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FILE4〜はじける力〜

「え〜っと、ここは何処だ? 確か第四プラントに入って・・・自分が何処にいるのかますますわかんなくなってきたぞ?」

超方向音痴のアレックスには地図無しで初めて来た所など歩けるはずもなかった


「さて、基地内じゃトランシーバーも通じないしここはどうするか・・・第8研究所? ん?そう言えばアリスがさっき第8研究所とか何とか言ってたよな。 行く当てもないし入ってみるか。」

久々の休みなのに子供につきあわされて遊園地に来たお父さんの如く、いかにもけだるそうな風貌でまた歩き始める。研究所のドアに近づく前に2人居たがアレックスにとって2人程度黙らせるのは造作もないことだったので省略


アレックスはドアに手を伸ばそうと思ったが―――ドアの奥からの音に気がつき

「おっと、先客がいたか。・・・何か言ってるな。 ちょっと聞いてみるか。」

と言うと、ドアの先から典型的な盗み聞きのポーズをとった


「ふふふ、さあどうしますか?ウィル。」

軍服を着た男達の前にいる琥珀の目をした女はあえて解っていることを聞く。

「それで脅しているつもりか?クライン、何度も言っている筈だ、アレを動かせる人間なんて早々いない。ましてやお前のようなただの一研究員なんかに、、、」

ウィルと言われた男は当たり前の、しかし唯一の方法を結論から除外してしまっていた。


「動かせます」


「何?」


「私も「披研体」ですから。それも「ナイト」のね」

そう言うとクラインは僅かに男に近づく

「バカな!?「ナイト」レベルは既に全大戦でほとんど消滅しているはずだ!?」

「えぇ、本物はね。しかしそのデータから本物以上の「人工SK」が出来たと聞いたらどうしますか?」

「ありえない!ナイトレベル以上ののトレースは不可能だったはずだ!!」

ウィルは認めたくない現実から、自分でも理解している事を必死で反論していた

「いつの時代のことを言っているのかしら? 今ならボーンレベルのSK程度なら量産できるわ。と言ってもアレの、「イヴォルヴ メタル」の開発しかしていなかった貴方は全く知らないでしょうね。」

注)ボーンレベル=SKの一番小さく純度の低い種類のこと


(披研体? トレース? イヴォルヴメタル? 何だそりゃ?)

アレックスは色々と考えたがそっちの方面の知識はほとんどなかったので

何のことか解らず、とりあえず記憶しておくだけにとどまらせておいた


「くっ、そんなたいそうな物の次は「イヴォルヴメタル」を奪いに来た、と。」

「奪いに? 違うわ 元々アレは私たちのために開発されたような物よ。」

クラインは近づき、さらに手には注射器が握られていた


「・・・・・」


自分でも分かっていた。気づきたくなかった。

自分は彼女に、良いように利用されていたのだと。

「後は貴方の後ろのカプセルを開けて、持っているプログラムを始動すれば全ておしまい。 まぁ私たちと手を組むのなら命だけは助けても良いけど?」

もちろんそんな事は嘘だと解っていた。 しかしそれ以上の理由が彼を突き動かす


「お前らがやろうとしていることはだいたい解る。そんなバカなことに私が手を貸すとでも?」

何をしても死ぬのなら最後まで自分の信念を貫きたい。

ただのかっこつけの様だけれどそれでも死に際くらいは潔くなりたい。

バカだと言われても良い。どうせ今までと同じ自己満足の人生だ。

「貴方が簡単にYESと答えないとは分かっていたけど、、、しょうがないわね。やっぱりこの薬を使いましょうか。 あなた達 博士を押さえてちょうだい。」

そう言うと周りにいた男達がウィルの腕をつかんだ。

ウィルは力ではかなわない、もとい死ぬ覚悟だったので抵抗はしない。


アレックス(あの男、話を聞いたところカプセルのこと何か知ってるみたいだな。色々聞きたいことも有るし、、、でも、ナイトクラスに勝てるか?あ〜考えてても仕方ねぇ!!)

ならばと言わんばかりに、手に握られた銃に力が入る。

入った瞬間・・・撃つ!!


バシュン!!


