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火氷創主の百合姉妹  作者: 赤神幽霊
術師焼却編
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第四話 コロナと雷創主

 泣き疲れたのか、フロンはコロナに抱きついたまま寝息を立て始めた。

 そんなフロンをコロナは片手で支えつつ、襲撃前まで背にしていた岩の前へと器用にも自分のザックを移動させた。

 背もたれの代わりにするためだ。

 後はフロンを起こさないよう慎重に腰を下ろし、ザックにもたれかかりながら。

 足も伸ばして、緩やかな傾斜になるように調整して……と。


「これでちょっとは寝やすい……かな?」


 コロナではなく、フロンのことである。

 自らの体を寝具としてフロンに提供したのだ。

 一息ついたコロナは外敵の気配がしないことを確認してから、背後の岩の天辺に仄かな火を灯した。

 ろうそくの明かりにも似たぼんやりとした火は、控え目な光量ながらも懸命に二人を温かく照らす。

 まだ夜明けのきざしもない内にフロンが目を覚ましても、びっくりしないようにするためだ。

 目を開けたら真っ暗闇だなんて。

 起きると同時に頭すっきり、寝る前の記憶もばっちりです。

 ……というような人でもなければ、状況の把握には少なからず時間を要するはずだ。

 それが寝惚ねぼけているとなると尚更なおさら

 特にフロンは、寝惚けていないことの方が珍しいという、毎朝が大変な寝惚け重症者。

 そこに、小さな頃から真っ暗なところによく閉じ込められたり、明かり一つない夜の雪山に一人放り出されたりした過去が加わる。

 暗闇への恐怖心が心に根付いてしまっているのだ。

 暗視の術を会得してからは恐怖心もやわらいだのか、傍目はためには平気そうにしている。

 しかしながら、これで解決というわけにはいかなかった。

 睡眠中は術を維持できないのである。

 故に、起きて術を使用するまでの間だけは暗闇に対する恐怖が呼び覚まされてしまうらしい。

 だから、さっき倒した男の動きを待っている間も、フロンが眠ってしまわないように、コロナは気を配り続ける必要があった。


「おやすみ、フロン」


 コロナの胸を枕に、体を敷き布団にして。

 フロンはうつぶせの姿勢で眠っている。

 しかし、何かが足りない。


「あぁ、忘れてた」


 何のために燃えないように注意したのか。

 岩肌に落とされてからというもの、回収される時を信じて文句も言わずに待ち続けていた闇色のマントを手繰り寄せ、フロンの体に被せておく。


「……これでよし。後は……」


 フロンの乱れた髪を手櫛で整えながら、すぅすぅと寝息を立てて眠る横顔を眺める。

 時折、フロンのふわふわとした髪は、コロナの手をいたわるかのように優しく包み込んだ。

 少しばかり無理な体勢をとっているため、お尻と背中が痛む。

 だけどコロナは、そんなものどうだってよかった。

 なんてったって、愛する妹のふわふわとした髪の感触と、可愛い寝顔とを、心ゆくまで味わえるのだから。それも特等席で。

 しばらくの間、心置きなくフロンの寝顔を見つめた後。

 コロナはぐっすりと眠っている彼女に小声で語りかける。


「……ごめんね、フロン。私が最初からあいつを焼いてれば、獣さんたちも死ななくて済んだかもしれないのに……」


 その言葉は、夜の静けさの中に吸い込まれていくのみ。コロナはそう思っていた。

 ところが――。

 

