セカンドパートナー4
「ウルフさん……」
「‘なんだ、クリアス?’」
見逃してやるからもう行け。
そんな言葉を言いかけた。
「この子……魔獣にしましょう!」
しかしクリアスはそんな俺とは全く異なることを考えていたようだ。
キラキラとしたおメメをして俺を見つめ、変なゴブリンのを指差す。
こら、変なゴブリンを指差すのはやめなさい。
急に噛みつかれても知らないぞ。
「この子の目、ちょっとウルフさんに似ていると思いませんか?」
「‘どこが?’」
思わず怪訝そうな顔をしてしまう。
変なゴブリンは普通のゴブリンのような濁った目はしていないが、それでもゴブリンなんかより透き通って良い目をしているはずだ。
「そんな顔しないでくださいよ」
クリアスは唇を尖らせる。
俺の顔の意味は伝わったようだ。
「なんていうでしょうね……魔物って、魔物! みたいな目をしているんですけど、ウルフさんは魔物っぽくない優しい目をしているんです。このゴブリンさんも魔物っぽくない感じがして……似てるんです」
「‘……なるほどな’」
クリアスは何とか理由を説明しようとする。
ちょっとばかりふわっとした理由だけど、俺にはなんとなく分かった。
つまりは理性的な目をしているとクリアスは見抜いたのだろう。
俺の中身は人であり、魔物のように人に対する怒りや攻撃的な色は目に浮かんでいない。
目の前の変なゴブリンも同じだ。
多少怯えた感じはあっても攻撃的な雰囲気はない。
頭がいいのか、目も理性を感じさせる透き通った感じはある。
そんなところが似ているというのだ。
「‘頭がいいというのを見抜いたわけか’」
魔物の目を見て性質を見抜く。
そんなことするのクリアスぐらいだろう。
確かにバカよりは頭がいい方がいい。
会話ができる魔物というのも珍しいかもしれない。
「‘ただこいつ戦闘能力なさそうなんだよな’」
俺が目を向けると変なゴブリンはへへっと愛想笑いを浮かべる。
逃げられないと分かっているのか逃げることもなく、だからといって抵抗するような素振りすらない。
「‘まあ、そこら辺は使いようかな……’」
なんでもどう使うかで変わることがある。
剣だって包丁代わりにしてしまえば持ち腐れとなる。
ある程度の能力の低さは、知能でカバーできることは俺自身で実証済みだ。
「‘あとは合成とかどうなんだろな?’」
あと不安なのは合成なんかにおいてどうなのかというところ。
弱い魔物と合成されると弱くなる可能性もあるみたいだ。
変なゴブリンと合成されたら弱くなってしまうこともあるのかもしれない。
「‘ただ二足歩行だもんな’」
一個大きな利点を挙げるなら、変なゴブリンは二足歩行なのだ。
つまり俺が求める条件の一つは満たしていることになる。
「‘……悪くないか’」
荷物持ちぐらいにはちょうど良さそうだ。
頭がいいなら何か連携して戦えることもあるだろう。
少し悩んだ末に変なゴブリンも悪くないかもと思い始めた。
「どうですか?」
クリアスは悩んで変化する俺の顔を眺めていた。
変なゴブリンはちょっと逃げようしていたが、俺は視線を向けるとすぐになんでもありません顔をする。
「‘いいんじゃないか?’」
「おっ! 許可出ましたね!」
頷いてやるとクリアスは嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「‘よし、話を聞いてたな?’」
「‘へ、へぇ……聞いてましたけど……’」
「‘クリアスがお前を魔獣としてご所望だ’」
「‘あのぉ……それって拒否は……?’」
「‘できるわけないだろ。死ぬか、受け入れるかだ’」
クリアスは無理矢理なんて望まないかもしれない。
しかし言葉なんて聞こえていないのだから、俺が多少脅したところで構わないだろう。
「‘そ、そんなの拒否できないのと一緒じゃないですか!’」
「‘そう言ってんだよ’」
「‘うぐっ……じゃ、じゃあ条件があります!’」
「お二人で何話してるんでしょうね……」
俺には言葉に聞こえているが、クリアスにとってはワウワウギャウギャウ言っているようにしか聞こえないのかちょっと寂しそう。
「‘条件だぁ?’」
「‘自分の復讐、手伝ってください’」
「‘復讐? ……後で話聞くよ’」
「‘それほんとっすよね!’」
「‘ああ、聞いてやるよ’」
「‘じゃあ……しょうがなく……’」
ただし俺がな。
旅の主導権はクリアスにあるし、聞いてやって手伝うとは言ってない。
人間らしいずる賢いやり取りで、俺は変なゴブリンを説得して仲間に引き入れたのだった。
「‘なーんかだまされてるような気が……’」
「‘死ぬよかいいだろ?’」




