発明されなかった音
道は緩やかに下り坂になっていた。石も縁石もなく、ただ古葉が散らばった土の上だけだった。宗太はツタに覆われた木造の建物の前で立ち止まった。家のようにも、寺院のようにも見えなかった。もしかしたら交差点か、あるいは目に見えない通路かもしれない。
春樹が先に中に入った。中に入ると、壁一面に詩が書かれた壁紙が貼られていた。消されているものもあれば、静脈のような線が縦横に走っているものもあった。片隅のテーブルには、使われていないカップが二つ置かれていた。
柚月は座った。春樹は紅茶を注いだ。
「これって夢だったの?」春樹は彼女を見た。
「眠らなくても見れる夢もある。でも、いつ目覚めるかを知るにはね。」
柚月は紅茶を飲まなかった。カップの別の部分を温めるように、ただカップを握っていた。
春樹はもう一枚の紙を取り出した。今度は白紙だった。
「忘れたくないことを書いて。」
柚月は考え込んだ。紅茶は湯気を立てた。静寂は耳をつんざくほどだった。
彼女はこう書いた。
「気づかないうちに私を見るあなたの視線。」
春樹は微笑んだ。宗太が近づき、鼻先で紙に触れた。ベルがチリンチリンと鳴った。大きな音だった。分かりました。
そして、紙から…ある言葉が付け加えられました。
「私も。」
柚希はそれを読みました。怖くありませんでした。
恐怖はプラットフォームに留まっていたからです。




