空気が隠された名前を運ぶ場所
風向きが変わり始めた。強くもなく、冷たくもなく。ただ…注意深く。
道の曲がり角で、二本の柱の間に紐が結ばれていた。小さな紙切れが、まるで願い事か忘れ去られた記憶のようにぶら下がっていた。
柚希は近づいた。紙切れの一枚がほどけて、彼女の方へ流れてきた。
彼女はそれを拾い上げた。
そこには「親愛なる」や「敬具」とは書かれていなかった。
ただ一行だけ。
「もし私を見つけたら、私もあなたを探していたと分かるでしょう。」
春樹は別の紙切れに近づいた。彼女はそれを受け取らずに、指で紙をなぞった。
名前の中には、思い出されることを望まないものがある。彼らは再び発見されることを切望しているのだ。
颯太は左の柱へと歩み寄り、座った。
ベルが一度鳴った。
柚希は紙切れの裏にこう書いた。
「まだ知らない自分の名前で、あなたが私を呼んでくれるのを、私は待っています。」
そして彼女は紙切れを紐に戻した。
まるで、吊るされることが、再び存在するための儀式の一部であるかのように。
彼らは空き地に着いた。
空は雲ひとつなかった。太陽が降り注ぐわけでもなかった。休息を約束するわけでもなく、ただの休息を約束しているような、温かみのある青空だった。
春樹は草の上に毛布を広げた。結月は一言も発せずに横たわった。颯太は彼女の足元に寄り添い、眠りを守るかのように息をしていた。
僕たちはここで何をしているんだ?
「休憩中だよ」と春樹は答えた。「魂は、どう尋ねればいいのか分からずに、時々そう求めることがある。」
結月は目を閉じた。眠るためではない。言葉にされていないことをよりよく聞き取るためだ。
風が三度吹いた。
葉が一度震えた。
そして、どこかで誰かが彼女の名前を呼んだようだった。
聞こえないままに。
でも、感じた。




