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始まりの木と言葉が咲く場所  作者: Takara yume


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20/27

懐かしさが柔らかい鉛筆で書かれた場所

次の町には、絵や言葉で埋め尽くされた壁があった。落書きでも広告でもなく、記憶だった。繊細な筆致で。かすかにしか見えないものもあれば、鮮やかに残るものもあった。


結月は壁の前で立ち止まった。そこにはこう書かれていた。


「まだ帰りたくないから、さよならを言わなかった。」


春樹は別の壁の横で立ち止まった。


「僕が歩いていくのを見たら、もう一度見て。もしかしたら、戻ってくるために振り返っているのかもしれない。」


颯太は鼻で壁に触れた。何もない空間に。


そしてその場所に、結月は初めて鉛筆でこう書いた。


「理由もわからないまま、いてくれてありがとう。」


鉛筆は軽やかに滑った。


そして壁は…まるで花びらのように、一つ一つの言葉を受け止めているようだった。


町を出ると、道が分かれ道に出た。


片方の道は海岸へ。


もう片方は、初めて訪れた丘へ。


結月は立ち止まった。

春樹は何も言わなかった。


颯太は丘へ向かう道を選んだ。


柚月は理解した。


「もっと色々なものを見たくないわけじゃないの」と彼女は言った。「何かが私たちを認識してくれた場所に戻りたいだけなの」


春樹は微笑んだ。


戻るというのは繰り返すことではない。新鮮な目で物事を見ることだ。


二人は一緒に歩いた。


影はそれぞれ違っていた。


でも、風は二人の名前を覚えているようだった。

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