表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始まりの木と言葉が咲く場所  作者: Takara yume


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/60

過去が立ち入る許可を求めなかった場所

雨は予告なく降り始めた。まるで注目を浴びたくない歌のように、優しく響いた。結月は誰もいない家の屋根に雨粒が落ちるのを見ていた。春樹は毛布を取り出し、それを颯太にかけた。颯太は静かに眠った。海人はろうそくに火を灯した。まるでその小さな炎が、これほど多くの思い出を閉じ込めるのに十分であるかのように。


「ここはいつもこんな風に雨が降るの?」結月は囁いた。


「ああ」海人は言った。「まるで空が痛みを感じずに泣きたがっているかのように。」


結月はポーチへと歩み寄った。戸口の下に、人影が彼女を待っていた。それは実体のない、影ではない。懐かしさとこだまの狭間のような何かだった。


春樹が近づいた。


「その記憶は君だけのものではない。みんなのものなんだ。」


海人は後ろに下がった。颯太は立ち上がった。


人影は声なく語りかけた。


「あなたが来たのは、もう過去が怖くなくなったからよ」


柚木は手を伸ばした。何も触れなかった。


しかし、肌が受け取り方を知っているように感じた。


そして、記憶が入り込んできた…


生きていることを詫びることなく。


湿った土の匂いと、長い沈黙とともに、翌朝が訪れた。村の中心に、人々が声もかけずに集まっていた。皆、何か小さなものを持ってきていた。石、手紙、椀、布切れ。


柚木は、これが儀式ではないと理解した。


再会だった。


春樹は短い詩が書かれた紙を置いた。海人は、人影のない自転車の白黒写真を一枚見せた。颯太は、紙に包まれた種の山の横に横たわった。


「これが、かつての姿よ」と花売りの女性が言った。


「でも、またこうなりたいとも思っているの」と、子供が優しい声で付け加えた。


柚木はノートを村の真ん中に置いた。


開いていない。


閉まっていない。


夕焼けが、動き出したくなった。カイトが自転車で近づいてきた。ハルキはすでにリュックサックを用意していた。ソウタは黙って待っていた。ユズキは、かつて自分のものではなかった家をじっと見つめていた。


「行こうか?」と彼は尋ねた。


「ああ。でも、彼女を置いていくわけにはいかない」とハルキは言った。


カイトは何ヶ月も大切にしていたノートを手渡した。


「持って行け。でも、もしまた迷子になったら…どこで待てばいいか分かるだろう。」


ユズキはカイトを抱きしめた。強くではなく、恥ずかしがりながらも。ちょうどいいくらいに。


「君が僕を探していると気づく前に、僕を見つけてくれてありがとう。」


カイトは微笑んだ。


そして空気が渦巻いた…


まるでまだ二人が去ってほしくないかのように。


しかし、彼は輝き続けるために二人は必要ないことも知っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