誰にも邪魔されずに世界が静まる場所
広場は宙に浮いているようだった。空中ではなく、時間の中に。車も自転車も通らない。風も木々をほとんど揺らさない。子供が濡れた筆でセメントに絵を描いていた。文字は完成する前に消えてしまった。
春樹と柚月は石畳の縁に座った。
颯太は二人の間に横たわった。
「ここが好きなの」と柚月は言った。
「なぜ?」
「注目を浴びる必要がないから。なのに、私の全てがここにある。」
春樹は腕を組み、靴の先を見た。
「世界が故郷になる時って、わかる?」
「いつ?」
「君といると静かで、それでいて居心地の悪いと思わない時。」
鳥が飛んでいった。鳴かず、ただ影を落としただけだった。
柚月はノートを開いた。彼女は何も書いていなかった。ただ開いた。まるでそれで十分だとでも言うように。
春樹はポケットから一枚の紙を取り出した。彼はそれを星形に折り、柚月のノートの間に挟んだ。
「もし君がこの旅を始めた理由を忘れてしまったら…これを開けて。」
彼女は星に触れた。それはきちんと作られていなかった。不格好な折り目があった。しかし、それは美しかった。
颯太はあくびをした。思わずベルが鳴った。
柚希は微笑んだ。
だって、大切なこと全てが改善を必要とするわけではないんだから。




