思い出のカフェで
道は彼らを、地図には載っていないが、まるで彼らを待っていたかのようなカフェへと導いた。中に入ると、テーブルは滑らかな木の板で作られ、音楽は流れていなかった。ただ、名前も聞かずに微笑む年配の女性が一人いた。
メニューには普通の飲み物ではなく、ただ「過ぎ去ったもののために」「まだ傷ついているもののために」「名前のわからないもののために」「何を待つかもわからないまま待つ人のために」といったフレーズが並んでいた。柚希は最後のものを選ぶと、カップの底に「まだ」という文字が浮かび上がった。春樹は「過ぎ去ったもののために」と注文し、本当にあったのかどうかわからない午後のような味だが、それでも笑顔になれると言った。爽太は空いている椅子に腰を下ろしたが、誰も彼を助けなかった。そこには、存在しなかった記憶さえも居場所があったのだ。
カウンターの上には、折りたたまれた紙の箱が置いてあった。柚希は温かみのある一枚を受け取った。「もしあなたがこれを読んでいるなら、あなたはまだ、自分の名前が付けられているとは知らなかった、美しい何かを語ることができるでしょう。」春樹は肩越しにそれを読み、颯太は小さく吠えた。すると、まるで文章がスプーンの間に居座ることを選んだかのように、空気がまるで見えるようになった。
女性は何も聞かずにもう一杯注いだ。「理由も分からずに書く人へ」。柚希はノートに書いた。「今日は自分のことを理解したくない。誰かが私を何と呼べばいいのか分からずに読んでいるかもしれないから、ただ書き続けたいだけ」。
カフェは、飲み物が感情であり、テーブルが沈黙に包まれる場所であることを明らかにした。コーヒーを出す場所ではなく、許可を出す場所だった。




