村は何が待ち受けているのか知らなかった
丘は緩やかに下り、緑が生い茂り、まるで大地が彼らを心から歓迎しているかのようだった。柚月は苔の上に長い影を落としながら先を歩いた。春樹はポケットに手を突っ込んだまま、静かに後を追った。宗太は野花の間を歩き、誰にも言われなくても彼らが到着したことを知っていたかのように、歩き続けた。
木々の間から村が姿を現した。まるで、恥ずかしげもなく蘇ってくる記憶のように。家々は低く、屋根は空に向かって湾曲していた。車は一台も走っておらず、看板もなかった。ただ、自らの記憶への愛ゆえに静まり返っていた場所の、完璧な静寂だけが残っていた。
「彼らは私たちが誰なのか知っていると思いますか?」柚月は尋ねた。
春樹は首を横に振った。
「もしかしたら。あるいは、私たちが到着したことだけで十分かもしれません。」
彼らはノックもせずに中に入った。花に水をやっている女性が彼らを見て微笑んだ。おもちゃの太鼓を持った子供が通り過ぎた。老人が無言で彼らに挨拶した。
颯太は石のベンチの前に座り、一度吠えた。
寺の鐘が鳴った。誰も彼女に触れようとはしなかった。ただ触れたかっただけだった。
柚希は何かが自分を認識しているのを感じた。
顔も。
名前も、歩き方も。