「どの道、一匹残らず死んでいたさ」


 返答は稲光と共にもたらされた。

 何となく予兆のようなものを感じて、前もってフロンの目元を手で覆っていたコロナはそれには驚かず、遅れてやってくる轟音の方を心配した。

 フロンが起きたらどうするんだ。

 そんな意味を込めて、稲光と同時に姿を現した女性を睨み付ける。

 短くカットされた髪に、褐色かっしょくの肌。

 猛禽類もうきんるい彷彿ほうふつとさせる鋭い目つき。

 かたわらに降り立ったのは、よく見知った顔だった。

 その名はエクレール。コロナやフロンと同じ“創主”の一人で、二人にとっては姉のような存在だ。

 長身でスリムな体型だが、付くべきところは程よく肉付いている。

 モデルを思わせるスタイルを包むのは、上下一体型のゴム製スーツ。

 首から足首までの極薄のそれは、見る者を悩ませる妖艶な体のラインをはっきりと浮かび上がらせている。

 手首から先は同じくゴム製の極薄手袋。

 足首から先には、やっぱり極薄ゴムによる靴下が。

 ゴム製の物で身を包んでいるのは、自らの力のせいで発生する静電気を抑えるため。

 そうしないと、彼女の着る衣類のことごとくが何かと接触する度に、バチバチと非常にうるさいことになる。

 しかもたまに焦げる。物によっては燃える。

 髪を短くしているのも似たような理由で、静電気で逆立ったり焦げたり、埃や服との接触でいちいちバチバチするのを、できるだけ避けたいからである。

 セーター愛用者のフロンとの相性は当然よろしくない。

 仲は悪いわけではなくむしろ良好なのだが、お互い不用意に接近すれば、二人の間に線香花火にも似た青い電花が咲き乱れることがある。

 傍目には綺麗なそれも、当事者からしてみれば迷惑極まりなく。

 一度それを経験してからというもの、フロンは彼女のことをバチバチさんと呼ぶようになってしまった。

 普段ならスーツの上に服も着ているのだが、それが今日は見られない。

 ということは“仕事中”なのだろう。

 以前聞いた話によれば、雷を纏って移動する都合上、普通の服はあっという間に“燃えかす”になってしまうので、端から着ないようにしているそうだ。

 靴は種類的な意味で普通のスニーカー。

 こちらのスニーカー、シンプルなデザインながらも、素材から意匠までこだわり抜いた至高の一品とのこと。

 コロナのような素人にはさっぱり違いがわからない。

 なんでも、彼女行き着けの老舗しにせの職人に、数えるのも馬鹿らしくなるくらい幾度となく足を運んで頼み込み、やっとのことで特別にあつらえてもらったお気に入りの品だとかなんとか。

