過去が立ち入る許可を求めなかった場所
雨は予告なく降り始めた。まるで注目を浴びたくない歌のように、優しく響いた。結月は誰もいない家の屋根に雨粒が落ちるのを見ていた。春樹は毛布を取り出し、それを颯太にかけた。颯太は静かに眠った。海人はろうそくに火を灯した。まるでその小さな炎が、これほど多くの思い出を閉じ込めるのに十分であるかのように。
「ここはいつもこんな風に雨が降るの?」結月は囁いた。
「ああ」海人は言った。「まるで空が痛みを感じずに泣きたがっているかのように。」
結月はポーチへと歩み寄った。戸口の下に、人影が彼女を待っていた。それは実体のない、影ではない。懐かしさとこだまの狭間のような何かだった。
春樹が近づいた。
「その記憶は君だけのものではない。みんなのものなんだ。」
海人は後ろに下がった。颯太は立ち上がった。
人影は声なく語りかけた。
「あなたが来たのは、もう過去が怖くなくなったからよ」
柚木は手を伸ばした。何も触れなかった。
しかし、肌が受け取り方を知っているように感じた。
そして、記憶が入り込んできた…
生きていることを詫びることなく。
湿った土の匂いと、長い沈黙とともに、翌朝が訪れた。村の中心に、人々が声もかけずに集まっていた。皆、何か小さなものを持ってきていた。石、手紙、椀、布切れ。
柚木は、これが儀式ではないと理解した。
再会だった。
春樹は短い詩が書かれた紙を置いた。海人は、人影のない自転車の白黒写真を一枚見せた。颯太は、紙に包まれた種の山の横に横たわった。
「これが、かつての姿よ」と花売りの女性が言った。
「でも、またこうなりたいとも思っているの」と、子供が優しい声で付け加えた。
柚木はノートを村の真ん中に置いた。
開いていない。
閉まっていない。
夕焼けが、動き出したくなった。カイトが自転車で近づいてきた。ハルキはすでにリュックサックを用意していた。ソウタは黙って待っていた。ユズキは、かつて自分のものではなかった家をじっと見つめていた。
「行こうか?」と彼は尋ねた。
「ああ。でも、彼女を置いていくわけにはいかない」とハルキは言った。
カイトは何ヶ月も大切にしていたノートを手渡した。
「持って行け。でも、もしまた迷子になったら…どこで待てばいいか分かるだろう。」
ユズキはカイトを抱きしめた。強くではなく、恥ずかしがりながらも。ちょうどいいくらいに。
「君が僕を探していると気づく前に、僕を見つけてくれてありがとう。」
カイトは微笑んだ。
そして空気が渦巻いた…
まるでまだ二人が去ってほしくないかのように。
しかし、彼は輝き続けるために二人は必要ないことも知っていた。




