紙を使わずに書ける場所
颯太は川の前で立ち止まった。春樹と柚月は彼の隣に座った。
二人は長い間何も言わなかった。
柚月は滑らかな石を取り出した。
石は静止したままだったが、彼らの言葉の残響が水面に漂っていた。
川の流れがリズムを変えるにつれ、川は彼らと共に呼吸することを学んでいるようだった。波の一つ一つが、そこに書かれた言葉の断片を運んでくる。まるで流れが見えないノートになるかのように。
柚希は目を閉じた。指先の石が温かく、静かに感謝の念を宿しているように感じた。
春樹は役に立たなくなった鉛筆の影を見つめた。描く必要はないと悟った。彼らが残したものは、すでに別の言語で輝いていたからだ。
颯太は石のそばに横たわり、鐘は振動し続けた。動きによるものではなく、留まることを選んだ記憶によるものだった。
空気は遠くの聖歌隊のような柔らかなささやきで満たされた。人の声は聞こえなかったが、誰かが耳を傾けているという確信があった。
川は岸に寄り添い、まるで彼らを抱きしめようとするかのように。
そしてその瞬間、言葉は本やページ、あるいは石の上にさえ咲くものではないと、誰もが悟った。
言葉は、誰かが立ち止まり、耳を傾けようと決めた場所に咲くのだ。
「どうお願いすればいいのか分からなかった時に、現れてくれてありがとう。」
春樹は書いた。
「言わなかったことでも、誰かに聞いてもらうには十分だった。」
宗太は両方の石に鼻で触れた。
鐘がひとりでに鳴り響いた。
そして川は…流れを変えた。




