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【第一章完結】魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜  作者: 犬型大
第二章

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怪しい動き1

「‘ねえ、アニキ’」


「‘あ?’」


「‘これすっごい動きにくいんすけど’」


「‘我慢しろ。俺も我慢してんだから’」


 何回かダンジョンに挑むうちに分かったことがある。

 メルドランギルドの男はよくダンジョンに来ている。


 ただ毎回同じ人ではなく、違う人を連れてダンジョンに来ているのだ。

 共通して言えそうなことは連れている人が冒険者駆け出しっぽそうだということだった。


「だいぶ慣れてきたようだね」


「ご指導のおかげです」


 今日なんて連れているのは若いというよりも、少し幼さの残るぐらいの青年であった。

 おそらく事故も少なく魔物に遭遇できるからこうしてダンジョンをよく利用しているのだ。

 

 メルドランギルドの男がよくダンジョンに来ることが分かったので、俺たちもダンジョンに来てメルドランギルドの男のことを探すようになった。

 大人しくしていろと言われたが、ダンジョンに行くなとは言われていない。


「‘こう……盾とか引っかかるんすけど’」


「‘うるせぇ! 話聞こえないだろ!’」


 メルドランギルドの男を探す上でヘルンは面が割れている。

 広いダンジョンだから、たまたま近くにいましたで一度ぐらいは誤魔化せる。


 ただヘルンがいると話は面倒になる。

 だから顔を隠すためにフード付きのマントを買った。


 フードでスッポリと顔や体を隠してしまえば、怪しくともバレはしない。

 キツソウが現れる可能性も否定できないので俺もフードを被せられている。


 クリアスがマントを加工して作ってくれた、四足歩行でもちゃんと身につけられるものだ。

 意外と裁縫も得意らしい。


「‘あいつは信用度高そうだな……’」


 俺はため息をつく。

 どうにか被害者に近づいたいと考えているが、青年の冒険者はすっかりメルドランの男を信頼しているようだ。


「‘なんだっけ、あいつ……’」


「‘ザイハンシっすね’」


 一応メルドランギルドの男の名前も判明した。

 信用できない笑顔を浮かべる男の名前はザイハンシというらしい。


「‘そうそう、胡散臭い名前だ’」


 そしてもう一つ分かったことがある。

 先日女性の冒険者と会っている時にはザイハンシの魔獣がなんなのかはハッキリとしなかった。


 しかしこうして別の人に会うとハッキリした。


「‘あのヒヨコが魔獣とはな……’」


 てっきり猿の方がザイハンシの魔獣かと思っていたら、ザイハンシの隣にはヒヨコの魔獣がいる。

 今日もなんだか眠そうな目をしたヒヨコが、魔獣なのはちょっと意外だった。


 人肉を与えて育てられているとは全く見えない。

 青年の方はコボルトを連れている。


 本当に駆け出しで、コボルトもきっと契約してそんなに日が経っていないはずだ。


「そろそろ魔獣も捕まえて、合成をしてみないか? コボルトだと不便も多いだろ?」


「‘あいつ……’」


 コボルトバカにすんな。

 そう思ったけど、実際なってた俺もあんまり役に立つもんじゃないという自覚はあった。


 でもバカにされるとちょっとだけでカチンと来る。

 コボルトにはコボルトの苦労もあるんだ。


「そうですね……この子にもお世話になりましたが、さらに強くなりたいです」


 俺も脱コボルトをした身だから青年の方はしょうがないと思う。


「‘怪しい提案するもんだな’」


「‘怪しいんすか?’」


 青年の冒険者を襲いたいなら魔獣がコボルトの方が弱くて都合がいい。

 だがザイハンシは合成を勧めた。


「‘珍しい特徴の魔獣になることを期待してるのかもしれないな。だとしたら……あの二人の関係は終わりに近いのかもしれない’」


 ザイハンシが青年の冒険者に手をかけようとしている。

 俺はそう推測した。


 信頼を上手く得て、いつでも手を出せる段階に来たから魔獣が強くなってもいい。

 あるいは奪ってしまうなら強い方がいいと考えたのかもしれない。


「‘だとしたらあいつは危ない……が’」


 俺はチラリとクリアスのことを見る。

 クリアスは地味な色のローブに身を包んで、ザイハンシのことをじっと見ている。


 青年のことが危険だと分かっているのは、俺とヘルンだけだ。

 ヘルンの事情を知らないクリアスには、青年がもうすぐ殺されてしまうかもしれないなんてこと知りようもない。


 俺は心の中で青年に謝る。

 どうしようもない。


 青年に対して魔物の体で出来ることなどないのだ。

 ヘルンの契約者だった子と同じ結末を辿るとしても、今の俺の限界が大きな壁となって立ちはだかってしまう。


「‘でも……どうにかできないんすか?’」


 ヘルンが少し悲しそうな顔で俺のことを見る。

 出来ることといえば、ザイハンシに襲いかかることぐらいだろうか。


 ザイハンシをここで亡き者にしてしまえば少なくとも青年は救える。

 ただし全てが台無しになるし、キツソウは逃げてしまうだろう。


 下手するとクリアスはお尋ね者になって、俺は処分される可能性がある。

 悪いが見知らぬ青年のためにそこまでするつもりはない。


 俺にもまだやるべきことがある。


「‘……誰だ!’」


 俺の鼻が知らない人の匂いを嗅ぎつける。

 近くに誰かがいる。


「ラクさん?」


 唸る俺を見てクリアスも異常を察する。

 しかし振り返ってみても誰もいない。

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