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魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜  作者: 犬型大


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19/22

失敗1

「今日も行きますよ!」


 ダンジョン二回目の挑戦。

 一回目はダンジョン一階に挑んで、特に問題なさそうなことがわかった。


 なので今回は二階に挑んでいくつもりだ。

 三階にある薬草も必要だが、薬草を薬にしてもらうためにお金も必要になる。


 実力があるなら三階で魔物を倒して回るのがいいけれど、流石にそこまで調子には乗らない。

 まずは二階で様子を見る。


 クリアスはやる気に溢れている。


「行きますよ!」


「‘ほっと’」


 二階に行くには階段を見つける必要がある。

 出入り口の魔法陣や階段の位置、内部の構造は定期的に変わってしまう。


 だから地図なんかはあっても意味がない。

 入ってきた出入り口も昨日とは別の場所になってしまったので、コツコツと探して見つけるしかない。


 当然探す間にも魔物とは遭遇する。

 亡霊樹の相手も慣れたものだ。


 俺が亡霊樹を引きつけて、クリアスが魔法で倒す。


「‘なんだ?’」


 燃える亡霊樹がポンッと音を立てて消える。

 前と同じく小枝が現れたのだけど、小枝の横に小瓶が落ちている。


 拾い上げて中を確認してみると、透明な液体が入っていた。


「あっ、レアドロップですね」


「‘レアドロップ?’」


 俺が小瓶を渡すとクリアスは嬉しそうに中を覗き込む。


「ドロップする素材も全部固定ってわけじゃなくて、いくつか種類があるんです。亡霊樹の枝なんかは出やすいんですけど、中にはなかなか出てこないものもあって、それがレアドロップって呼ばれるものなんです」


 魔物から落ちる素材も実はいくつか種類があって、物によって出やすいものと出にくいものがある。


「これは樹液で、ちょっとだけ高く買い取ってもらえるんですよ!」


 クリアスはニンマリと笑う。

 小瓶の中に入っているのは亡霊樹の樹液で、珍しいドロップ品なのだった。


 レアドロップも出てきて幸先がいいとクリアスは嬉しそうにしている。


「‘……そんなに上手くいくもんかな?’」


 クリアスは調子が良くて順風満帆だと感じているが、俺は少し懐疑的だった。

 疑いすぎなのかもしれないが、上手くいっている時ほど意外な落とし穴があるものだ。


 嫌な予感というほどではない。

 でもただ順調とも思えなかった。


 本当に調子が良く、そしてそのまま進むこともある。

 クリアスの上機嫌に水を差すこともないので、自分で警戒しておく。


「あっ、階段ありました!」


 そのまま順調に二階へ降りる階段を見つけた。


「ここからがダンジョンも本番ですよ! 気を引き締めていきましょうね!」


 一階が簡単なことはクリアスも分かっている。

 いかにここまで順調でも、お気楽に挑戦はしない。


 ゆっくりと階段を降りていくと一階とはまた空気が変わってきた。

 一つ空気の温度が下がったような雰囲気を俺は感じていた。


「‘ここが二階か。作りとしては似てるが……壁が植物なんだな’」


 一階は壁に囲まれた迷路のような作りになっていた。

 二階も同じく壁に囲まれ、ところどころに部屋がある迷路型の作りをしている。


 ただ一階との違いは壁が植物で出来ていることだった。

 手を押し当ててみると一階の石壁と違って、少しフカフカとしている。


 頑張れば壁を切り開いて向こう側にもいけそうな気がする。

 床にも草が生えていて、一階よりも自然環境っぽさがある。


「‘戦っている音がいくつか聞こえるな’」


 俺は耳を澄ましてみる。

 一階は人が少なく、周りに人がいるような音はあまり聞こえなかった。


 二階は一階よりも人が多くて戦う音が聞こえてきている。

 こうなると人との遭遇も警戒しなければいけないかもしれない。


 一階からの階段がある場所は広めの部屋になっていて、道は三方向に伸びている。


「うーん、こっちにいきましょうか」


 どの道を選んだところで大差ない。

 クリアスが適当に選んだ右の道に進む。


 音が多い。

 コボルトの身になって日が浅い俺では、音が判別しきれない。


 まだ音の種類が少なくて、一階での亡霊樹が根っこを引きずるようにして移動する音はまだ聞き分けしやすかった。

 壁の向こうの音が戦っているのか、魔物が動いているものか分からない。


「‘何かが来る……’」


「コボルトさん?」


 道の先からカサカサと音がする。

 俺が立ち止まって、クリアスは不思議そうな表情を浮かべる。


「あっ、魔物ですね!」


「‘チッ! 来るぞ!’」


 通路の向こうから魔物が走ってくる。

 コボルトが四つん這いのうつ伏せになったぐらいの大きさの大きなネズミだった。


 亡霊樹は移動が遅くて、しっかり観察する暇もあったけれど、ネズミは素早くこちらに向かってきている。

 接敵までの時間がない。


 俺はナイフを手に前に出る。


「‘チッ……速いな!’」


 ネズミは大きく飛び上がって、俺に襲いかかってきた。

 突き出た前歯で狙われ、俺は横に転がって回避する。


 ほんのりとかおる獣臭さに野生の危険性を感じる。

 赤い目はしっかりと俺のことを睨みつけていた。


「‘はっ!’」


 俺もただ攻められるだけではない。

 ネズミの懐に入り込んでナイフを振る。


 硬くはない。

 亡霊樹と違ってナイフは通る。


 これなら戦えるかもしれない、とほんの少し希望を持った。


「‘うっ! おっ!’」


 ナイフで斬りつけられた小さな痛みに怒りの声をあげて、ネズミが爪を振り回す。

 爪が掠めて、頬の毛が何本がヒラリと落ちる。


 攻撃の速度も亡霊樹より速く、回避に余裕がない。

 大きな前歯も噛みつかれれば致命的に危険そうなのに、爪も鋭いなんてコボルトから見ればズルい話だ。

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