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始まりの木と言葉が咲く場所  作者: Takara yume


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インクが心に触れ、香りが伝わる場所

柚月は縦書きで、まるで静かな詩のように書いた。


「あなたは知らないうちに家にいた。


私が入りたいと言わなかったときの、あなたは扉だった。


私が迷いたくないときの、あなたは道だった。」

春樹は唇を動かさずに読み続けた。


そして、まだ湿ったインクは…

もはや言語に依存しない何かを語っているようだった。


颯太は立ち上がった。


ベルが二度鳴った。


そよ風は理解した。


柚月はノートにリボンをかけた。赤い。最初の時のように。


「終わったの?」春樹は尋ねた。


いいえ。でも、やるべきことはやった。

颯太は鼻でノートを軽く突いた。


柚月はそれをリュックサックに入れた。


しまうためではない。


手元に置いておくためだ。


もう書かれなくなった言葉もあるから…


それでも、それを必要とする人たちと共に歩き続ける。


夜明け、柚月は新しいノートを手に座った。


以前とは違う。

小さくなった。


より鮮明になった。

春樹はお茶を淹れた。

颯太は一枚の紙を追いかけた。


そして彼女は書いた。


「もう書くことは苦痛ではない。

もっと自分の声に耳を傾けたくなる。」


そして世界は、許可を求めることもなく、

空気は移り変わりの匂いを漂わせていた。春でも秋でもない、その中間のような何かだった。まるで天気が長い手紙を書きたがっているが、まだどの言葉から始めるか決めていないかのようだった。


柚月は窓から入ってくる暖かい風で目を覚ました。颯太はすでに玄関先に座って地平線を眺めていた。春樹は前日に摘んだばかりの新鮮な茶葉でお茶を淹れていた。その香りが静寂を破るかどうか、わからなかった。


「今日は何の季節か知ってる?」柚月は尋ねた。「何でもいいよ」春樹は答えた。


彼女は新しいノートを開いた。


そして最初のページに彼女は書いた。


「体は秋を告げている。でも、心は花開いている。」


紙が彼女を見た。


そしてその日は、彼女が求めていた通りの一日になった。


二人は野原に向かって歩いた。

葉っぱは2枚ずつ飛んでいった。偶然ではなく、意図的に。

柚月は手を差し出した。

一枚の葉っぱが彼女の手のひらに落ちた。

それは壊れたハートの形をしていた。春樹は微笑んだ。颯太は小さく吠えた。

「この葉っぱは、私が何か辛いことを考えていた時に落ちたのよ」と彼女は言った。


「じゃあ、偶然落ちたんじゃないの。あなたのために落ちたのね」と春樹は囁いた。


柚月はその葉っぱをページの間に挟んだ。


彼女はその横にこう書いた。


「風は私の物語を語っている。短い章で。私だけが読めるのよ」


近くの村では、木々は実をたわわに実っていた。太陽は燃えるように照りつけていなかった。太陽は自ら差し出していた。


柚月は桃を味見した。春樹は二口目を食べたとき、彼女の表情が変わるのを見ていた。


「どんな味がするの?」と彼は尋ねた。

「まだ交わされていない約束みたい」と彼女は答えた。


颯太はかごの匂いを嗅いだ。彼は一つを選んだ。彼はそれを噛み締めなかった。ただ握っていた。


柚月はこう書いた。


「夏は、永遠を感じるために、完結する必要はない。」


ノートは、蒸発する前に水を集めるように、その一文を吸収した。


ある朝、すべてが霧に包まれて目覚めた。気温は下がったが、痛みはなかった。それは、肩に薄い毛布をかけたような、暖かく、包み込むような冷たさだった。


春樹はゆっくりと火をつけた。颯太は近くに横たわった。柚月は指を見ずに書き続けた。


「この冬は私を凍らせるために来たのではない。休むようにと私に告げるために来たのだ。」


雪は降っていなかった。


ただ、許可を求めることなく留まる術を知っている静寂だけがあった。


そして、それで…

十分だった。


ドアの脇に花が咲いていた。誰も植えたわけではない。誰もその花が来るのを予想していなかった。それはそこに、小さくても力強く咲いていた。


柚月はしゃがみ込んだ。


「見える?」彼女は尋ねた。


春樹は近づいた。


「ええ。信じ始めた時の色です。」


柚月は書いた。


「春は叫んでいなかった。私が準備ができたと確信した時にだけ現れた。」


颯太は花の匂いを嗅いだ。

鈴が鳴った。


そして、空気は許しのようなもので満たされた。

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