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魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜  作者: 犬型大


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初めての共闘4

「‘まあ嬉しい誤算だったな’」


 クリアスの魔法の技術が想像していたよりも上なことが分かった。

 魔法がどこまで使えるのかはまだ分からないけれども、もうちょっと強い相手にもクリアスの魔法は通じそう。


 戦力としてはコボルトを遥かに上回っている。


「‘敵の数が増えてきたり、別の魔物の時にどうか、だな’」


 ここまではまた一体ずつの亡霊樹しか相手にしていない。

 複数出てきた時にはまた事情が変わる。


 その時にクリアスが適切に動けるのか不安は残っている。


「‘やっていってなれるしかないか’」


 最初から上手くできるような人などいない。

 不安はあれど、やってみて確かめて、ダメなら改善していくしかない。


 ダメだった時に命がかかっているというだけの話なのだ。


「‘俺の方も少し……研ぎ澄まされてきたな……’」


 戦いの中でコボルトの体も闘争に目覚めてきているような感覚がある。

 目覚ましく身体能力が上がることはないが、耳や鼻の感覚が鋭敏になってきた。


 石壁の割れ目から生える草のニオイや遠くから聞こえる誰かの戦う音なんかがうっすらと感じ取れる。

 人の体だったら分からなかっただろう。


 戦いに活かせるような能力ではなく、ただ人よりも少し優れている程度の話ではある。

 それでも戦闘に本能が刺激されている感覚は、俺の動きをほんの少し洗練してくれる。


「‘一気に三体か’」


「コボルトさん……無茶しないでくださいね!」


 順当に増えてくれればと思っていたが、次に現れた亡霊樹は三体だった。

 やや黒っぽい木が歩いて移動する様は不思議なものだ。

 

 少し気合を入れなきゃなと集中力を高める。

 攻撃が当たれば終わり。

 

 同時に三体を相手にしながら、クリアスの方に行かないようにして、なおかつ魔法の邪魔にもならないように動く。

 コボルトにやらせるには、なかなかハードな仕事だと笑ってしまう。


「‘はっ!’」


 クリアスが魔法に集中できるように俺は亡霊樹に向かって飛び出していく。

 振り下ろされる枝を回避していく。


 目の前を枝が通り過ぎていくヒリヒリとした感覚に、高揚感を覚える。

 これは人の俺が感じているものなのか、あるいは魔物の本能なのか。


 疑問が頭をかすめるが、戦いの最中にそんなことを考えている暇はない。

 動きの最適化を考える。


 三体の亡霊樹が次々と攻撃してくるので、動き続けねばならない。

 次を予想し、最適な回避行動を取らねば手詰まりになってしまうので体だけでなく頭も使っている。


「行きます! ええと……右!」


 クリアスの目の前に赤く光る魔法陣が描かれている。

 どっちから見て右だと疑問に思ったが、クリアスから右だろうとすぐに判断した。


「ファイヤーランス!」


 魔法陣から魔法が飛び出してくる。

 一瞬で飛んでいった炎の槍は亡霊樹を貫く。


「少しだけ待ってくださいね!」


 クリアスの前にはまだ魔法陣が浮いている。

 光は弱くなっているが、まだ魔法を維持している。


 クリアスが魔力を込めると魔法陣の光が強くなっていく。

 ある程度連続でも魔法が使えるのかと俺は驚いてしまう。


「‘おっと!’」


 ブンと横に振られた枝を屈んでかわす。

 亡霊樹はあまり賢くないのか、クリアスを警戒することもないからやりやすいなと思った。


「いきますよ! 今度は二体同時に狙いますので離れてください!」


「‘分かった!’」


 魔法陣が再び赤く輝いている。

 俺は亡霊樹の枝をかわして、横を通って駆け抜ける。


「ファイヤーニードル!」


 ファイヤーランスはしっかりとした一撃の攻撃だった。

 対してファイヤーニードルは魔法陣から何発もの細かい炎が出てきて、針のように細長く伸びて飛んでいく。


 魔法そのもので亡霊樹を破壊はできないが、突き刺さった炎の針が亡霊樹を燃やす。


「‘……この分なら意外と三階までいける…………のか?’」


 燃える亡霊樹がボンボンボンと音を立てて消えてしまう。

 後に残されたのは三本の枝。


 楽なのはいいけど、もうちょっと心躍る報酬が欲しいなとため息が漏れてしまう。

 その後も一階をグルグルと回った。


 亡霊樹の他にストーンピクシーやコケトカゲといった魔物が出てきたりもした。

 硬い魔物でないなら俺も戦える。


 逆に素早い魔物になるとクリアスの魔法が当たらなかったりと、ちょっとした課題も浮き彫りになったところがある。

 今日はお試しのつもりなので、二階へ降りていく階段を見つけたが、降りずにそのまま一階を巡って引き上げたのであった。


「‘まあ……そこそこ色々なものはドロップしたな’」

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