二人の選択2
「まさか……合成しろというんですか?」
クリアスの顔は涙でひどいことになっている。
それを汚いとかブサイクだとは思わない。
だって俺のために泣いてくれているのだから。
頷く俺に対して、クリアスはまた涙を目に溜める。
「消えちゃうんですよ……?」
「‘分かってるさ。でも消えない可能性もある。それに……少なくともクリアスのためにはなれるだろう’」
このままではただクリアスの足手まといにしかならない。
人に戻ることはおろか、病気の妹を抱えるクリアスの負担になってしまうのだ。
わずかでも希望があるなら前に進む。
どうせこの体に可能性などないに等しかった。
クリアスと出会って、希望が持てた。
合成して俺自身が消える可能性は高いけれど、俺を助けてくれたクリアスのために合成後の俺を残すことができる。
精一杯の笑顔を浮かべてみる。
多分歯を剥き出して威嚇している顔にも近く見えるのかもしれない。
それでも今できる最大限の答えだった。
「ブハァッ! なんででずがぁ!」
俺の下手くそな笑顔もクリアスは分かってくれる。
自分が無くなるということも理解して合成されようとしている。
クリアスもそのことを理解して何回目かも分からない涙をこぼす。
「‘そんなに泣いたら枯れてしまうぞ’」
俺はクリアスの涙を拭ってやる。
「……分かりました。合成……しましょう」
クリアスは鼻をすすると、涙を袖で拭う。
覚悟を決めた目をしている。
「コボルトさんを……合成します。合成して……強くなって……ダンジョンに挑みましょう? ダンジョンに挑んで、薬草とって……カリンも元気になって……みんなで仲良く暮らしましょうよ……」
思いを口に出すほどに、感情が昂ってくるのか目に涙が溜まり始める。
それでもクリアスは泣かないように耐える。
「だから合成するけど……消えないでください……」
それは命令なのか、あるいはほんのわずかな希望にかけた願いなのか。
どちらか分からないが、俺はただ頷いて答えた。
「それじゃあ合成をするということで動きましょうか。今のままじゃ合成はできません」
俺もクリアスも覚悟を決めた。
ならば合成に向かって進むしかない。
ただ合成するといっても今すぐに合成ができるものではない。
合成というからには何か他のものを掛け合わせねばならないのだ。
もっと正確にいえば他の魔物が必要なのである。
「もう少し回復したら契約できそうな魔物を探しましょう」
強い魔物を捕まえることは無理だが、クリアスと俺なら多少は戦える。
腕も利き腕ではないので、戦力的なダウンはそこまでない。
魔物一体ぐらいならなんとかなるはずだ。
「魔物を捕まえたら……それから合成です。きっと大丈夫……コボルトさんはコボルトさんのままの…………はず」
魔物を捕まえる必要はあるものの、もう合成は目の前だ。
せめて少しでも強い魔物になってやりたいなと俺はクリアスの頭を撫でてやったのだった。




