認識した歌
音になる前に、空気にはリズムがあった。古い家から柔らかなメロディーが流れてくると、ユズキはブランコの前で立ち止まった。商業的なものではなく、誰にでもわかるようなものではなかったが、彼女はそれを知っているようだった。ハルキが聞こえるか尋ねると、彼女は知っていると答えた。ノートにはこう書いていた。「自分の歌があることに気づかなかった…静寂が私の声を聞くまで」
屋根裏部屋では、壊れたレコードとラベルのないカセットテープが見つかった。「私たち」とラベルの貼られたテープが、まるで声がステップを知っているかのように、入り組んだ、親密な音色で流れ始めた。ユズキは、この曲はコンサートでは演奏されないが、目を閉じても自分が誰であるかがわかると言った。
静かなピアノの前で、彼女はテクニックではなく、心を込めて演奏した。ハルキは「もしあなたの手が音楽を知らないとしても、あなたの心は知っている…このピアノはあなたのものだ」と書かれた紙を置いた。ユズキは、音程が外れていても、聴く価値があると書いた。
忘れられた箱の中に、彼らは歌詞を見つけた。柚月は今まで歌ったことのないメロディーをハミングした。春樹はそれが自分の胸から生まれたものだと告げ、ノートは誰も触れていないのに新しいページを開いたように思えた。
このエピソードは、音楽は学ぶものではなく、記憶するもの、そして一つ一つの音符が、既に彼らの中に眠っていたものへと繋がる架け橋であるという、ある啓示を凝縮している。




