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【第一章完結】魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜  作者: 犬型大


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走れ2

「‘酒臭いな……’」


 飲んでいる人が多いせいか、冒険者ギルドの中はムワッとした酒の匂いが広がっている。

 人間の嗅覚ではどうなのか知らないが、今の俺の鼻では匂いだけで酔ってしまいそう。


「買い取りをお願いします」


 クリアスが素材の買い取り受付に袋を置く。

 受付横にはダンジョンの異常事態のお知らせやネズミ討伐で報奨金が出る旨の貼り紙がある。


「買い取りですね。確認させていただきます。おお……結構倒されましたね」


 袋を開いて受付の女性は驚いた顔をする。

 袋いっぱいにネズミのヒゲが入っていて、多くのネズミを倒したことが一目瞭然だった。


「あとはこちらも……一つは持ち帰ります」


「あら、すごいですね。少しお時間いただきますが、大丈夫ですか?」


「はい、大丈夫です」


 続いてオーク肉をリュックから取り出す。

 ネズミの素材を数えたりと少し時間がかかる。


 酒臭いギルドの中でじっと待つしかない。


「‘んだ、あいつ?’」


 人に混じって色々な魔獣もいる。

 冒険者ばかりの冒険者ギルドでは外よりも魔獣の密度も高い。


 その中でウルフっぽい魔物の姿をした魔獣もちらほらといる。

 こうやって他と比べると俺の体格はやや大きめになる。


 ツノが生えているものもおらず、ちょっとした特別感があって誇らしい気分になった。

 ビールの入ったグラスを片手に持ったスキンヘッドの男が連れている小柄なウルフが俺のことを見ていた。


 なんで見てくるのかと俺もウルフのことを見る。

 敵意は感じない。


 睨みつけるような感じでもなく、ただただ俺を見ている。


「メルゥ? 何を見ている?」


 どこかそっぽを向いているウルフに気づいて、契約者のスキンヘッドが不思議そうな顔をする。


「‘……メスか。まさか…………いや、そんなことないよな?’」


 メスだと聞いた瞬間に嫌な想像をしてしまった。

 俺はたくましくて強そうでイケてるオスだ。


 中身は人間の男なのだけど、外見はウルフから見たら良いオスかもしれない。

 とするとだ。


 メスウルフが惹きつけられることもないとは言い切れない。


「‘嘘だろ?’」


 いわゆる情熱的な色目、というやつかもしれない。


「‘興味ないからな……’」


 たとえ見た目がどうなろうと俺は人間だ。

 魔獣同士の繁殖なんかあるのか知らないが、ウルフに興味を持たれたところで俺がウルフの方に興味を持つことはない。


「クリアスさーん」


「はーい」


 ウルフの視線を無視していると、買い取り受付でクリアスが呼ばれた。

 俺が立ち上がるとウルフは尻尾を振っている。


 スキンヘッドは不思議そうにウルフのことを見ているが、相変わらずウルフは動く俺のことを視線で追いかける。

 見られるのも嫌だなと思った俺は、クリアスを壁にするようにして一緒に動く。


「こちらが買い取り金です」


「わっ!?」


 これぐらい、と俺とクリアスで予想していたよりも一回り大きな袋に、お金が入って受付に置かれた。

 袋が置かれた時に、ジャラリと重たい音がしっかりと聞こえてきた。


「現在ダンジョンの沈静化のためにもフォレストラットの素材の買い取り強化をしています。報奨金も出るので合わせると大きい金額に。加えてダンジョンのボスも倒されましたね。オークの霜降り肉……現在需要があって少し高めに買い取りました」


 市場で必要とされている素材があれば、高く買い取ってもらえるのは当然の原理だ。

 共食いのオークのことを目の当たりにした俺からすると、なかなか手が伸びにくい肉になる。


 しかし先入観を抜きにして考えてみれば、霜降り肉は美味いのかもしれない。

 ネズミの異常出現で三階に行く人がいなくなったら、共食いのオークの霜降り肉の流通も途絶える。


 誰が食べてるのかは知らないけど、誰かが霜降り肉を欲している人がいるらしい。


「よくボスオークを倒しましたね。オークではあるのですが、毒を持っているのでなかなか倒すのが大変なんです」


「毒……ですか?」


「お知りにならなかったのですか? ……運が良かったのですかね?」


「‘あれやっぱ毒だったのか’」


 共食いのオークの血で壁が溶け、妙な不味さを感じた。

 血がついた毛は無事だったことも不思議だった。


 やはり共食いのオークの血は毒だったのだ。

 うっすらとそんな気がしていた。


「ウルフさんには毒耐性がありますもんね」


 俺にはどこで手に入れたのかも分からない毒耐性がある。

 活きてくることもないかもしれないと思っていたスキルだったのに、思いもよらないところで活躍してくれていた。


「……ということでこちらが今回の買い取り額となります」


 受付の女性が細かな内訳を説明して、袋を開く。

 中には確かにお金が詰まっている。


 薬屋に払っても余裕があるぐらいにはありそう。


「ふへっ……」


 意外に大きな収入にクリアスの顔も思わず緩む。

 上手くやれば一攫千金。


 危険にも関わらず冒険者を志す人が後を絶たず、ダンジョンに挑む人も多い。

 今回薬草を手に入れたのである程度のところで切り上げたのにこれだから、人が魔物と戦う理由も納得できる。


「よいしょ……」


 引き締めようとしながらも、ニヤニヤと口元が緩むクリアスはお金の入った重い袋を受け取る。


「うふふ、帰りましょうか」


 カリンの病気が治っても、しばらくやっていけるようなお金が手に入った。

 薬できるまで三日という不安も少しは和らいだ。


 硬かったクリアスの表情が柔らかくなって、俺も少し安心した。

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