静かな部屋に響く銃声

レールガンの軌道が男に重なる

レールガンの弾が一人の男に当たる


レールガンの弾に当たった男は─────





アレックスだった


「ぐわっ!?」

一瞬何が起こったか解らなかった

まさか自分が撃たれるなんて思ってはいなかった

幸い当たった場所は腕、しかし出血は多い


「だれっ!?」

彼女も突然の銃声に驚く


「クライン、ネズミが一匹紛れ込んでいた。 相当な数がこいつにやられている。」

というとドアの先からフェイスマスクを付けた銀色の髪の男が入り込んできた

「見回りご苦労様。 ロクサス。こいつは、、、!!」

ロクサスと言われた男は頷きもせず ただ膝をついている侵入者を見続けていた。

「ちっ、銃を撃つつもりがまさか撃たれるとはね。」

久しぶりに撃たれた感じを少し懐かしいと思いつつも、自分が戦いの場にいることを改めて痛感していた。

「久しぶりだな、アレックス、いやXナンバー」

「!? オレにはそんなマスクをした知り合いはいないぜ? それにXナンバー?何だよそれ? お前・・・なにもんだ?」

初めて会ったと思われる人にいきなり名前を言われ少し動揺しつつ、

いつでも反撃出来るよう、撃たれていない左手に力を込めた


「顔が見えないからか? フッ、恩人を忘れるとはお前らしい。」

久しぶりにあった友人の様な口調でしゃべるのがアレックスは気に入らず


「ハッ!じゃあオレを知っているのならもちろん、オレの強さも知ってるんだろう!?」

その刹那、アレックスの腕から紅蓮の炎が湧き出す

全てを燃やし尽くし 岩すら溶かすほどの炎は周りを取り囲んでいた兵士を燃やし尽くす


「猪突猛進ぶりは相変わらずか。ウィルが死んだらどうする?」


何もないはずの空間から幾数千ガロンもある水がウィル、クライン、ロクサスを包み込む

彼らが纏っている水にアレックスの炎がかき消されてしまう


「なっ!?オレの炎が水なんかにかき消されただって?」

アレックスの全力の炎がかき消される事なんて一度たりともなかった

それはSK使い、スタイリストとしての能力がロクサスと言う奴に負けていると言うことだった


「流石、アブソリュートリヴなかなかの火力だ。」

過去の呪いが込められたその名に憤怒したアレックスは

「オレを・・・オレをその名で呼ぶなぁ!!」

さらに炎の力が増していく

「さすがXナンバーだな! しかし、このシチュエーション、あのときを思い出すぞ!! 残念なことに今回はネリアはいないようだがな!!」

「!!!!」

その名前には聞き覚えがあった。

おそらく一生忘れることの出来ない名前だろう。

自分のせいで、自分が無力だったせいで助けられなかった大切な人─────

「お前ッ!!お前ッッ!!! お前ーーーーー!!!!」


かえられない自分の罪


忘れていたわけではない。

しかし、 「コロシタノハジブンダ」 

理屈では解っていても悲しさと怒りがあふれ出る

この怒りは仮面の男に対してではない、

大切な人一人守ることが出来なかった自分の無力さにたいしての怒りがあふれてくる。



彼の手に水が収束していき、アレックスとは比べ物にならない程の力が収束し

力が、水がアレックスに向けて放出されていく。激流のような水流はアレックスを吹き飛ばす


「くそっ!けっ消せない!?うっうわーーーーーー!!」

凡人なら一瞬で肉塊になる程の水圧が一斉に襲いかかる

(く、くそオレじゃあ 勝てないのか? 息が・・・ヤバイ意識が遠くなって、、、いく、、、)


ドサッ・・・


「死んだの?」

今まで後ろにいたクラインが前に出てくる

「いや、気絶しているだけだ。 これがXナンバーって奴か」

「えぇ、でも覚醒していないみたいね、使えない。ふふ、でもまさか披研体の方から来てくれるなんてね。」

「そっちはどうなった?」

「あの人は薬を打ったらまじめに働いてくれたわ。」

「違う、カプセルの中身のことだ。」

問題は結果だ、結果に至るまでのプロセスは意味をなさない

「開いたわ。中身はやっぱりXナンバー0ね。」

「こいつが・・・」

そこにいたのは十代前半と思える幼い少女だった。

すぐに溶けてしまうような氷のような儚さや弱さ、しかし透き通るような美しさも持った少女は

カプセルから出たとたんまた眠りについてしまった


「ならオレはこいつを持って先に格納庫に行ってる。 アレックスは殺すなよ。」

「さあ?どうしましょうか?」

ロクサスは返事をする前に部屋から出ていった

「戦いの時以外は感情を出せないのね、まぁ私の命令にだけ従ってくれていればいいわ。」

他人を使えるか使えないかとしか見ることの出来ない無能な有能は、余った時間で自分の作った計画を何度も確認し、計画が完璧に・・・アレックスが来たことは予想外だったがそれを含めても順調に進んでる事に一人嘲笑していた。

ちょっと待って?こいつが来たと言うことは仲間もどこかにいると言うこと?