 そうまでしないと請け負ってもらえないなんて、相当無茶な注文でもしたか、とんでもない素材でも持ち込んだのか。

 あまり影響がでないように注意しているであろうことを踏まえたとしても、創主の雷に耐えていることを考えると後者なのだろうか。

 当然ながら、迂闊うかつに触れていいものではない。彼女の逆鱗げきりんだから。


「安心しろ、鳴らんよ」


 ほっと息をくコロナを見て、女性――エクレールは苦笑した。


「……まったく、重度のシスコンなのは相変わらずだな、“火創主”よ」


 フロンを自らの体に寝かせているコロナを前にして、彼女は呆れ声だ。


「いいじゃない。私の家族はフロンだけなんだから、これくらい普通だよ」


 返事をしながら、コロナの視線はフロンへ。

 稲光くらいで起きるような娘ではないけれど、やっぱり気になってしまう。

 案の定、すやすやとフロンは眠り続けていた。


「それで“雷創主”……エクレールさんはどうしてこんな場所に? もう私たちしかいないけど、待ち伏せでもするの?」


 妹の睡眠状態を確認し終えたコロナは、エクレールを見上げながら、確認のために問いかけた。


「ある男を始末する、はずだったんだが……。どうやらその必要はなくなったらしいな」


 そこだけ不自然に黒ずんだ岩肌を見て、“雷創主”ことエクレールは複雑そうな表情を浮かべた。


「……残酷なことするねぇ。そんな可愛い顔してんのに、それじゃあ嫁にはいけないよ……って待て待て冗談ってうわっ、熱! あっちぃ!」


 話している最中のエクレールが、いきなり熱いと叫びながら飛び上がる。


「静かにして。フロンの睡眠の邪魔しないで」


 コロナの仕業だ。

 嫁のくだりで一気に発火した。

 エクレールの周囲に狐火めいた青い炎を前触れなく生じさせて――すぐに消失させた。

 大きなお世話だ。

 そう言わんばかりに、そっぽを向いて、ふんと鼻を鳴らす。


「おっかねぇなぁ、もう……。普通、人に青炎向けるか? ご丁寧にホラーチックにしやがってよぅ」


 まれにしか遭遇そうぐうしないくせに、幽霊を始めとした怪談お馴染みの存在が大の苦手なエクレールは、控え目な声量でぼやく。

 一応、フロンを気遣ってくれているらしい。

 それはありがたいのだが……。

 コロナはある光景を脳裏に浮かべていた。

 エクレールに見つからないよう、それぞれの手段を用いて必死で身を隠している“連中”の。

 あるものは壁の中へと溶け入って。またあるものは、影に紛れて影のふり。

 どうにかやり過ごそうと、擬態したり潜んだりと大変そうな姿を。

 もし見つかったらどうなるか。

 答えは簡単。悲鳴と同時に雷鳴轟き、こちら側から強制退場。

 そんな相手の前に、どうして好き好んで出てくるというのだろうか。


 ――あなたの方が明らかに怖がられてるんだけど、気づいてないの?


