黄金の王と、白金の--
もう、この『場所』に『来る』のは、何度目だろうか--と、『彼女』は考える。
全ての光と、全ての色もて、全てが在る世界。
その中の空位となっている唯一の『玉座』の前。
何度も、何度も繰り返し訪れた。
『自分』が『決めてしまった』時から。
叶わぬ想いだと、心の何処かで思ってもいた幼い頃からの『願い』。それを、受け入れてもらった『あの時 』に--『自分』は、決めてしまったのだ。
そして、それが『条件』だった。
ふと、目の前で『ひとつめの玉座』に気配が満ちる。
天を仰げば、『七色の虹』が十重二十重と、『世界』に新たな王の誕生を告げていることを『理解』する。
--色濃くなった『気配』を、『自分』はよく知っていた。
だからこそ、呟いた。
「"おめでとう。……『魔人族』が戴きし、新たな王。"」
返事が、聞こえたような気がした。『自分』がこのひとの声を聞き誤る筈がない。
「"『黄金』の名を持つ、新たな王。『予言』通りに……あなたが『選ばれて』本当に、良かった。『選ばれなかった』のが、私で、本当に良かった……"」
更に『聞こえた』返答に、静かに首を左右に振る。
「"ううん。本当に良かったの。私は大丈夫だから。王と成るべきはあなただった。だから……"」
そう、呟いて『彼女』は、
七つの玉座の中心に現れた、新たな玉座に視線を向ける。
「"この『玉座』を、求めたりしたりしないから……大丈夫だよ"」
零、もしくは八と呼ぶべき『理の外に在る数』を、冠する『玉座』の前で、『彼女』は、そう、呟いた。