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【第一章完結】魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜  作者: 犬型大
第二章

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怪しい動き2

「待って待って待って! 敵じゃないから」


 今にも襲いかかりそうな俺の唸り声を聞いて、相手が出てきた。

 近くにあった木から浮かび上がるように現れたのはエルパーであった。


 木の裏から出てきたのではない。

 急に現れたのだ。


「‘あの魔獣の能力か’」


 俺はエルパーの肩に乗るデカいカメレオンを見る。

 カメレオンがどんな能力持ちなのか知らないが、見た目から予想されるものとそんなに変わらないのかもしれない。


「エルパーさん? どうしてここに?」


 クリアスは目をぱちくりとさせている。

 俺としてもエルパーがこんなところにいる理由は気になる。


 特に姿を隠していた理由も教えてもらいたいものだ。


「こっちこそ同じ質問したいですよ。なぜ彼を?」


「彼とは……」


「メルドランギルドのザイハンシですよ」


 どうやらエルパーはザイハンシのことを追いかけてきていたようだ。


「ええと、たまたま?」


「たまたま……そんな格好をしてですか?」


 クリアスは誤魔化そうとしているが、エルパーは訝しむような視線を向ける。

 そりゃ怪しいだろうなと俺も思う。


 何も知らない奴ならともかく、エルパーには前に会っている。

 その時には俺たちは顔を隠すようなマントなんて身につけちゃいなかった。


 クリアスだけなら言い訳もできたかもしれないが、俺とヘルンまで安い変装してたら誤魔化すのも難しい。


「た、たまたまです……」


 それにやっぱりクリアスに嘘をつく才能はない。

 完全に目が泳いでしまっている。


「…………たまたまあの人を見つけてぇ……」


 じっと見られるほどにクリアスはしどろもどろになる。

 嘘をつけない正直な性格は美徳だが、流石に分かりやすすぎる。


「うぅ……」


 クリアスは俺のことをチラリとみるけれど、俺は助けてやれない。

 話せもしないのだからクリアスに頑張ってもらうしかない。


 今後もこうしたことはあるかもしれないので、是非ともクリアスにも多少表情を隠すことぐらい慣れていただきたいのである。


「……まあいいです。メルドランギルドが怪しいと言ったのもクリアスさんでしたからね」


 エルパーは小さくため息をつく。

 ザイハンシを追いかけていることは一目瞭然。


 ただ自由にしていればいいと言ったし、ここは自由に出入りできるダンジョンだ。

 どう見ても怪しいが、なかなか責めることもできない。


「エルパーさんも、ザイハンシさんを?」


「そうですね。…………調べてみてキツソウがメルドランギルドにいることは掴みました」


 少し悩んだような素振りを見せながらもエルパーは情報を共有し始める。

 ジェレインの立場がどれほどのものなのか俺は知らないが、意外と偉いのかもしれない。


 普通なら情報提供して終わりなのに、こんなふうに話してくれるのはジェレインの影響あってのことだ。


「ただ出入りは少なく、キツソウの面倒を見てメインで動いているのが、メルドランギルドのマスターであるザイハンシのようなのです」


 意外でもなんでもない情報だ。

 俺たちがキツソウを見つけた時にも、話していた相手はザイハンシだった。


 ザイハンシがキツソウと密接に関わっていることは、すでに予想がついている。


「それでザイハンシを追ってるのですか?」


「それもありますが……」


「が?」


「‘もっとチャキチャキ喋れねんすか?’」


「‘お前は黙ってろ!’」


 もったいぶった言い方をすると思うことには同意だ。

 だがエルパーの方だって、ホイホイと全てを話してしまうわけにはいかないのだろう。


 言葉を選び、話してもいいラインを考えながらだから回りくどくなってしまうのはしょうがないのだ。

 ただヘルンの気持ちも分かる。


 さっさと話してほしいところではある。


「メルドランギルドというやつは……あまり良くない噂もあるようで、この地域の冒険者ギルドも目をつけているようなんです」


「良くない噂……」


「‘まあ、なんか黒っぽそうな話はなんとなくあったな’」


 メルドランギルドについて聞いて回った時に、なんとなく良くないような話も聞いた。

 具体的なことは分からなかったものの、怪しい感じはしていた。


 それを冒険者ギルドの方も把握しているようだ。


「もしかしたらキツソウとも関係あるかもしれない。ということで、私はあの男を追跡することにしたのです」


「……なるほど」


「そちらは今日だけ追いかけているのですか? それとも少し前から?」


「……少し前からです」


 観念したようにクリアスが答える。


「私はまだザイハンシの行動パターンを把握していません。よければご協力願えますか?」


「協力とは何を……?」


「ザイハンシの話を聞かせてください。どう行動しているのか、何をしているのか」


 これまでエルパーの姿を見たことはなかった。

 だとしたら今日が初めてぐらいなのだろう。


 これからザイハンシを尾行して、日常のパターンを把握してとやっていくはずだ。

 クリアスに話を聞いてパターンをある程度絞り込めれば楽になる。


「分かりました。私にできることなら」 


「‘ちょっとずるいやり方するな’」


 エルパーは先に情報を開示してくれた。

 クリアスの性格を考えた時に、拒否するのは難しい。


 別に拒否するようなことでもないが、上手く相手を丸め込むようなやり方をしてきたものだと俺は目を細めてしまう。


「とりあえず今はあいつを尾行しますのでまた後で」


 気づけばザイハンシたちも動き出している。

 エルパーの姿がスーッと消えていき、見えなくなる。


「あの、私は……」


「尾行はこちらに任せてください」


 声が遠ざかりながら聞こえてくる。

 なんとも身勝手な感じを受けてしまうのは俺だけだろうか。


「‘なんなんすかアイツら!’」


 いや、ヘルンも怒ってる。


「……はぁ、大人しく魔物倒しましょうか」


 クリアスも思わずため息を漏らす。


「‘何事もなかなか上手くいかないもんだな’」


 近くに怪しい奴がいる。

 なのに調べることもままならない。


 物理的な力だけじゃなく、権力的にも俺たちはちっぽけなのだ。

 何をするにしても、何もかもが足りない。


「‘せめてコツコツ金貯めるしかないか’」


 金があれば少しは解決できることも増える。

 俺もため息でも漏らしたい気分なのだった。


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