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第64話 どうやって殺された? 謎の死が相次ぐ

「中央まで押し返せば、橋と地下道で、攻める選択肢が増える! みんな、中央目指して頑張ってくれ! カズ、先頭は任せたぞ!」


「了ッ! 解ッ!」死に神が刀を最終形態にパワーアップさせるノリで僕は叫んだ。


 僕は先陣をきって走りだす。

 へへっ。死にに行くぜぇ……!


 なんの前触れもなく画面が赤く染まったので、咄嗟に放置車両の陰に飛びこむ。


「え? 何を喰らった? ライフが6割削られた。狙撃? どこから?」


 混乱から立ち直る間もなく、味方が次々と狙撃で死亡していく。


 さらに、配信者チームの拠点に再配備された戦車が、画面に現れるのと同時に、敵戦車砲の餌食になる。


 僕達が100メートルも進まないうちに、敵の制圧射撃が壁のように立ちふさがる。

 ヤバいヤバい。僕が活路を切り開かないといけないのに、一方的な展開が始まりつつある。


「くそっ。前に行けない! 弾幕が厚すぎる! これがプロ!」


 背後から背中を揺さぶるような爆音。

 敵戦車が、配信者チームを拠点から1歩も出さずに倒していく。


 リスキル――相手チームのプレイヤーを復活したと同時に倒す――状態だ。

 配信者チームは、出撃ボタンを押して兵士が画面に現れたと同時に爆発し、死亡している。くそっ。なんで、BoDはリスポーン時の無敵時間がないんだよ!


「あいつ等、絶対にぶちのめす!」


 イラつくばかりで打開策がまるでない。

 認めたくはないが、リスキルは勝つための戦術だ。

 リスキル可能な位置を制圧させてしまう方が悪い。


 まだゲーム序盤なのに、もう詰みそうな状況だ。


「リスキルしている敵戦車の破壊が最優先事項だけど、対抗手段がない! くそっ。あの戦車、道路の真ん中で余裕ぶりやがって!」


 ケツから火花が散っているから、おそらく常に修理し続けている。

 アレはブロートーチで修理しているときに発生する火花に間違いない。


 どれだけ攻撃してもあの戦車を破壊することは不可能だろう。

 一斉にRPGを撃つしかない。2発3発ではなく、4、5発だ。味方の命中精度を考慮するともう、全員で撃った方がいいかもしれない。


 ということは、僕、ジェシカさん、アリサ、青葉さんはライフルで敵歩兵を倒す。残る8人でRPG一斉射だ。それしかない。


 僕は敵歩兵を倒すために前進しようとするが、銃弾が無数に飛んできたため、コンクリブロックの陰に隠れる。それから、敵に見られないように這って移動する。


「くそっ。位置がバレてる。誰かが観測しているにしても、どうやって仲間に伝えているんだ? 放送局を占拠してる? でも、レーダーって5分に1回くらいだし。放送を使えば、マップ全体に音声が再生されるから僕達にも聞こえるはず……。無人偵察機(ドローン)と連携して、こっちの位置を報告しているやつがいる?」


 空を仰いだが、見える範囲に敵の偵察機は飛んでいない。

 いや、そもそも初期武器オンリーのルールだから、無人偵察機は使えない……よな?

 だが、必ずどこかでこちらの様子をうかがっているはず。


 おそらく、いまだに一度もキルログに出てこないユウシさんだ。

 スナイパーライフルのスコープを使って遠距離からこっちを偵察し、仲間に僕達の位置を伝えているに違いない。

 発砲せずに、完全に隠れきっている。


 悔しいけど、上手い!


 認めたくはないけど『自分の得点には拘らず、味方の勝利に貢献する』という、僕が理想とするプレイスタイルだ。

 そしてそれは、かつて僕がクランに所属していたとき、ユウシさんから教えてもらった戦い方。

 ……それを、僕より遥かに上手く実現している!


 早くユウシさんを見つけ出して仕留めないと、僕達は何もできないまま負けてしまう。


 僕が生き延びているのは、アリサとジェシカさんが護ってくれているからだ。

 どこかに潜んでいるアリサの狙撃が敵歩兵の進行を食い止め、さらにジェシカさんが死を恐れずに前進して敵にプレッシャーをかけ続けて、辛うじて拮抗状態を作り上げているにすぎない。


「この状況はまずい。アリサが狙撃以外の仕事をさせてもらえない状況だ。一点突破を狙えない!」


 狙撃もこなすけど、本来のアリサは突撃馬鹿だ。敵陣のど真ん中に突っこみ、自分の姿を餌にして釣った敵を迎え討つ戦い方を好む。

 そのうち狙撃が嫌になって、突撃したくなるはずだ。


「落ちつけ。アリサの心配をしている場合じゃない。僕がなんとかしないと……」


「は~い。土煙さん。地雷、1丁、ウーパーで~す!」


「えっ?」


 隣に来たのが誰か、IDを見なくても声だけで分かる。

 プリティーローズの声優青葉さんだ。

 他のメンバーが拠点から出られない中、単独で走ってきてくれたのだ。


「対戦車地雷2つ、たしかに届けたよ。一緒にあの戦車を倒そう。私、あの戦車を倒したら君に伝えたいことが――」


 死亡フラグを立てるというジョークだったのだろう。

 言葉は途切れ、青葉さんがゴム鞠のように跳ねて転がっていく。

 ほぼ同時、いや僅かに遅れてライフル音が響いてきた。


「え? なんでこの位置が狙撃されるの? 射線、切ってるでしょ?」


 僕も青葉さんも、ビル脇にあるブロックの陰で腰を落としていた。


 どこから狙撃された?

 青葉さんの位置取りは正しかった。

 敵拠点の方角から狙撃されるはずがない。

 敵からは見えないはずだ。


 ……もしかして、高い位置から撃ち下ろしているのか?

 このマップの高層ビルって、屋上に上がれるのか?!

 いや、でもさっきまでは、そんなに角度があるようには思えなかったが。どこかにエレベーターがある?


 くそっ。

 知識が少ないせいで、理解できない状況が続く。

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