 コロナはそう口にしかけて少し考え……、“彼ら”には悪いがやっぱり黙っておくことにした。

 きっと、過去に何かあったのだろう。

 今のエクレールに言ったところで、信じてはもらえまい。


「だったら茶化さないで。エクレールさんだって、スニーカーを傷つけられたら怒るでしょ? それがその岩肌の答えだよ」

「ぐっ……。それを言われると反論できんではないか。あたしが悪かったよ、コロナ」


 エクレール自身もスニーカーが絡むと無慈悲になる習性があるため、コロナのことを言えた立場ではないのだ。

 そこを突かれると黙るしかない。


「……それで、さ。あの獣たちは諦めるしかなかったの?」


 専門外の術についてはお手上げなのよと、コロナは肩をすくめてみせる。


「特定の術師から送られる力の供給が断たれれば、早くて翌朝には……な」

「そう……」

「まぁ、その、なんだ。そう気を落とすな。……さて、あたしは央都おうとに帰るよ。報告もあるし、“次”もあるからな」


 そう言って帰ろうとするエクレールを、コロナは呼び止める。

 どうしても訊いておきたいことがあるのだ。


「エクレールさん、待って」

「ん、どうした?」

「あの男のことなんだけど、私が燃やしてもよかったの? 獲物を横取りしたようなものだけれど……」

「別に誰が仕留めたって構やしないさ。情報の収集も終わってたしな。それに、お前さんが町から引き離してくれたおかげで巻き添えもない。あたしとしては万々歳だよ」

「そう、なの? なら、よかった……」


 結構気にしていたのか、顔に安堵の色を浮かべるコロナ。

 それを見たエクレールはふっと微笑んだ。


「お前さんのそういうところ、あたしは好きだよ。他には何かあるかい? あの男が何をやらかしたのか、とかどうだ? 遠慮するな。知りたいだろう?」

「ど、どうでもいいよ、そんなの。興味ないもん」


 優しい微笑みから一転、意地の悪い笑みを作ったエクレールから、コロナはぷいと顔を背ける。

 そちらについては、わざわざ訊ねなくともコロナにはある程度察しがついていた。

 おそらくあの男は、術などを利用して命あるものに様々な存在を繋ぎ合わせ、より優れた生命体を創造しようと試みる術師、“合生術師”だろう。

 自分の使役する獣たちを爆弾にするくらいだ。

 生き物やら何やら、色々ともてあそんだに違いない。

 成果のためなら手段を選ばない。

 そんな考え方の合生術師には珍しくもない行動だ。

 だからこそ監視する機関が存在する。

 エクレールが追っていたということは、あの男は越えてはならない一線を越えてしまったのだろう。

 何をしたのか、それを聞いているだけでも気分が悪くなることは、想像に難くない。


「……えっと、エクレールさん。最後に一つ、お願いしてもよろしいでしょうか?」

「――む? なんだい改まって」

「師匠をぶん殴っといてください」

「“また”か!? “また”騙されたのか!? ってあっつ! だから燃やそうとすんなっての!」

「うっさい! “また”を強調すんな! ええそうよ、またなのよ。悪い? あ、スニーカーだけは無傷で残すから、安心してこんがり焼けてね!」


 恥ずかしそうに顔を赤らめていたのもつかの間のことで、コロナはにっこりとした作り笑顔をエクレールへ向けた。

 きちんと目も笑っている、あまりにも出来過ぎた笑顔を。


 ――ぞくっ、と。


 エクレールの身を、氷海に投げ込まれたかのような凄まじい寒気が襲った。


「おい止めろ! まさか本気で燃やす気じゃねーよな!?」

「もうエクレールさんったら、何言ってるの。本気に決まってるじゃない」

「ふざけんな馬鹿やろう!」


 吹き付けてくる熱波を帯電して遮るエクレールの前で。

 不可視の火にあぶられた周囲の大気が、あまりの熱にその身を震わせ、コロナの姿を(ついでに荷物とフロンの姿も)不確かなものにしていく。

 きっちりフロンや荷物は熱波から守っているようだ。

 フロンは放っておいても氷が勝手に守るだろうに、やはりシスコンだ。


「む……!」


 そんな中でも、コロナのにっこり笑顔は張り付けたように保たれたままで。


 ――よもやここまで見事な笑顔を習得しているとは。

 稽古けいこをつけてとせがまれた踊りと同時に、表情の作り方を仕込んだ甲斐があったというものだ――。


 などと、そんな場合ではないのにもかかわらず、エクレールは感想を抱かずにはいられなかった。

 色のない火、透火とうか。この地上で最も強力な火を操る火創主の、本気の火。

 纏う火が本気のそれでも、まさか本当に火を放ってくるとはエクレールだって思ってはいない。

 コロナがその気だったら、今頃はこちらに向けて遠慮なくぶっ放していることだろう。

 それならば、なぜわざわざ透火を纏ったのか。それも表情まで取りつくろって。

 おそらくだが、怒りを火で表しているのだと思われる。

 怒りの度合いは見ての通り最高潮だ。

 それから作り笑顔の方は、単に恥ずかしさに耐え切れなくなっただけではないだろうか。

 リリィ姉妹が央都にいた頃は実の妹のように可愛がっていたので、ある程度はコロナという少女を知っているつもりだ。

 笑顔と透火の目的はそれとして、暴発の可能性があるので一応離脱の準備だけはしてある。

 困ったことに、コロナの力を暴発させ得る人物が、よりにもよってコロナの元で眠っているからだ。

 フロンが寝惚けて、コロナのやたらと敏感な胸へと手を伸ばしたりしたら……。

 やけに艶っぽい悲鳴とともにコロナの集中は呆気なく途切れ、制御を失った透火によってたちまち大惨事が引き起こされるだろう。

 こんな岩山など跡形も残るまい。


(水創主よ、あたしも一発ぶん殴らせてもらうわ……)


