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第81話 僕は姉妹フレンドに翻弄され続ける

 ん?

 卒業アルバムに飽きたのか、アリサが起き上がろうとする。うつ伏せから仰向けになって起き上がろうとする一連の動作で、もし、スカートがめくれたら気まずすぎる。

 アリサに対して気まずいし、室内にいる他の女性(特に母さん)に、『こいつ年下女子のパンツを見たのでは』と疑われること自体が、厳しい。


「ちょっと、お茶飲んでくる」


 僕は部屋主の意地を捨て、いったん逃げた。

 噓を本当にするため僕はリビングに向かった。

 テーブルの上にケーキか何かを食べた痕跡がある。急な来客にお菓子が間に合ったとは思えない。もしかして、母さん、手土産でもらったお菓子をそのまま出したの?

 マナーとか知らんけど、なんか、恥ずかしい……!


 ああっ……!

 大人達は紅茶かお茶を飲んで、アリサにはジュースか何かを出したっぽい。それはいいんだけど、そのグラスは僕がコンビニくじで当てた機動兵器ダンガムのイラストが書かれているやつ!


 明らかに僕が普段使っているグラスを来客に使うなよ。恥ずかしい!


 僕は羞恥に悶えたあとお茶を飲んで、部屋に戻る。


 ドアを開けると、アリサが待ち構えていた。

 綺麗にラッピングされた袋を両手に持っており、それを僕に差しだしてくる。


「はい! ハッピーバレンタイン!」


「あ、りがとう……。4月だよ?」


「カズ宛に送られてきたチョコは私が食べちゃったから、代わりに作ってあげた! いひひひっ!」


「ありがとう……」


 知らぬ間に僕は、家族以外の女性からチョコレートを貰っていたけど、食べられていたらしい。あれ、というか、これ、アリサの手作り?!

 完全にバレンタインシーズンじゃないけど、バレンタインチョコをもらったつもりでいいの?!

 めちゃくちゃ嬉しいけど、どういう感情で喜べばいいの?!


 というか、もう用は済んだんじゃないの?

 いつまで僕の部屋にいるの?!

 自分以外の人が4人もいると居心地が悪いから、出て行ってほしいんだが?!


「それで、話は終わったんですか……?」


 僕は母さんの背後に立ち、椅子の背もたれを押して圧をかけながら、遠回しに『はよ出てけ』と訴える。


 すると、マネージャーさんがジェシカさんの肩を揺さぶる。


 ジェシカさんは無反応。

 うっそだろ。他人のベッドで熟睡してやがる……!

 イベントで会ったときはしっかり者のお姉さんという印象だったけど、このフリーダムさ、間違いなくアリサの姉だ!


 アリサがベッドに跳び乗り――お前も平気なのかよ――ジェシカさんの両脚を跨いで座ると、お尻の辺りをベチベチ叩き始めた。


「ジェシー。起きて」


「えー。んー」


「緒方さん。耐久の話、してください」


「あー……。カズ。今夜、200万耐久BoDするから、参加してくれ。3人で組んでサバイバルやろうぜ。もう枠は取ったし、告知してある」


「あ、はい。ゲームするのは別にいいですけど、200万耐久ってなんですか?」


「チャンネル登録者数だよ。今、190いくつか忘れたけど、もうすぐ200だから。ゲームしながら、200万の瞬間を迎えようって企画。部屋ID公開して自由参加にするから、オレ達でリスナーをフルボッコにするぞ」


「待って。200万? 200人じゃなくて?」


「1万分の1にすんなよぉ。スペースシップのプラモでも、そんなスケールにしないだろ」


「え? でも、アリサがもうすぐチャンネル登録者200って……」


 僕が視線を送ると、当の本人が「200だよ」と言った。


 万を略すなよ~っ!

 200万ってヤバくね?

 

 あ、いや、ファンの人数がどれくらいだろうが、僕達の関係はこれからも変わらないはず。

 一緒にゲームするのはいつものことだし、とりあえず安請けあいしたけど、話はそんな簡単なことじゃなかった。


 マネージャーさんが母さんに向き、背筋をただす(僕のベッドに座っているため、立派なOL感が台なし)。


「それでは改めて、和樹さんの外泊と出演についてご許可をいただきたく」


 なんかよく分からんけど、いつもどおりゲームするだけではなかった。『ジェシカさんの弟設定になっているから僕はジェシカさんの家にいるはず』『未成年の労働は親の許可が要る』『親の許可があっても夜の労働は22時まで』『耐久配信は20時開始で終了時間は未定』『夜遅いから外泊する必要がある』みたいなことが話しあわれている。


 待って。ジェシカさんの家に泊まるの?!

 アリサとふたりで暮らしているって言ってたよね?!

 そこに僕が混ざるのはアウトでしょ?!

 配信支援のためにマネージャーさんも同席する予定らしいけど、むしろ異性が増えてさらにつらいんだけど。


 大変なことになってきたと思っていると、アリサがやってきて、くいくいっと袖を引っ張ってきた。

 もう一方の手はポシェットを開けていて、中からVirtual Studio VR Ⅲがちらっと見えている。

 アリサがニコッと微笑む。


「ヤろ!」


「……ああ!」


 難しい話は、もういい!

 僕は、会話を続行している大人達の間を通り抜けて、棚からVirtual Studio VR Ⅲをとる。


 大人を無視して床に座り、ゴーグルを装着した。

 さあ、行こうぜ、相棒!


「ワンオンワンの勝負ね!」


 アリサが僕の股の間に座った。

 お前ッ、妨害する気まんまんかよ!






◆ あとがき

ここで完結です。

これからもきっと仲良くゲームしていくと思います。

カズとアリサは何度もこじれつつも、良い感じに収まったと思いますが、楽しんでいただけたでしょうか。

よろしければ、感想やポイント評価お願い致します。

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