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【第一章完結】魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜  作者: 犬型大
第二章

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怪しい動き4

「‘悪いな、ちょっと感傷に浸ってたんだよ’」


 訪れてもない別れに思いを馳せたところで、時間の無駄である。

 ヘルンがどうなるかなんて分からないし、もしかしたら俺が先に死ぬことだってあるかもしれない。


 どうなるかはその時考えればいい。

 感情も、その時の自分に任せるしかないのだ。


 別に俺だって次の合成で消えてしまう可能性だって否定はできない。


「‘まあ、精一杯今を生き抜くしかないか’」


 何にしても未来はわからないから、目の前の青年の冒険者に集中する。

 俺の未来は知らないが、少なくとも青年の冒険者の未来は真っ暗である、ということは分かっている。


 青年の冒険者はこれから魔獣を捕まえて合成する。

 その次に待ち受けるのは、ザイハンシだ。


 ヘルンの時のように、油断した隙を突いて青年の冒険者を殺してしまうことだろう。

 珍しい魔獣なら売り飛ばされる。


 珍しくないとどうなるのかは知らない。


「‘あーあ、成功しちまったか’」


 逃げられたり、倒したりと失敗を繰り返しながらも青年の冒険者はとうとう魔獣との契約に成功してしまった。

 翼の生えたネズミという変な魔物だけど、合成したら翼が生えるかもしれないと思うと意外と悪い選択肢ではないのかもしれない。


「‘俺もちょっと翼欲しいよな。飛んでみたい気はするよ’」


「‘アニキ飛ぶんすか?’」


「‘翼生えたらな’」


 合成に関してはいまだに謎なことが多い。

 二足歩行の魔物を合成したからと二足歩行になるとも限らないし、翼がある魔物を合成したからと翼が生えるとも限らないだろう。


「すぐに合成に向かうのでしょうか……あっ!」


 クリアスが俺を合成する時にはだいぶ悩んだものだが、普通の人は魔物を思って合成をためらったりしない。

 少し疲れたように息を吐き出した青年の冒険者は、帰るのかくるりと振り返った。


 俺たちは慌てて木の影に隠れる。

 バレたかなと思ったけれど、青年の冒険者は魔獣を従えた嬉しさからなのか気づかなかった。


「‘着実に終わりに向かってるな’」


 嬉しそうな顔をしているが、待ち受けるのは暗い未来。

 だが止めてやることもできない。


 何が起こるか知っているのは俺とヘルンだけ。

 せめてクリアスが知っていたなら止めようもあったのかもしれないが、俺たちだけではどうしようもない。


 そのまま青年の冒険者を追いかけていくと、町に戻り、真っ直ぐ冒険者ギルドに向かった。

 昼間で少し人の少ない冒険者ギルドの中までついていくと、青年の冒険者はの合成をする部屋に入っていった。


「‘まあ、想像通りの動き……だな’」


 何かあるわけでもなく、全くもってイメージ通りに動いてくれている。

 多分このまま行くんだろうなと思わざるを得ない。


「最近いなくなる奴が多くないか?」


「駆け出しどもだろ?」


「いや、それだけじゃない。特に魔物の話は聞かないのに、帰ってこないやつも多い」


 青年の冒険者の合成を待っていると、冒険者ギルド内の会話が聞こえてくる。

 二人の中年冒険者が昼間から酒を片手に話していた。、


「ヘマやらかしたんだろ。よくあることだ」


「……そうかね」


 帰ってこない人が多い。

 そんな会話をしている。


 冒険者という危険な仕事で帰ってこないやつが多いのは、本当である。

 ただそれでは納得いかないような顔を一人はしている。


 もしかして、メルドランギルドが?

 そんなことも思うのだけど、今は何の確証もない。


「出てきましたね」


「‘デカいネズミになったっすね’」


 程なくして、青年の冒険者が一体になった魔獣を引き連れて出てきた。

 コボルトと翼の生えたネズミはデカめのネズミになった。


 見た目的に可愛くはないが、コボルトよりは強そうだ。

 残念ながらコボルトの面影はない。


「‘やっぱり翼があるやつと合成したからといって……翼が生えるわけじゃないんだな’」


 ちょっとだけで期待していたが、そううまくはいかないようだ。


「‘んで……これからどうするのかな?’」


 魔獣は合成してしまった。

 あとはザイハンシに会うだけだ。


 きっと笑顔で魔獣の報告をするんだろう。


「あれ……帰っちゃいましたね」

 

 ザイハンシのところに向かうと思っていたのだけど、青年の冒険者はそのまま家に帰ってしまった。

 どうやら何にしても今日は会う予定はなかったらしい。


「‘目が離せないな’」


 いつザイハンシに会うのかも分からない。

 多分近いうちには会うのだろうが、それまでしっかり尾行する必要がある。

 

 こっちだって金稼いだりしなきゃいけないのに、全くもって面倒なことである。


「‘はぁ……’」


 思わずため息が漏れてしまう。

 ヘルンの復讐はどうなるのか、全く予想もつかないのだった。

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