珍しい一日
空は完全に晴れ渡っていたわけではなかったが、灰色とも言えなかった。まるで主人公たちの準備ができたか確かめるために、時間そのものが動き出しているかのようで、目を開ける前から一日が始まっているような気がした。
結月は体重が軽くなったように歩いた。赤いリボンはほどけていなかったが、まるで独自のリズムで動いているようだった。春樹は前も、彼女も見ていなかった。彼は自分の内側を見ていた。颯太は、痕跡ではなく記憶を探すかのように、隅々まで匂いを嗅いだ。
脇道で、気づかれずにベルが鳴った。窓がゆっくりと閉まった。猫が梯子の上から、頭を下げずに二人を見ていた。
「何か大切なことが起こっているような気がしたことはない?…でも、ドラマチックなこともなく、音楽もなくて?」結月は焦りもせずに尋ねた。
春樹は微笑んだが、すぐには答えなかった。
「ええ。時に、一番大切な日は、声を上げないんです。ただ存在しているだけ。そして、それに耳を傾けるかどうか、自分で決めなければならないんです。」
颯太は小さな手書きの看板の前で立ち止まった。そこには何も書かれていなかった。結月のノートのリボンのように、赤い線が引かれているだけだった。
彼女はそれに触れた。看板は温かかった。
春樹が近づいた。
「ここは一種のリハーサル場みたいなものなの」ここでの出来事は終わりではなく…全てが準備なのだ。
柚月はノートを開いた。ページが震えた。風のせいではない。感情のせいだ。
彼女はこう書いていた。
「今日、誰にも気づかれないような出来事があった。でも、どうしても胸にしまいたい。」
春樹は邪魔をせずに読み上げた。颯太は看板に触れた。ベルが鳴った。二度。
そして、空気が…少し柔らかくなった。