 水創主。割と素直だった幼いリリィ姉妹に、嘘と本当を無意味に入り混ぜた情報を教え厳守するよう指導してきた、彼女たちの師匠。

 通称を妖怪若作り爺さん。見た目は三十代そこらだが、実際は高齢。

 どうやっているかは不明。だからなのか、妖怪などと言われたりしている。

 リリィ姉妹の身元引受人となってからは、一部の人から爺さんの前にロリコンが付けられようになったとかならないとか。

 色を好む人物ではあるが、そこまで変態ではない。頼むそうであってくれ。

 聞いた話によると、最初は日常生活上でのみ姉妹をからかっていたようなのだが。

 あっさり嘘に引っかかる幼い姉妹が可愛いかったようで、調子に乗って創主としての指導中にまで嘘を大量に混ぜ込んでしまったらしい。

 当然の結果として、姉妹が成長して色々と自分たちで理解できるようになっていくにつれ、嘘は次々に発覚していった。

 中にはフロンの身に危険が及ぶものも多数あり、その度にコロナが噴火している。

 要するに、この状況のそもそもの原因である。

 そんな水創主の姿を脳内に描きつつ、エクレールは密やかに自分も彼を殴ることを決意したのだった。


「わかった、わかったからそれ止めろ。疲れるだけだぞ?」

「…………そうね」


 聞く耳持たずな態度に出るかと思えば、意外なことに、真顔に戻ったコロナはあっさりと消火した。


「ごめんなさい、取り乱したわ……」

「お前さんは爺さんが絡むと荒れずにはいられんのか……。いつ暴発するか冷や冷やしたぞ」

「どうして暴発の心配をするの? いくら取り乱していたって力の制御だけは忘れないわよ? 徹底的に酷い目に遭わ……じゃなくて訓練させられたもん。そりゃ、フロンを泣かせた相手を焼き尽くしちゃうような人間だけど、流石に暴発はさせないわ」

「その発言の説得力云々は置いておくとしてだ。コロナよ、自分の胸元を見てみな」


 エクレールに指摘された通り、コロナは視線を胸に落とした。

 真っ先に捉えたのは愛する妹の横顔。

 それから、無駄なまでにすくすくと成長しているため、最近は疎ましく思うことも増えてきている二つの果実。

 その果実のすぐ傍、今にもそれに触れそうな、掴みそうな位置に妹の手は添えられている。


「…………」


 じーっと、フロンの手を見つめるコロナ。

 旅人らしからぬ、けがれを知らない新雪を彷彿ほうふつとさせるほど綺麗な手。

 その手からすらりと伸びた細くて長い指が、コロナの乳房に絡みついたり、肌を優しく滑っていったり、先に実ったさくらんぼをきゅっと摘み上げたりする様を、つい想像してしまい……。


 ――ごくり、と。


「おい待て、なぜ喉を鳴らした」


 エクレールの声に、自らの想像に沈みつつあったコロナの意識は現実に引き戻される。


「――へっ? な、ななな、“にゃ”んでもないよ!」

「ほう? ならばなぜ噛んだ?」

「ほんとだって!」


 口ではそう言っているが体は正直なもので、コロナの体は火照ほてり、顔はもちろん耳の先まで真っ赤になっていた。

 これで何もない――コロナ曰わく“にゃんでもない”――などということはあるまい。

 そんなコロナに、エクレールは呆れたような目を向けながら「なんだか頭痛がしてきたぞ……」と頭に手を当てた。


「なら訊こう。お前ら、姉妹で普段から何をしてるんだ」

「だから何もしてないって! ちょっとじゃれてるだけよ! えっちなことなんて、これっぽっちもしてないわ! ……あれ?」

「仲がいいのは結構だが、お前ら姉妹だろ。そこまで行ってどうすんだ。お姉さんは二人の将来が心配だよ?」

「だ、大丈夫よ。私フロンと結婚するから!」

「それ大丈夫って言わねーよ。同性婚で近親婚とか何考えてんだ」

「そんなぁ……」


 コロナの情けない声は、夜を旅するそよ風にさらわれていった。

 割と騒がしい二人をよそに、フロンは起きる気配さえなく、ぐっすりと寝相よく眠り続けているように見えた……。

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