約束通り騎士が戻ってきた場所
夜が更け、眠りが戻ってきた。柚木は目を閉じた。すると、彼女の心の垣根を越えることなく、青いマントをまとい、木と風のような声で、直樹が現れた。
「まだここにいるのね」柚木は言った。
「君の物語はまだ夢に終わっていないから」と彼は答えた。
部屋は静かな水面に浮かんでいた。直樹は彼女に白紙を差し出した。
「たとえ忘れてしまっても、忘れられたくないことを書きなさい」
柚木は思った。
そして、彼女は書いた。
「春樹は、砕けた破片すべてがまだ輝いているかのように、私を見つめている」
直樹は紙に触れた。
そして、紙は光り輝いた。
部屋は消えた。
しかし、その文章は…
彼女の胸の中で脈打っていた。
目が覚めると、柚木は同じ文章がノートに書かれていた。自分で書いたのではない。手で書いたのではない。しかし、そこにあった。春樹はそれを読んで、何も聞かなかった。
「ナオキ?」――ユズキは囁いた。
「世界だ」と春樹は言った。
ソウタは近づいた。鐘が静かに鳴った。
そしてその音の中に…
何か幻想的なものが現実の端に触れた。
まるで二人がもはや別々の存在ではないかのように。
古い寺では、僧侶たちがほとんど音を立てない弦楽器を演奏していた。訪問者たちはそれがリハーサルなのか瞑想なのか分からなかった。
ユズキは二人の間に座った。
春樹は目を閉じた。
ソウタは横になり、体をリラックスさせた。
音楽がやってきた。
正確なメロディーはない。
しかし、一つ一つの振動は、言葉を使わない答えのように感じられた。
ユズキは、すでに夢で見ていた音を聞いた。
ナオキは、もしかしたら無意識にそれを作曲したのかもしれない。
そして空気は…
楽器を使わずにそれを再現した。
家に戻ると、光が違っていた。
以前ほど強烈ではなかった。
以前ほど親密ではなかった。
春樹は題名のない本をめくっていた。柚月は砂糖抜きの紅茶を飲んでいた。
颯太はまるで自分の足の下で世界が呼吸しているように眠っていた。
長い間、誰も何も言わなかった。
なぜなら、彼らが経験していることは、名前を付けられたくなかったからだ。
ただ、名付けられることを許されただけだった。
そして物語は…
続いた。
誰も急がせることなく。
誰も止めることもなく。




