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【第一章完結】魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜  作者: 犬型大


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弱音1

 自分の目では自分の姿が見えない。

 家に帰って鏡でも見るしかないと詳細な姿については諦める。


 ただ四足歩行のウルフっぽい感じと頭にツノが生えているということは分かった。

 さらに立って見ると思いの外視界は低くなく、コボルトの貧相な体を思い返してみれば比較的がっしりとした感じもある。


「‘慣れないな……’」


 体の使用感の感想としてはともかく慣れない。

 その一言に尽きる。


 コボルトも魔物の体ではあったものの、二足歩行だった。

 人間との体の違いに違和感は感じてもあまり不便さを思ったことはない。


 だが四足歩行になるとやはり違う。

 尻尾の感覚とか、ツノの感覚とかコボルトともさらに違っている。


 加えて、ミミや鼻の感覚がコボルトの時よりも良くなっている。

 今ならクリアスの姿が見えなくてもニオイで探すことができそうだ。


 クリアスの方もモフモフと言っていたり、そんなに忌避する感じはない。

 見た目としてはそんなに悪くなさそうだ。


「‘うっ……’」


「あっ、お疲れ様です〜。無事終わったようですね」


 慣れずにちょっとひょこひょこと階段を上がっていくと、冒険者ギルドに戻ってきた。

 外から中に入った時には思っていたよりも明るいなと感じていたが、中から外に出てきたら眩しさを感じる。


「スキル鑑定をしていきますか? 合成された魔物は無料ですよ」


「じゃあお願いします」


「‘スキル鑑定?’」


 この期に及んで知らない言葉が出てきた。

 スキル鑑定とは何なんだと俺はクリアスのことを見る。


「スキル鑑定とは文字通りどんなスキルを持っているのか見てくれるものですよ」


 俺の視線に気づいたクリアスは機嫌が良さそうに答えてくれた。


「魔物は色々なスキルを持っていて……どんなものを持っているのか普通は分からないので魔法で調べてくれるんです。お金かかるので、コボルトさんだった時にはやれませんでしたけどね」


 クリアスは申し訳なさそうに少し眉を下げる。

 どうしてもお金の事情は厳しい。


 今も俺が腕を持っていかれる前に手に入れたチーズや樹液のお金で何とかやりくりしているけれど、あまり余裕があるわけでもない。

 明らかにスキルなんて持っていなさそうなコボルトに、スキル鑑定なんてしなくても不思議なことはない。


 今は合成したらタダだからスキル鑑定とやらもしてみるみたいだ。


「それでは失礼します。少し触りますよ」


 冒険者ギルドの職員が小枝のような杖を取り出して、俺の額に軽く当てる。

 ムズムズとするような当たり具合に、額をかきたくなる。


 杖の先で小さい魔法陣が展開される。


「ふむふむ……」


 職員は杖とは逆の手でペンを持ち、紙に何かを書き込んでいく。

 スキルというものが何なのかよく分かっていないが、何かスキルがあるならいいなと期待はできる。


「はい。ありがとうございます」


 スキル鑑定もほんの十秒とかそんな短い時間で終わった。


「スキル鑑定の結果ですが……」


「結果ですが……」


 クリアスも、ちょっとドキドキとしているような顔をしている。

 俺に何かのスキルがあるのか、気になっているのだ。


「スキルはこちらになります」


「これが……コボルトさんのスキルですか」


 職員が紙をこちらに向けた。

 俺とクリアスは二人して紙を覗き込む。


『スキル鑑定結果

 毒耐性(小)

 疾走

 ファイヤーボール』


「こちらの三つがクリアスさんの魔獣のスキルとなります。なかなか優秀ですね。毒耐性スキルなんてあるだけで効果を発揮しますし小でもなかなか腐りにくいですよ」


 俺が持っていたスキルは三つであった。

 わかりやすいのは毒耐性だ。


 文字通り毒に対する耐性がつくスキルだろう。

 そんなものどこから来たんだという謎はある。


 ホーンフォックスが持っているとも思いにくいし、ならばコボルトの体だった時に持っていたのだろうか。

 毒キノコ食べて倒れたぐらいしか記憶にない。


 そもそも毒耐性を持っていたら大丈夫だったはず。


「‘あれで手に入れた? ……また謎が増えたな’」


 毒キノコを食べたから毒耐性を手に入れたのかもしれない。

 可能性としては否定できないが、本当にそうなのか確かめようとない。


 スキルが何かのきっかけで手に入れられるかもしれない、というところだけは覚えておこう。


「毒耐性に疾走、それにファイヤーボールですか」


 次にわかりやすいのはファイヤーボールだろう。

 多分これはホーンフォックス由来だ。


 ツノから火の玉を放っていた魔法はスキルだった。


「‘魔法はスキルとして使うことができるようになるのか’」


 合成によって新たな世界が広がった。

 スキルという新しい要素によって考えることが一気に増えた。


 魔力が増えたら魔法が使えたらいいなと思っていたが、まさかスキルという形で使えるとは思いもしない。


「‘あとは疾走……これはちょっとなんだか分からないな’」


 字面としてはなんとなく意味は理解できる。

 けれど疾走がスキルとしてどんな効果のものなのか分からない。


 走ることに関するものだろうかと想像を広げてみる。

 なんにしてもスキルだから有用なのだろうとワクワクしてしまう。


「スキル三つ……結構すごいんじゃないですか?」


「ええ、すごいと思いますよ。元がコボルトでしたからね。基本的になんのスキルも持たないことも多い魔物なので」


 クリアスは嬉しそうなドヤ顔をしている。

 俺としてはコボルトのことを見下すような職員の発言に少しモヤっとしたものを覚えるが、今はもうコボルトでもないし気にしないことにした。


 スキル三つがすごいのであれば、俺としても嬉しい限りである。

 やめろ、動くな尻尾。


 俺はまた勝手に振られそうになる尻尾を気合いで止める。

 ちょっと嬉しいだけで振られてしまったらたまったものではない。

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