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壁がゆっくりと語る場所
ダイニングルームの壁には、足跡のような跡が残っていた。いくつかの筆致は絵で、他の筆致は水筆で書かれた言葉だった。それらは日に焼けて色褪せたが、そよ風とともに再び現れた。
柚月は近づいた。
一枚の壁にはこう書かれていた。
「逃げないと決めるまでは、自分のものではない道もある。」
春樹は別の壁にこう書いてあった。
「痛みもまたテーブルに座っている。だが、もしそれを語らせれば、少ししか食べてくれないかもしれない。」
颯太は鼻で壁の隅に触れた。
壁から一本の線が浮かび上がった。
「すべてを理解する必要はない。ただ、ここを離れないで。」
柚月は木の板に手を置いた。
何か書きたかった。
しかし、壁がすでにそれを書いていた。




