9/27
誰かがすでにメモを残していた
彼らは名も知らぬ店に入った。石に文字が刻まれているものが売られていた。絵が描かれたり彫られたりしているわけではなく、肉眼では見えないのに、まるで文字がそこに生きているかのようだった。
係員は何も尋ねなかった。ただ籠を指差した。
柚月は籠の中に手を伸ばした。丸い石に触れた。それを引っ張ると、そこに文字が浮かび上がった。
「戻る」
春樹は別の石を取った。
彼は言った。
「まだ」
颯太は何も触らずに、大きな灰色の石の前に座った。石は何も言わなかった。しかし、ベルが三回鳴った。
係員は二人に封筒を手渡した。封はされていなかった。中には、見知らぬ筆跡で書かれたメモが入っていた。
「一度出て行ってから、また戻ってくることもある。でも、心には時計なんてない」
柚月はそのメモをノートにしまった。春樹は言葉を失い、それを見つめた。
係員は二人に幸運を祈ったが、行き先は尋ねなかった。
そして颯太が選んだ石は…彼が去る時に色が変わった。




