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米に記憶があった場所
夕食時、注文する前から料理が運ばれてきた。温かい器。優しい香り。
華美なことは何もなかった。しかし、柚月はご飯を口にした途端、何か不思議なものを感じた。
この味…
春樹は彼女を見た。
どこかで見たことがあるような?
彼女は頷いた。
ええ。大切な日に食べたような。
ウェイトレスが近づいてきた。
このレシピには材料ではなく名前がある。一粒一粒が何かを想起させる。だから、同じ味になることは一度もないのだ。
颯太は黙って食べた。
そして、まるで思い出しているかのようにベルが鳴った。
柚月は目を閉じた。
悲しみからではない。
見覚えがあったから。




