沈黙もまた歌う
柚月は音楽ノートに、書きかけのページを残した。彼女はそれを終わらせたくなかった。「この歌は終わりたくない。まだその歌を必要としているのに気づいていない人たちの心に、この歌は響き続けたいのだ。」
鐘楼で、彼らはエコーが繰り返すのではなく、反応していることに気づいた。それぞれの音は、まるで空気そのものが作曲しようとしているかのように、違った形で返ってきた。宿屋では、蓄音機がゆっくりと音を鳴らし、長い休止を挟んで、彼らがまだ耳にしていないうちに、彼らの存在を認識しているようだった。
料理をしながら歌っているうちに、彼らはそれが音楽ではなく、記憶であることを悟った。柚月はこう記した。「この歌は静かな午後から生まれた。でも、それは私が忘れたくなかったすべての瞬間からできている。」
ある夜、彼らは歌わなかったが、お茶を淹れ、毛布を畳み、共に呼吸する中で、音楽は続いていった。柚月はこう記した。「沈黙が私に歌いかける。そして私は、それがコーラスの一部でもあると知っているから、耳を傾ける。」
夜明け、柚月は木の下に座った。彼女は歌わず、ただ耳を澄ませていた。丘の上で子供が鼻歌を歌い、鳥が空を渡る。春樹は彼女の隣に座り、颯太は彼女の膝に頭を乗せた。彼女はこう綴った。「聴くことは愛でもある。そして今朝…世界は私のために演奏することに決めた。」
このエピソードは、音楽は終わらないという確信で最高潮に達する。それは静寂へと、聴くことへと、そして共有された記憶へと変化するのだ。




