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【第一章完結】魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜  作者: 犬型大
第二章

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木の中の森のダンジョン2

「‘湿った香り……魔物の臭いもうっすら混じってるな’」


 俺はゆっくりと空気を吸い込む。

 肺に流れ込む空気が鼻を通る。


 様々な臭いを感じ取り、俺はそれを分析する。

 臭いの中で強く感じるのは土の香りだ。


 森の中の土は湿り気を帯びていて、濡れた土の匂いがしている。

 他にも木や葉っぱなどの自然の臭いが強く感じられる。


 そしてそんな臭いの中にうっすらと魔物の臭いも混じっていた。

 近くにいる臭いではない。


 言ってしまえば残り香。

 あるいは離れたところにいる魔物の臭いが弱い風に乗って流れてきているのだ。


「‘音は……特になんてことはないな’」


 次に耳に集中する。

 俺を含めてみんなが歩く音がする。


 湿った地面を踏み締めている音や枝が折れ葉が潰れる音がしている。

 ダンジョンの中なのに風が吹いている。


 そのせいで枝葉が揺れる音も聞こえていた。


「‘何にしても、近くに魔物はいないようだな’」


 音にしても、臭いにしても魔物の存在は近くにない。


「この感じは……いないということですね」


 俺はチラリとクリアスのことを見る。

 大丈夫そうという俺のメッセージをクリアスはしっかりと受け取ってくれる。


 何もいないので、そのまま適当に進んでいく。


「‘ふふん、ふんふふーん’」


「‘鼻歌やめねえか、バカタレ’」


「‘ふっ、とうとうアニキに自分の力見せられると思ったら歌も自然と鼻から湧いてくるというもんすよ!’」


 ヘルンは相変わらずご機嫌だ。

 大して上手くもない鼻歌で、敵に場所がバレるかもしれないだろと怒ってもあんまり響いていない。


 すっごい不思議な言い回しをするものだが、コブンリンが調子に乗るほど俺は不安だ。


「‘待て’」


 先頭を歩く俺が立ち止まるとクリアスとヘルンも立ち止まる。


「‘アニキ、何すか?’」


「‘音が聞こえる……’」


 俺はミミを動かして音を拾う。

 前方の方から風によるものとは違う音がしている。


 ただ風の方向が悪くて臭いは分からない。


「なにかいるかもしれないんですね?」


 俺がグッと体勢を低くすると、クリアスとヘルンも見習うようにやや体を屈める。

 俺たちは木に隠れるようにしながら音が聞こえる方向に向かう。


「いましたね!」


 少し先に魔物の姿が見えた。


「あれは……ポワッボアーですね」


「‘ポワッボアー? ……ほーん、まあ、分かるかもな’」


「‘ポワッポワッとしてますね’」


 いるのはイノシシのような魔物だった。

 ただシルエットは丸い。


 顔は平らな鼻が突き出していて、牙も立派なイノシシなのだけど、体は毛がふわふわとして丸くなっている。

 暗がりで遠くから見たら羊の魔物と思うかもしれない。


 ただイノシシの毛なので茶色いし、何だかすごく奇妙に見える。


「‘…………まさかアイツじゃないよな’」


 ポワッとしたイノシシの姿に俺は目を細める。

 そのシルエットだけ見たら、初めて合成された時に提示された三つの選択肢の一つを思い出した。


 何だかよく分からないけど丸いシルエットだった。

 丸いということだけが共通しているので、ポワッボアーが合成先の候補だったかは断定できない。


 しかし可能性は否めない。

 もし仮にポワッボアーになる可能性があったのだとしたら、背中がゾッとする。


 同じ四足でもウルフの方が遥かにマシだ。


「‘何だか弱そうなやつっすね’」


 普通のイノシシならもうちょっとシャープで、圧力を感じる。

 しかし丸いフォルムのイノシシはあまり強い威圧感がない。


 ヘルンはそんなポワッボアーを見て鼻で笑う。

 しかし忘れなるなよ、と俺は思う。


 お前初めて出会った時、イノシシに追いかけれて死にかけてたんだからな。

 思わず俺が呆れた目で見ていることにもヘルンは気づいていない。


「とりあえず戦ってみましょうか」


 見ているだけでは何も起こらない。

 むしろポワッボアーに見つかってしまうかもしれないのであまり眺めてもいられない。


「‘先手は任せてくださいっす!’」


「えーと?」


 ヘルンはクリアスにアピールする。

 言葉が通じないものの、やる気に満ち溢れている感じは何となく伝わっていそう。


「お力見せてもらえますか?」


 クリアスはヘルンのやる気を買って、とりあえず戦わせることに決めた。

 

「‘よっしゃ、やるっす!’」


「ラクさん、フォローお願いしますね」


「‘ああ、もちろんだよ’」


「‘いくっすよー! うおおおっ!’」


 何か作戦でもあるわけもなく、ヘルンは木の影から飛び出してポワッボアーに襲いかかる。

 意外とヘルンの足は速い。


 ポワッボアーが鈍いのか、気づかれる前に近づいてナイフを振り下ろした。


「‘ふえっ!?’」


 効果音をつけるなら『ポフッ』だろうか。

 胴体を狙ったヘルンの一撃はかわされることなくポワッボアーに届いた。


 けれどもポワッボアー本体には届かなかった。

 フワフワに見える毛は、意外とゴワゴワとしていてナイフの勢いを全て吸収してしまった。


 つまりヘルンのナイフはゴワモフとした毛に突き刺さっただけだったのである。

 手が埋まるぐらいには刺さってるので、先っちょぐらいは刺さったかもしれない。


「‘あ、あはは……’」


 ポワッボアーがヘルンのことを睨みつける。


「‘へへっ、旦那、毛皮に穴が……うぎゃー!’」


「‘ほら、言わんこっちゃない’」


 ナイフをズボッと抜いて、ヘルンは笑いながらポワッボアーの毛に空いた穴を手で撫でて埋めようとする。

 しかしそんなことで許してもらえるはずもなく、ポワッボアーはヘルンに突撃し始める。

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