書かれていなかった住所
路地は奇妙な曲がり方をしていた。まるで、印をつけずに疑問をなぞっているかのようだった。提灯は曲がって吊るされ、まだ湿った地面は空からではない光の断片を反射していた。颯太はゆっくりと、しかし目的意識を持って歩いた。春樹は相変わらず多くを語らず、柚希は沈黙の一つ一つが、どんな説明よりも大きな意味を持つように感じた。
彼女はノートをしまっておいた。まだ書きたくなかった。言葉は、あまりに早く名前を挙げると、すべり落ちてしまうことがある。彼女は、物語がノートの端から染み込んでいくのを好んだ。
「地図を持ってないじゃないか」と春樹は彼女を見ずに言った。
「地図が必要かどうかわからない」
時には、自分が迷子になったことを思い出す必要がある。自分が自分を見つけたことではない。
店は目立たない。カーテン用の和紙、よく手入れされた割れ目の木。少年が紙の魚を手に走り去った。魚が空気を掠める音は、彼の足音よりも澄んでいた。宗太は彼が通り過ぎるのを見送り、そのまま歩き続けた。
春樹は閉店した店の前で立ち止まった。看板は何もなく、低い扉と、そこにぶら下がっているガラスの鐘楼があるだけで、ロープは見えなかった。
「ここだ!」
「何だ?」
春樹は扉を押した。音はしなかった。カチッという音さえしなかった。胸に脈が開くような気がした。
書店の中は見た目よりも狭かった。誰もいなかった。埃がゆっくりと舞い散る。隅の街灯がかすかな光を放っていた。雑然とした棚の間の低いテーブルの上に、開いたノートが置いてあった。
颯太はその真下に横たわった。
柚月が近づいた。ページには何かが書かれていた。インクは見覚えがなかったが、筆跡は彼女のものだった。言葉は、彼女の鼓動を知っている手で書かれているようだった。
これ…――彼女はささやいた――「もう考えたわ」
春樹はまた本を手に取った。
これから私たちが経験するすべてのことは、このような場所に存在する。まだ耳に届いていないけれど、すでに語られた言葉の中に。
柚月はページに触れた。それは彼女の名前だった。しかし、まるで誰かが彼女を恋しがっているかのように書かれていた。
どうして彼女はここにいるのだろう?
春樹は答えなかった。颯太はベルでテーブルを軽く叩きながら首を振った。音はかすかだったが、空気の匂いを変えるには十分だった。
柚希は持ち歩いていたノートを開いた。白紙のページを探した。彼はこう書いていた。
「あなたが来るのを待ってくれない場所がある。ただ、あなたがそこにいたことを思い出すのを待っているだけ。