これだけの施設に一人で入り込んでくるとは考えづらい。それを含めても作戦の大きな変更はないが


〜ポーン〜

「プログラムが始動しました」

あれこれ考えていくうちにプログラムが起動したようだ


「さて、プログラムも起動したしもう貴方は用済みね。」

彼女の手には先ほどの注射ではなくハンドガンが握られていた

「さようなら」

彼女がトリガーを引こうとした瞬間


「おいおい、まてよ。まだ俺が遊んでないぜ?」


「フッ、そう言えばアレックスと言ったかしら。 まだ貴方がいたのね。」


そこに立っていたのは先ほどの戦闘で傷ついたアレックスだった

とても立てるような傷ではないはずなのにあっさりと、当たり前のようにそこに立っていた


「そいつにもお前にも聞きたいことがあるんだけど俺の、いやこいつのために答えてくれるか?」


一歩近づく


「あら残念、彼はもう邪魔だから殺させてもらうわ。」


「じゃあお前を止めるか。 愚民、あまりオレを怒らせるなよ?」


さらに一歩近づく


「死にかけの貴方が私を止められるの?」

クラインの銃に風のエナジーが集まる

「SKエナジー、バスタ−モード」

殺すなと言われたが覚醒していないXナンバーなんて使えない

ならゴミは早いうちに消しておいた方がいい。

「私達に報いた罰よ、消え去りなさい。」カチッ

4口径の銃から出てきたのはただの弾丸ではなく戦艦の主砲レベルの光線

そして光線は研究室を破壊していく カプセル コンピューター・・・

全てが消えてゆく

まずこれを受けて生きているわけがない    はずだった


「ふぅ、少しやりすぎたわね。私も格納庫にいきま、、、!?」

彼女は感じた。いるはずのない人間の気配を


「アハハハハハハ!! ナイトレベルってのはその程度か!?」


「え?」

彼女が撃った銃にはロクサスが出した水エナジーの数倍の力を込めたはずだった。

「なっ何なのよ!? どうしてそこに!?」

しかもさっきの光線をかき消したと言うことはそれ以上の力を出したと言うことだ、なのにその力の解放を感じることが出来なかった。普通そんな力を出した場合は簡単に感じることが出来るはずなのだが・・・

「アレックスに死なれたら、俺が困るんでね。」

「な、何を言ってるのよ。無駄なはったりはよしてちょうだい!」

様子が何だかおかしい、さっきとはまるで別人になってしまっている。

アレックスってこいつの名前ではなかったの?

「はったりかどうかはすぐ分かるぜ?」

「っ!消えなさい!!」


続けて3発、4発、5発撃つ

しかし、全ての光線がロクサスとウィルの所だけ避けていってしまう。


「愚民が、絶対的な力の差が分らないのか? 所詮ただの兵士は王には勝てないって事だ!!」

分からない。

どうしても何も感じられない。

むしろさっきの炎を出していた時の方が強い力を感じた。

今は力の存在すら感じられない。これじゃSKを取っていない人間以下だ。

それに「兵士は王には勝てない」?それではまるで───


「まさか・・・? お前が、、、?そんな!あり得ない!」

そう言うと彼女は先ほどとは比べられない程の力を銃に込める。

研究所が半分吹き飛ぶかもしれないがこのわけが分からない奴を早く消してしまいたい。

「今度こそ!!!本当に死にな・・・」 ドスッ

「うるせぇよ、こいつの仲間が死んじまうだろ?」

「!!!!」

クラインの体はアレックスの姿をした何かの腕に貫かれていた

「大丈夫だ、すぐに死にやしない。死んだら話が聞けないもんなぁ?」

「が、、、はぁ」

何とか息は出来る。質問に答えさせるためだろう。しかし、出血量が多すぎて頭が回らない。

「まず一つ目の質問。え〜っと?あぁそうそう。あのロクサスという男はどうしてこんな所にいるんだ?」

まるで誰かに言われた質問を聞くようにしゃべっていく

「私の、、、部下だもの。ここにいるのは当たり前でしょ、、、?」

「ちっ、まぁ良い。 2つ目の質問。カプセルの中身は何だ?」

「・・・」

「3つ目 トレースとは?」

「・・・」

「4つ目 イヴォルヴメタルとは?」

「・・・」

「5つ目 披研体とは?」

「・・・そんな何でも言うと思った?」

「ふん、お前に聞けるのはここまでか。 最後ぐらい王の役に立てばいい物を・・・」

彼のプレッシャーが変わった。今まで何も感じられなかった筈なのにいきなり殺気がわく。

それも純粋な殺気だけ、他は相変わらず何も感じられない。


「じゃあな 愚民」



続く

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