第15話 『夏の宿題と自由という名の罠』
喫茶店「コウノトリ」のカウンター。
拓真:「なあ、夏休みの宿題って、なんでギリギリにならんとやる気出んのやろな。」
陽真:「いきなりやな。でも、それ全員そうやろ。」
拓真:「先生とかって計画的にやれって毎年言うけどさ、あの人ら子供のとき、ほんまに計画的にやってたんか?って思うねん。」
陽真:「言われてみれば、やってそうな空気出してるだけで、絶対ギリギリ組やったよな。」
拓真:「ていうか、そもそも“夏”に学び詰め込んでくるスタイルが無理あるやろ。暑さと宿題って相性悪すぎるわ。」
陽真:「脳みそも溶けかけてるからな。」
拓真:「でさ、自由研究って名前してるくせに、全然自由ちゃうやん。」
陽真:「お、出たな。自由という名の不自由論。」
拓真:「テーマは自由です、って言われて、何でもいいよって言われた瞬間に、何もできんくなるやつや。」
陽真:「あれ、地味に哲学的やな。選択肢が多すぎて、自由が逆にプレッシャーになる。」
拓真:「俺、小5のとき『方位磁石の気持ち』ってテーマで出して先生にこれは自由すぎるって言われたもん。」
陽真:「いやそれもう、自由研究というより詩集やん。」
拓真:「あと、絵日記な。あれこそ最終日にまとめて書く代表選手やろ。」
陽真:「1日ずつ書ける人間がこの世に存在してると思ってるの、先生くらいや。」
拓真:「しかも毎日今日は暑かったって書いて、微妙に絵だけ変えて、昨日とちょっと違う暑さでしたって言い訳しながら書くやつ。」
陽真:「あるあるすぎて悲しいな。」
拓真:「夏休みって、自由なはずやのに、やること多くていつも追われてる感あんねん。」
陽真:「ほんまは“自由”って、管理されてない時間のことやのにな。」
拓真:「じゃあ、あの宿題って自由を使ってちゃんと苦しめっていう国家の罠やな。」
陽真:「そんな深読みすな。お前の自由研究、もう1回やり直してこい。」