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ノートブックが互いを探し求めることなく交差した場所
柚月はハンドルからノートを取り出した。彼女のノートとよく似ていたが、透かし模様があり、端が折れていて、手書きで書かれているページが彼女のノートを思い出させた。
春樹は口を挟まずに見ていた。
颯太は後輪に近づき、匂いを嗅いだ。
あるページに、柚月はこう書いてあった。
「君が誰なのかは知らないが、もしいつか君がこの村を、自分の居場所だと感じて歩くなら…このノートは君のものだよ。」
海人は身を乗り出した。
何ヶ月も前に見つけたのに、完全に開きたくなかった。君が現れるまでは、開けてはいけないと何かが私に告げていた。
柚月は端を撫でた。
理由も分からず、大切にしてくれてありがとう。
海人は頷いた。
もしかしたら、まだ名前のないものを、私たちは大切にしているのかもしれない。
颯太は吠えた。
風向きが変わった。




