夢が世界を渡る許可を求めない場所
まるで空の隅々まで知っているかのように、夜が訪れた。柚希は眠りに落ちる直前にノートを開いた。最後のページは白紙だったが、既に彼女の頭の中には線が浮かび上がっていた。それが昼間の出来事なのか、それとも想像上の出来事なのか、彼女には分からなかった。
春樹は静寂に包まれて、近くで眠っていた。颯太は静寂が震える場所を見つけるまで振り返った。外では、月が何か意図を持っているようだった。
柚希が目を閉じると、すぐに眠りが訪れた。それは形のない眠りだった。しかし、彼女がそれを認識すると、低い雲の野原を歩いていた。地面は空気でできているにもかかわらず、しっかりとしていた。空は光源のない光を放っていた。
そして彼女の前に、青い外套と風よけの帽子をかぶった男がいた。
「ようこそ」彼は柔らかく、木のような声で言った。「ここでは、夢は隠されているのではなく、育まれているのだ。」
柚希は怖がっていなかった。
なぜなら、その男の目は…
昼間の出来事が教えてくれないことを、知っていたからだ。
紳士は彼女を静かに観察した。
私の名前はナオキ。私が存在しているかどうかはわからない。でも、もしあなたが私のことを覚えていてくれるなら…それで十分かもしれない。
柚月は彼に向かって歩いた。足音はしなかった。ナオキはマントを広げ、その下に低いテーブルがあり、湯気は出ているが沸騰していないお茶が置いてあった。
「これは夢?」と彼女は尋ねた。
「正確にはそうではない。それは、あなたが黙っていることと、あなたが想像することの間の場所だ。」
柚月はカップに触れた。それは温かかった。
ナオキは空を指差した。
「もしあなたが十分に長くそこにいれば、あなたの物語はひとりでに書き始めるでしょう。その準備はいいですか?」
彼女はノートのことを考えた。
ハルキのことを。
ソウタのことを。
「ええ」と彼女は囁いた。「でも、私はそれがひとりでに書き綴られるままに読みたいの。」
ナオキは微笑んだ。
そして風が渦を巻いた…
まるで誰かが静かに拍手しているようだった。
直樹は彼女を宙に浮く鏡の列の前へと導いた。どの鏡にも彼女の姿は映らなかった。通り過ぎる人々は皆、名前を囁いていた。
結月は「香織」「未来」「響」…そして最後に「結月」という名前を聞いた。
なぜこんな名前が?
直樹はゆっくりと歩いた。
それは、あなたがかつて自分にも与えられていたかもしれないと思っていた名前だ。ある者は欲望から、ある者は恐怖から。しかし最後の一つは…世界があなたに与えようと選んだ名前だ。
結月は自分の名前を囁く鏡に触れた。鏡面が一瞬水に変わった。その中に、火のそばで眠る春樹と、眠りながら前足をぴくぴく動かす颯太の姿が映っていた。
彼らも夢を見ているんだ、と直樹は言った。
僕と?
君と。同じじゃない。
そして鏡は再びガラスになった。
しかし、もう見せる必要はなかった。
ただ、そこに留めておくためだけに。




