第六話 混戦
ハナは、男の銃から放たれた弾丸を腕で払いのけた。千切れた和服の袖から覗く肌には傷一つない。
「何だ…!?何が起こった!」
男たちは生理的な恐怖を感じ、思わず後ずさる。
しかし、その動揺をハナは見逃さない。すうっと音もなく、しかし着実に近づいて、彼女は男の顎に掌底を打ち込んだ。
「があっつ!!!」
頭部に走る衝撃。脳は激しい振動に耐えられず、男はその場にて沈黙する。
「ひいっ」
残る二人の男たちが、恐れをなして逃げ出す。面会室を出て去っていく二人を追いかけ、ハナも部屋を出る。すると、そこには屈強な男の姿が見えた。
金髪に、黄色のTシャツの、黄色の男。筋肉で引き締まった大きな体はハナだけでなく、男たちも顔を見上げる。
そして廊下で三人の注目を集める男が言い放った。
「おい、アンタ!借りは返すぜ」
ハナには最初、それが自分に向けて言われたものだと気づかなかった。
黄色の屈強な男が、銃を意に介さず二人の男を捻り上げるのをみて、やっと自分への言葉だと理解したのだ。
「でも、借りって…?」
ハナは、その黄色い男にあったことも無ければ、見たことも無かった。
コウガは二年前、五十嵐海と出会い、そして鬼へと改造された…
次回 第七話 鬼