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白騎士物語  作者: 深山 葵
4/4

四話 行軍

うわーん、ごめんなさい

「竜騎兵隊、第一から第七まで出撃準備整いました!いつでも行けます!」


「歩兵隊いつでも行けます!」


「馬車への物資の積み込み終わりました!」


騎士団の拠点エイジーンの城砦に勅命が届いたのが昨日太陽が沈み切った頃、そこから空が白み始めるころにはほぼ出撃の準備を整えていた。


「で、何か釈明は?」


「僕だって酒ぐらい飲むさ」


「なんでよりにもよって近々戦争になるってわかってて飲みに出かけてるんですか!!!」


いないフォリオに変わってシルフィの指揮の元で。

現在彼は彼女に酔いを覚ませと休まされていた。


「まさかここまで決断を急ぐとも思ってなかったよ」


「それは私も同感です。いつもなら早くても半月くらいはかかるのに。そこまで事態は逼迫してるわけでもないのに…」


「早期決着を図りたいのか…」


「単に貴族主義の紫の差し金だと思いますけど」


お互いが押し黙る。


こと、貴族主義の権化たる紫、緑の騎士団についての意見については二人は食い違っている。

お互いが気まずそうに目線を外した。

どちらも正しく、どちらにも一理ある。

この話題について、深く追求することを避けていた。

二人の間に朝日が差し込めたとき、二人の目線が合った。


「そろそろだね」


「そろそろですね」


出立の刻限が来た、あたりを見回せば整然と並んだ歩兵、今にも飛び立ちそうな竜を必死に宥める竜騎兵。

白騎士団総勢二千五百のうち街の守護に置いていく千を除いたのうち街道各地に駐在している者を除いた約千が白騎士団本部、白亜城の中庭に集結していた。

寄りかかっていた木の幹から立ち上がる。


「これ、酔っぱらって忘れないでくださいよ」


投げ渡されたのは白騎士のマントだった。

確かにこれがなければ締まらない。

休んだが案外酔いがまだ冷めてないらしい。

整列する団員の前に進み出て剣を抜き放ち空に向けて掲げる。


「これより、我らの国土であるハイドラ山脈を犯さんとするヌーアから山脈を守るべく、進軍を開始する!」


白き騎士たちの雄叫びが夜闇を切り裂いて朝を呼んだ。

フォリオに呼応して騎士たちは剣を抜き放ち叫び、竜たちも嘶きを上げる。


「出撃!!」



エイジーンを出発した白騎士団の軍勢は北街道を北上、前線であるハイドラ山脈まではおよそ三日の行程である。

竜騎兵も空を征けばもっと早く到着できるが竜の体力を温存させるために歩かせていた。


「だんちょー、ヒマすぎるぜぇ」


「ギルフォート、そんなだらけてたら戦場で死ぬわよ」


「ギルぅ油断しちゃだめぇ」


きゃははと小柄な少女が竜の上で腹を抱えて大笑いするのが癇に障ったのかギルと呼ばれた粗野な男が竜の上から拳を振り下ろすがひょいひょいと身軽に躱して全く当たらない。


「ルーシー、ギルフォートそれまでだよ」


いい加減フォリオも見咎めてルーシーとギルフォートをいさめる。


「へいへい、悪かったな」


「ごめんねーギルぅ」


「暫くはただ街道を歩くだけだからね。まだ気を抜くのは構わないけど喧嘩しないでね」


「団長の言う通りですよルーシー」


「リリイ姉ちゃんわかったよぉ」


ルーシー、リリイ姉妹は長髪と短髪の違いあれども見た目は瓜二つである。

それもそのはず、彼女らは双子で小柄な体格も全く同じだった。


「おい、りりイ。ルーシーの馬鹿を甘やかすんじゃねーぞ」


「そんなことないわよ」


楽しげなリリイに対してイラついたギルフォートのこめかみは小刻みに痙攣していた。

ギルフォートは短気だった。

そんな彼を煽って楽しむルーシーも傍観を決め込むリリイも楽しそうに事態を見ていた。


「あれ!見てください!団長、先遣隊のシルフィさんが戻ってきました」


四人に影がかかる。

濃さを増したそれは一匹の竜とそれに騎乗するシルフィだった。


「この先にある村の村長から野営の許可、もらってきました。今私の部隊が野営の準備に取り掛かってます」


「うん、ご苦労様シルフィ」


休む間もなくシルフィは飛び立っていった。


「本当によく働くもんだぜ」


「君も見習うんだね」


「それはひでぇでしょ!俺が働いてないみたいだ!」


「君がさぼって娼館に出かけているのはちゃんと知っているよ」


「誰だぁ!そのことばらした奴!」


行軍中はまだ、穏やかにすぎていた。


次回五月十八日

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