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【第一章完結】魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜  作者: 犬型大


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新たな体で金稼ぎ3

「‘うおっと!?’」


 自分の体なのに、加速が速くて制御しきれない。

 ネズミに突撃しそうになって、俺はとっさに頭を下げる。


「‘オラァッ!’」


 止まれないなら止まらない。

 俺はネズミのことをツノで突き刺して、力強く跳ね上げる。


 ネズミは意外と高い天井にビタンッとぶつかるほどぶっ飛び、俺は壁に飛びつくようにして勢いをなんとか止めた。


「‘危ないところだったな……’」


 下手すると自分が走る勢いで壁に激突するところだった。

 ただ疾走は悪くない。


 通常よりも高い加速を得られるスキルは、機動力を上げてくれる。

 ファイヤーボールも疾走も魔力を使っているけれど、ファイヤーボールよりも疾走で使った魔力はかなり少ない。


 加速はただ機動力という側面の強化だけでなく、勢いを活かしたツノや爪の攻撃も強化してくれる。

 つまり疾走は攻撃にもなるスキルなのだ。


「‘ダンジョンだとアレだけど……広いところを走り回ってみたいな’」


 複雑な作りをしている狭いダンジョンでは、疾走スキルはなかなか活かしにくい。

 もっと上手くコントロールできれば細かな加速もできるので、使いながら慣れていこう。


 壁にぶつかるとかそんなこと考えなくても良いところで、走ってみたい気分になった。

 きっと気持ちがいい。


「ファイヤーアロー!」


 残り一体。

 振り向いた俺が見たのは、炎の矢によってハリネズミにされたネズミだった。


「私も戦いますよ!」


 クリアスの前から赤く光る魔法陣が消えていく。

 俺ばかり戦っていては消耗してしまう。


 俺が気を引いてクリアスが攻撃するという基本的な形もしっかりと利用していくつもりだが、クリアスの方も魔法の発動に少し慣れてきているようだ。


「‘チーズは無しか’」


 ネズミの死体が消えて、素材がドロップする。

 レアドロップはチーズで、前回は割とチーズも落ちた。


 しかし今回は三体ともヒゲであった。

 異常事態だったから出やすかったこともあるのかもしれない。


「この調子でいきましょう!」


 先手を取れたこともあって余裕だった。

 スキルも軽く確かめられた。


 この調子ならよほど大量のネズミでも出てこない限りは対処できるだろう。


「うわああああっ! 助けてくれ!」


「‘なんだ?’」


 情けない悲鳴のような声が聞こえてくる。

 声と足音が近づいてくる。


 俺が体を低くして警戒する体勢を取ると、クリアスも杖を握りしめて同じく警戒する。

 勝利の余韻に浸っている暇もない。


「‘そっちだな’」


 小部屋に繋がる道は二本ある。

 俺たちが来た方と、俺たちが来た道から見て左から入ってくる道がある。


 左の方の道から何かが走ってくる。

 おそらく、人とネズミだろうと足音や鳴き声の感じから推測した。


「魔法を準備します」


 クリアスにも分かりやすいように左の道の方を向いて唸り声を上げる。

 するとクリアスは魔法陣を描き始める。


 魔法陣の光が赤みを帯びて、いつでも魔法を放てるギリギリで止めておく。


「たまには私も良いところを見せますよ。大きいのいきます!」


 ネズミの足音が地響きのように聞こえる。

 クリアスにも音が聞こえてきていて、かなりの数のネズミがきていることが分かった。


「誰か……!」


「‘伏せてろ!’」


 泣きそうな顔をした青年が走ってきた。

 年はクリアスと同じか、いくらか上だろう。


 やや貧相な装備をしていて、あごを前に出して肩で息をしている。

 後ろにはネズミが迫ってきていて、前にダンジョンに入った時の俺たちのように討伐に失敗したようだった。

 

 俺は部屋に飛び込んできた青年の服を咥えて引っ張る。

 もはや限界だったのか、青年は少し引っ張っただけで足をもつれさせて地面に倒れてしまう。


 青年の奥、黒い塊のようにネズミが走ってくる様子に、かつて失った左の前足が疼くような気がした。


「ファイヤーストーム!」


 魔法陣の光が強くなる。

 炎が魔法陣から飛び出してきて、渦巻き、左の通路を埋めつくように進んでいく。


 熱量に空気が揺らいで、少し離れている俺にも熱さが伝わってくる。

 ファイヤーストームに押し出されたような熱風が俺の毛を揺らす。


 勢いのついたネズミはすぐには止まれない。

 さほど広くもない通路では前のネズミが止まっても何が起きたか分からずに、後ろのネズミが次々と前のネズミを押していく。


 クリアスは魔力を込め続けて火力を維持する。

 ネズミが焼けるひどい臭いが漂ってきて、俺は思わずマズルにシワを寄せてしまう。


「……ふぅ」


 こんな火力の魔法も使えたのかと驚く。

 確かに俺が前に出ている時にあんな魔法を使われたら、俺もネズミごと燃えていたことだろう。


 あまり裕福ではない家の娘さんっぽいのにこうした魔法はどうやって身につけたのか。

 家に魔法関連の本はあったが、そんなものをクリアスが一人で集めたとは思えない。


 両親もそうした魔法に関わる人だったのかと疑問に思った。


「‘おっと!’」


 ネズミが飛び出してきた。

 俺は横から飛びかかって、ネズミの脇腹を爪でざっくりと斬り裂いてやる。


 俺が左の道を睨みつけると数体のネズミが走ってきていた。

 炎が届かず無事だった奴らがいたらしい。


「‘ファイヤーボール!’」


 クリアスには負けていられない。

 俺もツノに魔力を集めて魔法を放つ。


「‘あっ! ……チッ!’」


 俺が放ったファイヤーボールはネズミにかわされてしまい、思わず舌打ちする。

 なるほど、警戒している相手に正面から魔法を当てるのは意外と難しいのだな。


「‘だが俺の方が速いぞ!’」


 俺は飛びかかってくるネズミの首に噛みつき、別のネズミに向かって投げつける。

 四足だとしっかり地面を踏みしめられるので意外と力も入りやすい。


「いきますよ! ファイヤーボール!」


「‘ほう、上手く当てるようになったな’」


 クリアスが火の玉を放つ。

 俺とネズミの位置を見て、少し先の動きを予想するように放たれた火の玉は上手くネズミを燃やす。


 クリアスは頭もいいようで、戦うごとにどうすればいいのかというちゃんと考えている。

 今のファイヤーボールも巧みな計算の上で放たれていた。


 俺はクリアスの成長に感心してしまう。

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