言語は故郷
家は静まり返っていたが、空っぽではなかった。言葉はまるで何時間も前に発せられたかのように、今もなお心に留まりたがっているかのように漂っていた。柚木はノートを開いた。書くためではなく、すでに書かれていることに耳を傾けるためだった。春樹は紙のようにざわめく茶葉でお茶を淹れ、颯太はその瞬間を大切にしながら近くで眠った。彼女はこう書いた。「言葉はただ説明するためのものであってほしくない。どうしたらいいのかわからないときに、寄り添ってくれるものであってほしい。」
書斎で、彼女は「誰も知らないけれど、私はここに住んでいた」というフレーズが書かれた紙切れを見つけた。彼女はまるで誰かがドアを半開きにするように、それをノートに挟んだ。その日の午後、二人は言葉を交わさなかったが、感じたことはすべて手元に残っていた。春樹は乾いた葉をテーブルに置き、音はなくても、これも言葉なのだと言った。
暖炉の前で、柚木は声に出して読んだ。「もし迷子になったら、正しいかどうかわからなかったときに書いたものを見て。」春樹は遮ることなく話を聞いていた。宗太は鼻でノートに触れ、それを読むことが自分探しの手段でもあると悟った。このエピソードは、言葉が説明できないことの確かさを如実に表している。言葉は共に存在し、すべての文章が故郷となり得るのだ。




