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魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜  作者: 犬型大


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弱肉強食の世界4

「‘叫ぶ暇あるなら戦えよ’」


 邪魔者がコボルトだと気づいた。

 ゴブリンとしてもコボルトはあまり大きな脅威ではない。


 しかも一体だけなら尚更だ。

 怒りの目をして咆哮するけれど、口をデカく開けて吠えてる暇があるなら俺は攻撃する。


 ナイフをゴブリンの喉に突き刺して、ねじりながら引き抜く。


「‘残り三体。勝てるな’」


 わらわらといたゴブリンも残り三体となっている。

 流石にこれだけ一気に数が減ると、ゴブリンもマズいと思うのか怯えが目に見られた。


 逃げるなら追いかけるつもりはない。

 そんな暇ないから。


 だが逃げないのなら邪魔だから殺す。

 俺はナイフについた血を振り払うと、ゴブリンに向かって飛びかかる。


「‘甘いぞ’」


 振り下ろされたナイフはかわされた。

 ただそれぐらいで攻撃を終わらせるつもりもなかった俺は、ゴブリンの胸を蹴り飛ばす。


 一瞬呼吸が止まって苦しそうな顔をしたゴブリンが後ろに転がる。

 俺は別のヤツが振り下ろした棍棒を上体を逸らして回避する。


「‘ふっ!’」


 反撃にナイフを振って相手の喉を切り裂いて、三体目のゴブリンの方を向く。


「‘おっと?’」


 ゴブリンの後ろから火の玉が飛んできていた。

 俺のことを睨みつけていたゴブリンは火の玉に気づかず、全身燃えてしまう。


 魔法を放ったのはクリアスではない。


「‘お前、魔法も使えたのか’」


 ホーンフォックスのツノの先で炎がゆらめいている。

 ツノの先から魔法を撃ち出したのだと俺は気づいた。


 魔法まで使えるのは意外で驚いてしまう。

 そういえば一体、炎に燃やされたように死んでいたゴブリンがいたなと思い出す。


「‘残念だったな’」


 俺に蹴り飛ばされて倒れたゴブリンは、地面を這いずって逃げようとしていた。

 きっと俺たちがいなければチャンスだっただろう。


 だがたまたま俺たちに見つかってしまった。

 これもまた一つの自然の摂理なのかもしれない。


「‘恨むなら弱さを恨め。次はもっと良い存在になれるといいな’」


 俺はナイフでゴブリンの首を切り裂いてトドメを刺す。

 余計な介入だったのかもしれない。


 しかし介入しようと思ったのもゴブリンだったからだ。

 弱くて勝てそうだったから手を出したという側面は否めない。


 俺のことを恨むかもしれない。

 それを止める権利は俺にはない。


 けれども俺を恨んでも何も変わらないし、恨むべきは弱い自分なのだ。


「コボルトさん!」


 ゴブリンが倒されたのを見てクリアスが駆け寄ってくる。

 一瞬ホーンフォックスの魔法を警戒するが、ホーンフォックスはうなるだけで魔法を使う様子はない。


「どうしましょう……?」


「‘どうしましょうって言われてもな’」


 とりあえずホーンフォックスを助けたいと手を出した。

 その先にどうするのかクリアスは考えていなかった。


「‘もう持たないな’」


 俺は親のホーンフォックスの様子を見る。

 子供を守るように立っているが、目の焦点があっていない。


 ホーンフォックスの下には血溜まりができていて、呼吸は荒く、明らかに生命の灯火は消える寸前。

 見逃してやっても親のホーンフォックスは助からない。


「コボルトさん?」


 ホーンフォックスを刺激しないようにと少し距離を取ったまま眺めていたが、もはや逃げる気力もないようだ。


「‘よう、俺の言葉が分かるか?’」


 俺がホーンフォックスに近づくと、クリアスは少し驚いた顔をする。

 ホーンフォックスの方は牙を剥き出してうなるが、耳はピクピクと動いているので聞こえてはいるようだった。


「‘お前はもうすぐ死ぬ。それは分かるな?’」


 分からないけど、少し情けをかけてやろうと思った。

 ほんの少しの気まぐれで、説得を試みる。


 通じるならそれでいいし、通じないなら本来の計画通りで動けばいい。


「‘お前たち全員を捕まえて、食ったっていい’」


 俺の言葉に反応して親のホーンフォックスは低くうなる。

 なんとなくだが、言葉が通じているような気がした。


「‘だけどお前にチャンスをやろう。もはや死にかけのお前でも役に立つことができる。最後にその命……助けてやって俺にくれないか?’」


 少し唸り声が小さくなった。


「‘お前の子供たちは見逃してやる」


 親のホーンフォックスの体がピクリと揺れた。

 やはり俺の言葉は届いている。


「俺は手を出さない。この先行けていけるかはコイツら次第だが……少なくともここでは死なない’」


 最初で最後の提案。

 俺が持ちかけたずるい取引。


 あたかも助けてやったと恩を着せるようにして、俺はホーンフォックスを要求した。

 俺の取引の意味が分かるのか、親のホーンフォックスの瞳が揺れる。


 クリアスもクリアスで俺のことをじっと見ている。

 何をしているのか分からないだろうが、何かをしているので任せてくれている。


「‘どうする? なんなら昼飯用の干し肉を渡してやってもいいぞ’」


 親のホーンフォックスは俺のことを見つめる。


「‘時間がないぞ。俺ではなく、お前に。お前がここで死んだら、俺は後ろの子供を捕まえるしかないんだ’」


 俺たちの方も時間はない。

 悩んでいるうちに親のホーンフォックスが死んでしまったら、合成のためには子供を狙うしかなくなる。

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