだしてるからほどほどにして泥団子を手元に移動させて取る。
綺麗にとまではいかないが丸い土の玉ができてる。
乾燥させて研磨をちゃんとすれば光るんだよな泥団子って。
いや、今はどうでもいい情報だな。
後の基礎魔法は光と闇に命か。
光魔法とか闇魔法って何だろう。
普通に明るさ調整ってわけじゃないよな。
「オルフェ。光魔法と闇魔法ってどんなものなの?」
「うぬ。光魔法とは太陽の光を使う魔法じゃ。こういうのじゃ」
オルフェが草原に顔を向け、レーザーを出した。
小さいながらも草原の一部が爆発した。
その様を見ると言いたくなるな。
凪払え!と。
いやしかしレーザーか。
イメージとしては光を集めて一方向に射出ということでいいのかな。
できた。
よし、次。
「光魔法は基礎魔法の中でも上位の魔法なんじゃが……まあよい。次は闇魔法じゃがこれは影を操る魔法じゃ。実体がないからおとりなどにしたり目くらましに用いる」
オルフェの影が俺に伸びて来て目の前に影が飛び出してきた。
原理としては影って光子が当たらず反射する量が……、いや、難しく考えるな。
光をそこから取り除くイメージでいいだろう。
目の前に吸い込まれそうなほど黒い丸が出た。
本当にインクでもそこにこぼしたんですかといわんばかりの漆黒だった。
「なんじゃそれは……」
今までに無いくらい口を開けるオルフェ。
どうやら光を取り除きすぎたか。
ごまかそう。
「えっと最後の命魔法なんだけど」
「お、おう。命魔法はケガをしたもの相手に練習すると良いじゃろ。そうじゃ、昨日カレンとお主は指をナイフで切ったじゃろ?あれを直してみればよかろう」
俺は左手の小指を見る。
昨日切った傷跡はふさがってはいるものの血が固まって閉じているだけで治ったわけではない。
「体内に流れる聖素を感じ取りそしてその聖素に願うのじゃ。癒せとな」
言われたとおり意識してみる。
体の奥に温かい何かが湧き出るのを感じる。
これが命、聖素か。
暖かい。
小指のケガの回復を願う。
「……治った」
血の塊がぽろっと落ちて傷が完全になくなっていた。
すごい。
「わずかな時間で基礎魔法は全部覚えてしまったなセージ。驚きじゃ。命魔法は使い過ぎに気をつけよ。聖素は使えば使うほど命を削るからの」
命を削るか。
命魔法はよほどのことじゃない限りは使わないほうがいいだろう。
「あの、セージさん」
カレンがおずおずと俺の服の袖を引っ張る。
どうした?
ああ、カレンも魔法を使ってみたいと。
俺は昼食の時間になるまでカレンに魔法を教えた。
カレンも俺同様にすぐ魔法が使えるようになったのは言うまでもない。
それにしても、カレン。
そんなに必死に水魔法を反復練習してどうした。
あ、火事の件を気にしてるのか。
ガンバレ。
「昼食の用意ができましたよ」
イシリアさんの掛け声で俺たちは焚火の周りに集まった。




