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【第一章完結】魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜  作者: 犬型大
第二章

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復讐の終わり5

「‘ヘルン!’」


「ラクさん……ヘルンさんが…………」


 戦いは冒険者ギルドに任せて、俺はクリアスの元に駆けつけた。

 クリアスは目に涙を浮かべて泣きそうな顔をしている。


「‘アニ……キ……’」


「‘ヘルン……’」


 ゴブリンとは弱く、脆いものだ。

 コカピヨスによって地面に叩きつけられたヘルンは瀕死の状態になっていた。


 腕が曲がってはいけない方向に曲がり、口から血が流れている。

 体は小刻みに震えて、目は焦点があっていない。


「‘あいつは……’」


「‘まだ死んでない。……多分ほっとけば…………’」


 嘘はつけない。

 死んだと答えられればよかったのだけど、残念ながらザイハンシはまだ死んでいない。


 チラリとザイハンシの様子を確認した俺は思わず顔をしかめる。


「逃げるぞ!」


「くっ……こちらも余裕がない!」


 コカピヨスが尻尾の蛇でザイハンシのことを持ち上げて逃げていくところだった。

 冒険者ギルドの方は残り二人しかおらず、追いかけようにも戦力が足りていない。


 追いかけるかどうか悩んでいる間に、コカピヨスはものすごい速さで走っていってしまう。

 攻撃によって少しぼろぼろになったコカピヨスの背中が遠ざかる。


「‘アニキ……? ケホッ!’」


「ああっ……!」


 ヘルンは血を吐き出す。

 助からない。


 そんな考えが俺の頭をよぎる。


「そんな……助けられないんでしょうか?」


 クリアスはすがるように俺を見る。

 俺は、否定の意味を込めてゆっくりと首を横に振る。


 クリアスはギュッと口を結んでヘルンに視線を落とす。


「‘あいつは逃げていった。助かるとは思えないが……どうなるかは分からない’」


「‘そう……すか……’」


 死んだって言ってやればいいのかもしれない。

 でもそんなことはしない。


 嘘で楽にしてやることもできたのだけど、そんなことはしたくなかった。


「ラクさん……?」


 俺が何もせず、ただヘルンを見つめるようにしているものだからクリアスも何かを察している。


「‘お別れ…………すね’」


「‘残念だよ。お前が合成でも出来たら……合成…………’」


「‘……アニ……キ……?’」


「‘ヘルン。ただ死ぬのと……俺のために死んでいくのどっちがいい?’」


 俺は残酷な質問を口にした。


「‘アニキの……ため?’」


「‘そうだ’」


「‘どうせ…………死ぬなら…………アニキのため………………が、いいっす’」


 こんな質問の仕方をしたらヘルンがそう答えることは俺も分かっていた。


「‘クリアス、乗れ’」


 もはやコカピヨスもザイハンシも気にしている場合じゃない。

 俺はクリアスの横でグッと体を下げる。


「……ラクさん?」


 クリアスは涙目で、俺が何をしたいのか分からないといった感じの顔をする。


「‘いいから乗れ’」


 俺はクリアスの腕を軽く咥えて、自身の背中の方に引っ張る。


「……乗るんですね?」


 クリアスはヘルンを抱えたまま俺にまたがる。


「‘落とすな、掴まれ’」


 俺は立ち上がる。

 クリアスとヘルン、両方を持ち上げるとだいぶ重い。


「‘まだ死ぬなよ。もう少し、耐えてくれ’」


 俺は走り出す。

 できるだけ揺らさないようにしてやりたいが、残念ながら揺らさずに走るなんて高等なことできやしない。


「‘がんば……る…………す’」


 俺が向かう先は町の方だった。

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