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第74話 仲間達との絆が僕に力をくれる

 そして、作戦開始のときは来た。

 ピコーンという音とともに、ミニマップに敵の位置が表示された。ジェシカさんが通信施設の特殊能力を使ってくれた!


「アリサ! 行こう!」


「うん! 死ぬまで一緒だよ!」


「アリサは死なせない! 僕が護る!」


 僕達はスモークグレネードを投げ、敵陣地内のちょっとした広場に飛びこんだ。

 多分、電車を一両180度回転させるためのエリアだ。なんかレールや土台みたいなのもあるし。知らんけど。

 煙が晴れると、周囲の塀や壁や廃棄車両の陰に敵兵士がいるのが見えた。完全包囲だ。待ち構えていたっぽいな。

 けど、その位置はさっきミニマップに映ったから、分かっていた!


「カズ、プランB!」


「OK! アリサの背中は僕に任せろ!」


「Back to back!」


 これが僕達の2つめのプランBだ!

 僕達は敵陣のど真ん中で背中合わせになる。お互いに背後を護りあう!


「アリサ、どっちがたくさん倒すか勝負」


「OK! アリサ、カズのために頑張る! いいお嫁さんになる!」


 世間では野球のバッテリーを女房に例えるのだから、戦場の相棒を嫁と表現するのもありか。

 なるほど、悪くない。

 アリサは僕のちっちゃなお嫁さんだ。


 アリサが敵兵をふたり、僕がひとりを仕留めた。

 連続して弾丸を浴びせ、敵に体勢を整える暇を与えない。


 プロチームは僕達を素人だと思って油断しているのか、動きは鈍い。

 同士討ちを避けようとしている?

 死んで成績が下がるのが嫌だから前に出ない?

 それとも、まだこっちの位置に気づいていない?


 配信者チームにVTuberや声優さんがいるから、わざと負けようとしている?

 いや、ユウシさんは僕達をレイプすると言っていた。てかげんするとは思えない。


 攻撃が緩い理由は分からないが、チャンス!


「2キル。残りも貰っちゃうよ。カズ、右回転!」


「了解!」


 自分や相棒に狙いを定めた敵を優先し、互いに互いを護りながら戦う。

 互いの背中に命と体重を預け、踊るようにクルクルと周る。

 集中だ! 全力集中!


 しかし、やはり、敵に包囲されていては、絶体絶命!

 アリサはともかく、僕は撃ちあいでは――。


 ――カズ、背中に目をつけろ!


 不意に、いつか、オンラインプレイ中に誰かから言われた言葉が脳裏を過った。


 ――あ、いや、背中に目をつけろは言いすぎた! 横だ、横を見ろ!


 そうだ。これは、アリサに匹敵する突撃馬鹿のペッキーさんに言われたことだ。さらに、ジェシカさんと同じくらい立ち回りの上手いタカユキ1129さんの言葉も脳内に再生される。


 ――ぶっちゃけ俺達の弱点は左右だ。初めてのFPSからVRでやっていたカズには分からないだろうが、パソコンや家庭用ゲーム機のグラフィックは、正面の狭い範囲しか見えない。だから、左右への警戒が緩い。


 ――そういうこと。カズ、お前は斜め左右への反応が早い。俺達よりも広い範囲が見えてる。だから複数と戦うときは、冷静に全体を見て、自分を狙っているやつから倒せ!


 そうだ。みんなの言葉を思いだせ。仲間達と培った経験を活かせ。

 今、僕から見えている敵で右の人からは僕が見えていない。周辺視野には入っているかもしれないが、彼は僕を認識していない。正面の敵はこっちを見ているがマシンガンだ。発砲までに一瞬だが猶予がある。そうなると、最初に倒すのは、RPGを装備した左の敵!

 仕留めた。けど、確実にすべての敵がこちらの位置に気づく。ヤバい。厳しい。


 ――頭じゃねえ。脚を狙うんだ! 俺は敵と遭遇したらジャンプしながら伏せて、弾を避ける。体に染みついた動作だ。もうやめらんねえ。だから、カズ、ベテランと出会い頭で撃ちあうときは、脚を狙え。そこに頭が来る!


 そうだ。ゴールデンボールきらきらフライデイさんが、そう言ってた! その応用で!


 僕は小さくジャンプした。足下に弾丸が何発か撃ちこまれた。思った通り。敵のプロは、僕がここに伏せると思って、足下を撃ってきた。

 僕は、逆に敵の足下に銃口を向けておき、伏せた瞬間に頭部を撃つ。


 正面からマシンガンを撃たれる。けど、大丈夫。焦るな。この距離なら、マシンガンよりアサルトライフルの方が強いし弾が収束する。撃ち殺されるよりも先に、撃ち殺せる!

 後ろはアリサが確実に仕留める。だから、僕は目の前の敵に集中!


 いける!

 BoDⅢのフレンド達との絆が、僕に力をくれる!


 こうして、僕はアリサとの連携で、周囲の8名すべてを撃ち倒した。


 僕は最後のスモークグレネードを投げると、廃棄車両の陰に身を隠す。


「噓、噓、噓! 脳汁ヤバイ。8人相手に勝っちゃった! 4キル! 4キル! 僕、4キル!」


「脳汁1リットルでた! 全身ぬるぬるする!」


「敵に見られたかもしれないから、そこのうねうねに隠れよう!」


「了解!」


 僕は地面に伏せるとアリサの手を引き、アスファルトが大きくめくれあがっている場所に這って移動した。

 穴は狭いから僕はアリサを抱き寄せ、小声で尋ねる。


「はあはあ……。今、旗、見つけた? 僕は駄目だった。アリサは?」


「見てない」


「なら見えない位置か。拠点の裏側かもしれない。必ず見つけて、勝とう!」


「うん」


 僕は偵察のために穴から顔を出す。


 げっ。30メートル程先、塀のそばに敵兵がいる。こっち見てる。

 多分、目があった!


 勝ち目のないタイミングだが僕は銃を構え始め――。


 撃ってこない?!

 何をしているんだ?

 この後に及んで、プロチームはまだ手加減をしている?

 序盤にあれだけ僕達の拠点をフルボッコしたのに?


 あ。敵がようやく銃を持ち上げ始めた。


 遅い。遅くない? いや、遅いよな?

 相手がアリサや、ペッキーさんやタカユキさんだったら、すでに僕は撃ち殺されている。


 撃ち勝てる?

 いける、撃て! 3点バースト、もう1発!


 当たった。倒した。


 ああっ……!

 右にスナイパーがいる!


 死んだ! 助からない!

 50メートル前後だ。この距離なら撃たれたら確実に殺される!


 ……?

 風切り音が右を通り過ぎていった。

 外したのか?

 この距離で?


 ゴールデンボールさんなら、この距離で外さないぞ。

 いや、そもそもゴールデンボールさんは姿を現さない。あの人は、試合中に1度も姿を見せないまま、ラウンド終了時に成績1位になる。芋っているのかと思えば、ちゃんと旗に絡んでくる。


 気のせいじゃない。プロの動きが遅い。

 通信環境に不備があって、ラグが発生している?

 新型のトレッドミル床コントローラーを使いこなせていない?


 いや、気にするな。

 集中しろ。

 僕は狙撃手を撃ち殺すと、素早く穴に戻る。

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