何も約束せずに癒されるフレーズ
その夜、暖炉のそばで、春樹は自分のノートを一ページ開いた。何度も読み返されたかのように、インクは擦り切れていた。
そこにはこう書かれていた。
「彼女は、自分がどう見えるかという選択を超えて存在する。それで十分だ。」
柚木はそれが誰宛てなのか尋ねなかった。
それは、彼に変化を求めることもなく、彼に印をつけた誰か宛てだと、彼は知っていた。
春樹は再びノートを閉じた。颯太は彼の脚に鼻先を乗せた。
そして数秒間、何も言わずに済んだ…彼は避けられていると感じることなく、安らぎを感じた。
柚木はノートを森へ持っていった。
ノートを埋めるためではない。
森がそれを読むように。
彼女は根っこに腰を下ろした。
彼女はこう書いていた。
「大丈夫でいたい。でも、急いではいない。ただ、痛みだけが物語でないことを願う。」
春樹は遠くから彼女を見ていた。
颯太は落ち葉を鼻でつついた。
蝶が宙を舞った。
柚木は鉛筆を置いた。
なぜなら、その時、彼女が感じたことは…
すでに風に記されていたからだ。
二人は昔の言葉を改めて読み返した。
一つはこう言った。
「もしいつか私があなたを思い出せなくなったら、私があなたをどう呼んだかではなく、私が世界をどのように見ていたかを思い出してください。」
柚木は恐怖を感じていた時に書いた。今日は違った響きだった。
「今でもそうなのか?」春樹は尋ねた。
「ああ。でも今は悲しみが薄れ、優しさが増している。」
颯太は吠えた。
こだまは暖かいそよ風となって戻ってきた。
ノートはひとりでに閉じた。
まるで、言うべきことをすでに言ったかのように。
川に向かって、柚木はノートを石の上に置いた。
水面に映る水面が紙と混ざり合った。
水面では、言葉が踊っていた。判読はできなかったが、感じ取ることができた。
春樹は彼女の隣に座った。
「何が見える?」まだ声に出したことのない、自分の姿。
気に入った?
わからない。でも、もっと知りたい。
颯太は川を渡った。
そして渡った時…
彼は、もはや留まる必要のない考えを、どこかへ連れ去っていくようだった。
二人は一緒に、最も難しい文章を読んだ。
涙の合間、長い夜の合間、穏やかな疑念の合間に書かれた文章。
でも、今回読んでみて…
それは痛みを伴わなかった。
ただ慰めを与えてくれた。
春樹は言った。
傷に書かれた言葉は、時に抱擁となる。
結月は破れたページに触れた。
だから、このノートは泣くことだけを知っているわけではない。
抱きしめることも知っているのだ。
颯太は文章の上に横たわった。
そして、彼はそれらを傷つけなかった。
彼はそれらを守った。
柚月はこう書いていた。
「これを消したくない。完璧だからじゃない。でも、これが現実だったから。」
春樹はページの間に乾いた葉を挟んだ。
颯太は長い間ノートを見つめていた。
まるで彼らの言葉を学んでいるかのように。
午後は穏やかになっていった。
光が自然と差し込んできた。
そして、計画されていたすべてのことが…
三人よりも大きな何かの一部となった。




