最後の朗読
午後は、もう少し長く居座ろうとするかのように、ゆっくりとした流れになった。木の枝にはまだ文字が残っていたが、今は誰かがそれを読み上げるのを待っているようだった。
柚月は祭壇の前に座り、ノートを開いた。彼女は何かを書こうとしていたのではなく、すでに空気に刻まれているものに耳を澄ませていた。春樹は小さなランプに火を灯し、颯太はその傍らに腰を下ろした。鐘の音が柔らかな音色を奏でていた。
蓮は今朝咲いたばかりの葉っぱを一枚手に取った。サインはなく、ただこう書かれていた。「ここまで来たのなら、君はもう私たちが守っているものの一部だ」。彼女はゆっくりとそれを読み、静寂もまた、まるで参加したがっているかのように応えた。
柚月はノートにこう書いた。
「手紙は読まれても終わりではない。聞く人の息づく伴侶となるのだ。」
風が開いたページを揺らし、それぞれの文章がそれぞれ異なる読者を求めているようだった。春樹は、記憶の中に既に居場所を見つけているので、行き先を必要としない言葉もあると付け加えた。颯太は、言われたことが全て理解されたことを確認するかのように、一度吠えた。
夜はゆっくりと更けていった。木はランプの光に照らされ続け、文字は花びらのように散り続けた。誰もそれを拾い集めず、片付けることもなかった。なぜなら、文字はすでに木の中にあったからだ。
その日、彼らは最後の朗読が終わりではなく、移行期であること、言葉が書き記されなくなっても残る記憶への一歩であることを悟った。




