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木は静まり返っていたが、枝には花びらのように散りゆく手紙が、今もなお溢れていた。
木は静まり返っていたが、枝には花びらのように散りゆく手紙が、今もなお溢れていた。
それは送るべきメッセージでも、行き先を待つ返事でもなかった。それは、留まることを選んだ思い出だった。
柚希は閉じたノートを手に、木陰に座った。春樹は幹の脇に花を置き、颯太は彼女の隣に横たわった。鐘が一度鳴った。まるで誰かが永遠のリズムを刻むかのようだった。
空がゆっくりと開いた。始まりも終わりも告げるためではなく、皆が経験したことはすべて、それを感じた人々の心に既に刻まれていることを思い出させるためだった。
彼女は完璧さを求めることなく、最後の一文を書いた。
「私たちは、私たちが後に残すものではない。私たちは、私たちを覚えている人々の心に息づくものなのだ。」
風がそれを運び、枝の間を舞い上げ、木はそれに応えて再び花を咲かせた。
別れはなかった。
ただ存在だけ。
ただ季節となった記憶だけ。
ありがとう!




